白と虹の光に恋をした。
チャラ男です
俺は1番始めから、ただただあのお方……ルス神のために行動していた。
幼い頃に出会い、ずっとずっと想い渇望してきた光。その光を目指し、ひたすらにそれだけを見つめ、突き進んできた。
実態の違う、光を崇める宗教に入ったのもそれが1番の近道になると思ったから。
周囲からどう思われようが、何を言われようが関係ない。
もう一度あの光を。
強く望めば確かに見ることはできた。だがそれはしなかった。それは、自分の欲だけど。
祈り望むだけで見える光など、俺の求める光でないと思ったから。努力してようやく出会える、それこそが俺の求める光だった。
なんて愚かなことをしたのだろう、と。
あのお方は仰っていた。
『強く願えば会えたんだから』
遠く儚く見えた光は、そこまで遠くなく、強くしっかりとした光だった。
それでも、俺のすることは変わらない。あのお方の立場も変わらない。あの日見たものは本物なのだから。
俺は、あのお方を救う。この世界から。
「直ぐに、すぐに解放されますから……待っていてください」
例えそれで世界が消え去ろうとも、あのお方が救われるのならどうだっていい。世界から解放されれば、あのお方が憂うことも無くなるのだから。
「エルピス様、フルム様がお呼びです」
「ああ……すぐに向かうと伝えて」
ここの者は馬鹿だ。
一度反逆した俺でも、それっぽいことを言うだけでまた信用し、仲間としているんだから。
それに弱い。
教皇の側近たちは枢機卿含め闇に討たれた。そこそこの実力はあるはずだったが、弱すぎる。それでよく、よくあのお方を殺すなどという戯言を言えたよ。
まあ大したことではない。
俺の目的に支障はない。
だから思ってもいない言葉を吐き、この悍ましいものと手を組んだ。
フルム、この地下に巣食う神の残骸。残り滓。
この世界の元々の神だと、そう言っていた。
俺が神とするのはあのお方ただ1人。だが俺1人では世界を変えることはできない。だから仕方なくフルムの手を取った。
「お呼びでしょうか……フルム」
『敬称……そう、それヲつけろ人間。お前、あれノ答えをマだ聞いてナイ。今ここデ決めろ』
姿はない。
壁に埋まる拳より一回り大きな濃い紫の魔石から、薄暗い靄のようなものが漂い続けている。声は音としてより、直接語りかけられているように聴こえる。はっきり言って気持ち悪い。
これは良くないものだと一目見てわかるが、否定派の阿呆共はこれの言葉に騙されたようただ。
「ああ、はい。残された者の中では自分が1番適任かと思います。なので、どうぞ。体お使いください」
フルムが望んだことは、世界のやり直し。神として戻り、世界を掌握し、消し去る。そうしてまた新しく作り直す。
それは俺の世界からルス神を解放するという目的と合っているように思えた。
続きます




