第17話 それぞれの事情。
2000字、短いです
前シーナ視点
後半主人公
私はこの世界のヒロイン、女神を崇める女、シーナ。女神にはずっと鉄壁の守りがあって信者なのに私は近づけなかったんだけど、ついにそれが無くなったの。
いやさ、女神に守りがいるのはいいのね。当たり前だし、守ってもらわないと。でもなんで私が近くに行くたびに不機嫌そうにされなきゃならないの?熱心な信者ですよ!崇め奉ります!
そんな日々でしたがついに!!
鉄壁ガードが消えました! わーい!!
これで女神の近くへ行くことができると思ってたんだけど……くそ、ここで悪役が動くとは。計算違いだ。
私が何を言おうと効果がない。私はあんたと話したいんじゃないのに!
女神様は呆れたような顔で私たちを見ている。これで女神様に変な勘違いされたらこいつのせいなんだから!
途中で女神は行ってしまうし、もう最悪。
もうなんなの、もの凄く嫌ぁ〜なニコニコの笑顔で私を見てるし……ほんと青い悪魔みたいな奴。
私が女神を追いかけようとしたら邪魔するし、何がしたいの!?
ようやく青いのから離れられた。女神の所へ行かなきゃ。
教会の方へ行けば女神の姿が。るーくんと話してるな。
「めがっ……やっべ、ローズちゃんっ!!」
興奮のあまりそのまま女神だなんて言いそうになっちゃった。危ない危ない。
るーくんは私を見るなり走り去っていった。くそ、後で何話したのか聞かせてもらわないと。きっちり。じっくり。
「ローズちゃん、るーくんとどんなこと話してたの?教会に行くんじゃなかった?」
もし女神がるーくんを恋愛対象として見ていたらどうしよう。るーくん嫌いじゃないけど、女神の独り占めは許せないし私を差し置いて女神とハッピーエンドなんてもっと許せないからるーくんのこと応援できないな邪魔してやろ。
そういえば女神様の魔法って闇なんだよね。どんなの使うんだろう。カッコいいんだろうな、絶対。見せてもらえないかな、いや興奮で死ねる気がするけどやっぱり見てみたいなぁ。
それを言ったけど女神から返ってきた言葉は気分じゃない、という言葉だった。
ああ、女神らしい答え……。素晴らしいです、推しは現実にいても最高です。
気分じゃない、だって。気分が乗れば魔法を使うってことじゃん?闇の魔法を。あ〜カッコよ。素敵。気分で。
でもそれを私は声に出してしまっていた。
あああああ大丈夫だよね、聞こえてない?めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!絶対変に思われた。独り言が多い女なんて!
ともかく今日もいつでもこれからも!困惑した顔をしていても女神は最高に素敵です……。
●●
大きな木に登り、伸びすぎた枝を切っていく。今日の仕事はそれ。村の真ん中辺りに生えている大きな木があって、それを切ってる。兄さんが見たらすぐにやめろって言いそう。
昨日は推しの前で失態を晒してしまった。
今思い出しても恥ずかしい。その後のノアの言葉、表情。あれを思い出して悶え、その前の失態を思い出して悶える。
「ああああああ!!」
高ぶる感情のままに太い枝に魔法をぶつける。
ボバッという音がして、枝が落ちていく。魔法が当たった部分がエグいことになってるな。こっわ。
「はぁ……無理、恥ずかしい」
絶対に今顔赤い。
仕方ないよね、あんな……さ。推しにあんな変な声出した上にあんなこと言われて。
『ははは、顔赤いですよ?本当にローズは面白いね』
優しげな笑み。ゲームでヒロインに向けていたのとは違う、もう一歩踏み込んだような顔。
なんなんだろう、顔がいいのもそうなんだけどそれ以外の良さがあって。
「なんなの……なんであんな」
思い出しながら、小さな影の塊を他の枝にぶつける。
トッ、カッ、コッ、ゴッ、メキッ、ボキッ
なんであんな構ってくるんだろう?兄さんはまだわかるよ?兄さんだから。でもアレクなんてあれからほとんど話してないし、ルフトは最近仲良くなったばかりだし。
これまで関わりがほとんど無かったのになんでだろう。嬉しいけど、疑問が大きい。
「怖いなぁ」
シーナのこともあるし……。ノアがあの調子で私に関わってきたら私の調子が狂う。それをシーナが見たらどうなることか。
隠しキャラが誰か知らないけど、私がノアと居たら何か言われるんじゃないかな。昨日もそうだったし。
昨日。
「ああああああああ!!」
ズドッ!
特大の黒い塊が真上に撃ち出される。ぽっかりと空に向かって穴が開く。
一瞬後に、バラバラと枝や葉が落ちてきた。慌てて今座っていた太い枝の下に魔法で体を支えながら降りて、それを避ける。
「もうっ」
こんなことして怒られたらどうしよう。軽く切ってくれ、って言われただけなのに。
落ちた枝葉も集めなきゃ……。
「面白いことしてますね」
げっ、ノアだ。
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