第11話 そんなに拒絶されたら私でも辛いんですが。
「おじょっ……げほごほっ!」
「おわっ!?」
床に横たわった状態のその人は、私を見て目を丸くし声を出そうとして失敗して咳き込んだ。
この人、私が気絶させた人。チャラ男と知り合いらしい人。どうしてここに?私に倒されたからとか?闇ごときに負けるなど的な感じ?
「なんか弱ってる……って気絶するまで魔力盗っちゃったんだもんそりゃそうか。お兄さん、話せる?」
襲い掛かってくることはないはず。こんな所にこんな弱ったまま閉じ込められてるんだし、そもそも手首に手枷があって、左足首の枷から部屋の端に鎖が繋がっている状態で満足に攻撃できるというのならとっくにしていると思う。
「ど、やってっげほっ……」
「無理そうだね」
どうしようか。せっかくのチャンスじゃない?色々聞けそうなんだけど。
でも話せそうにない。ずっと咳き込んでる。病気?私、そこまで吸収してないよ。命取るくらいならわかるから。魔物で散々してしまったし。
兄さんみたいな治癒じゃなくて、せめて回復ができれば良かったのに。闇でできそうにないよね。逆に奪うことしかできなさそう。
……逆に奪う?
そっか、私のをこの人に流せばいいんじゃない?私、あのダイ○ン大量魔物退治の時に散々生命力まで吸収しまくってるから、魔力だけじゃなくてそっちも増えてるはずなんだ。
だから私のを奪って、この人に渡す。できるかな?
「お兄さん。私、聞きたいことがある。だからちょっと大人しく……なんで逃げるの」
近寄ろうとしたら、私のことが怖いみたいな顔して床を這い、離れようとされた。
……私が闇、だからか。
仕方ない、失敗しても文句は言わないでね。
「【吸収】……あ。やだぞわぞわする気持ち悪っ」
自分にするものじゃないぞ、これは。なんか背中から膝にかけてがぞわぞわ、力が抜ける感じがした。気持ち悪い。
すぐにやめてもう二度としない、そう思った。吸収したものの先はお兄さんに指定してたからほら。上手くいった。這うスピードが早くなったよ。
「いやいや待ってって。狭い部屋で逃げられるわけないから」
「たすっ……!け……!」
まだ話せない感じ?ていうか壁に当たって私の方を振り向いて、少しでも離れようと体縮こませて壁に同化するみたいになるのやめてよ。あとその絶望した顔。
私が今からお兄さん殺すみたいな感じじゃん。
「危害を加えるつもりはない。闇だから信じられないのならそれでいいけど。私、自己防衛以外に何かした?闇が非道なのは一般常識だから怖いとかはやめてほしい。知りもしないでよくそんなこと」
一歩近寄り、しゃがみ込んでお兄さんに目を合わせる。お、逸らさなかった。偉い偉い。
「おにーさん、どう見ても年下の小娘が怖いの?私、おにーさんの方が怖いよ?ノアにあんなことしたの、おにーさんも関わってるよね?よくあんなことできるね?一般的に考えられてる可哀想な闇属性の人たちより酷いことしてない?自分のしてること、よぉ〜く思い出してみて?」
にっこりお兄さんに笑いかける。
お兄さんは「ヒィッ!げほっごほっ……」ってなって余計に怖がらせたみたいでした。残念。
ていうかなんでずっと咳き込んでるんだろう……?ん……?お兄さんの首に何かある。なんか……アザみたいなのが首の中間辺りに一直線。
これが原因かな。話せなくされてるとか。チャラ男かな。やりそう。
「……チャラ男……エルピス、だっけ。見捨てられたの?ねぇ、私はお兄さんのこと許せない。でも、ノアをああしたんだから戻すのに少しは役に立つかもしれない。ここにいるよりはマシだと思わない?私たち側について」
私じゃ話にならない。だったら連れて行って他の人に聞いてもらった方が情報を知れるはず。
……どうやって連れて行くかはさておき。




