第10話 なんかすごい場所入ったっぽいですね。
ぶつぶつ文句を言う幹部3人を兄さんが一纏めにしている間に、私は影に入って外の様子を見に行くことにした。実験体の人たちは動かないから放置。一応見張ってはいる。
すぐに誰かしら会うかと思ったんだけどそうでもない。ていうかいない。人が見当たらない。
「どこにいるんだろ?危ないから隠れてるとか?」
それはありそう。関係ない人までは巻き込めないもんね。いや、関係はあるけど、みんなが敵意を持って向かってくるわけじゃないし、戦えない人だっている。その人たちまで相手してたらキリがない。この国にいるルス教信者みんな相手するなんて無謀すぎるし。
それにしてもさっきの枢機卿の言葉、教皇がいれば神は殺せるってどういうこと?ルスの反応的に嘘じゃなさそうだし。
ルスを頂点とするはずなのに殺したいっていうのもよくわからないし。信仰対象殺してどうするの?
わからないこと増えたなぁ。
「……地下への通路かな?」
一階を適当に歩いていたら下へ続く階段を見つけた。怪しい雰囲気。……行くか。
3歩くらい入っただけなのに外はすごく暗くなった。通路の入り口の作りからして、光が入らないような設計になっているらしい。嫌なとこ。
ま、影の中なら暗さなんて関係ないんだけどね。明かりは常に一定。外の光量は感覚でわかります。
壁に取り付けられた松明の明かりのみの通路をどんどん進んでいく。
「あっ……!」
この松明、本物じゃない!魔道具だ!上手く細工された魔道具。すごい、本物かと思った。
でもそうか、こんな通気口もないような狭い通路で松明なんて灯してたらすぐに酸素消えるもんね。それにずっとつけてられないし。
「便利だなぁ……お、分かれ道」
4つに分かれてる。多いな。普通2つとかでしょ、こう言う場所って。
よし、とりあえず1番右だ。
そう決めてしばらく進んだら、なにやら声が聞こえてきた。
『げほっごほっ……かふっ……』
間違い。声じゃなくて咳き込む音。穏やかじゃない。
歩みを早め、その音の方まで進む。
ああ、そういう所か。ここは、牢だ。牢屋がズラーッと奥まで並んでる。入ってきた所の近くにあるのは、中まで見えるタイプの牢。中の方まで行くと見えないタイプになる。大きさは様々。何人も入れそうなものもあれば、1人しか入れなさそうなものもある。
そしてその牢に繋がれている人たちは皆、ぐったりして動かない。
『ごほっ……』
ならこの咳は誰のだろう?
「閉じ込められてる人なら敵じゃないよね」
こういう安易な考えがよくないとはわかってるんだけど、実行してしまうのが私。
影の外に出て、声を出す。
「起きてる人ー?」
「がふっ!?げほげほっ……」
「すみませんどこですか?後ここどういう施設?」
少しの間の後、とん、と微かな戸を叩く音がした。中が見えないタイプの牢の中だったらしい。
小走りでそこまで行って、鍵がなくて開けられないからもう一度影の中に入り、牢の中に出た。
さてだーれだ?
「あれっ、対チャラ男戦でいた……」




