第16話 天使と変人。
短いです。ごめんなさい。
2人は置いてきた。長いんだよ……。
「2人で話してたいなら私は先に行く。じゃあね」
言った時のシーナの表情が凄かった。どういう意味のその表情?って聞きたかった。聞かないけど。
ノアはきょとんとした後、シーナを見てニコニコしだした。なんだそれは。
久しぶりに1人。最近はずっと兄さんがいたからね。教会までの距離はそんなにないけど、その間は1人だ。ほら、もう見えてきた。闇魔法についてのは大体見たから、今度は他の属性の魔法を知りたいんだよね。応用して使えるかも。
「あっ!ローズお姉ちゃん!こんにちは!」
「ルフト。こんにちは」
教会の目の前。私を見つけた天使が駆け寄ってきた。夕日に照らされて、金の髪が光り輝いて見える。本当に天使じゃないか。可愛い。
「今日も書庫?」
「そう。魔法について」
近くに来た天使の頭を撫でながら答えれば、天使は目を細めて嬉しそうに頭を擦り付けてくる。猫みたいだ。反則級に可愛すぎる……。
「いいなぁ、今度本のお話、聞かせてね?魔法でもいいなぁ。僕ね、うーんと頑張ったら雷起こせるんだ。ローズお姉ちゃんは何ができる?」
ルフトと話してると浄化される気がする。なんでだろう。私の心が汚れているのか。そうか、ノアを前にして心の中であ〜今の表情見ましたかやばいです射抜かれました最高とか考えてるからか。
「雷?すごい。私は色々、かな。影の中に物入れたり」
「影の中に!すごい!お姉ちゃんみたいな魔法なら僕……ううん、なんでもないや」
どうしたんだろう。一瞬天使に影が射した。
「どうしたの?言ってみて。無理に、とは言わないけど」
言いたくないことを無理に言わせようとは思わないけど、もし話して楽になるならばんばん私を頼ってほしい。何か為になるようなことを言えるかはさておき。
少し下を向いて悩むような表情をした後、ルフトが私に目を合わせる。
「めがっ……やっべ、ローズちゃんっ!!」
口を軽く開いた時、聞こえたのは変な女の声。
シーナだ……。
「っ!しーちゃん!ろ、ローズお姉ちゃん、僕行くね!また今度お話の続きしよ!」
「ルフト!?待って話は────」
「るーくん!後で詳しく聞かせてもらうからね!」
シーナが走って来るのを見たルフトは、慌てた様子で行ってしまった。ちょうど話してくれそうな時だったのに。タイミング悪すぎるよ!
ていうかルフト、シーナを怖がってるみたいな感じしてたな。なんで。詳しく聞かせてって何?何をルフトは話すの?脅されてる?待って気になる。
「ローズちゃん、るーくんとどんなこと話してたの?教会に行くんじゃなかった?」
「別に。大したことは何も」
なんだ私が天使と話したらまずいのか?
「そっか……ねぇそうだ、ローズちゃんの魔法って、闇属性なんだよね?ねぇねぇ、何か見せてくれないかな?」
「えっ?……何で?」
「闇属性なんてすっごく気になるし、どんなカッコいい魔法使うのかな、って思って」
なんだ、何を企んでいる?なんでわざわざ魔法を見たいなんて……はっ。
今私に魔法を使わせてシーナに何かあれば私のせいになるよね?絶対に庇ってくれる兄さんも行ってしまったし、私に罪を着せることが目的なんじゃ。……いやでもそうしたらこの前あんないい手作りの髪飾りをくれた理由が分からなくなる。あれは悪く思ってるような相手にわざわざ作るものじゃなかった。
それによそ者のシーナをよく思っていない人だっている。シーナがそんなことを言ったとして、今私が完全に悪となる可能性は低い。
わけがわからない。
「……気分じゃないから」
このシーナにならこの返しで大丈夫だと思う。目的を知りたいけど、そんな真っ正面から聞けるわけないし……ああもうどうすればいいの!
「そっか……闇魔法を気分で使う女神……かっこよ」
「ごめん聞こえなかった。もう一回言ってもらえる?」
「へっ!?わっ、えっと何でもないの!残念だなぁ、って思って!思ってただけだと思ってた!声に出しちゃってたんだね!私ったら!あはは!ごめん私行くね!」
……嵐のような女だ……。
ごめん、って話しかけてきたのはシーナであって私じゃない。……うーん、ほんとよくわからなくなってきたな、シーナ。ヒロインで、おそらく転生者で。前世でこの世界をプレイしていて、隠しルートのキャラが好き。時々ブツブツ言い出す。何を言ってるのか気になる。
ていうか隠しキャラって誰?私知らない……。隠しルートがあったこと自体知らないな。そこでも私は悪役なのかな?シーナは私に悪役として動いて欲しいってこと?
「嫌だなぁ……」
「どうしたんですか?疲れたような顔してますよ。お兄さんが行ったのはそんなに悲しい?」
「んおっ」
やば、声をかけられて驚いたのと推しがいい顔で覗き込んできたので変な声出た。
「大丈夫ですか?何か詰まった?立ち食いでもしたんです?」
「なっ、何でもないから」
恥ずかしすぎる。最推しの前であんな声出すなんて……。数秒前の自分をぶっ叩きたい。
「ははは、顔赤いですよ?本当にローズは面白いね」
ひぃいいいいい!何それ何それ何それ!この男は私を悶え死にさせる気なのか!?
なんて反応を返せばいいのかわからなくなった私は、ノアの前から全速力で走り去った。
「漆黒の女神!カッコいい!!さすが女神様!大好きです!!」
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