第4話 すごい話すな、この神。と思ってました。
それを聞いても私はなんの反応もできなかった。
普通できますか、目の前の知人(中身は違う人)が神ですだなんて言って来た時に何かしらの反応を返すこと。
「えっと……じゃあノアは……」
「わかんないや。でも消えてはいない。それは感じるから。でも今表層に出てくることは不可能だ。そしてボクが今すぐこの体を明け渡すこともできない。ま、その程度問題じゃないよね?だってその“ノアくん”だってボクが創ったようなものだし、キミたちだってそうだし」
表情は変わらない。ただ少し目を細めて、顔を動かすことなく私たちを見回すと笑みを深めた。
なんだろう。立場は変わらないはずなのに、別の所に立っている感じがする。1つ上の位置から見られているような。
「……で、何をしにきたのですか?神だとか、どうでもよいことですが。お嬢様へ手を出されないのであればどうでも」
「何を。うーん。あ、それ探してた。本当はここに直行するつもりだったんだ。その魔道具を探してて。でも何か面白そうなことやってるから寄り道してきちゃった。この体ね、変に強化されててちょっとガタついてるんだ。ボクの力で補強はしてるけど、これからのこと対処するためにはそれだけじゃ心許ない。安定させるのにそれが必要なの。ねぇちょうだい?」
私が服ごと握ったままの魔道具を指す。握ってたとはいえ、服の下にあってよくわからないはずなのに。
でも渡せない。私が戦うのに必要なものだし、安定って言ってた。この神って言ってるのが本当だとして、ノアのその体に神が安定しちゃったらノア、戻れなくなるんじゃないの?
「……嫌。ノアが万全の状態で戻ってくるのなら考える」
「あー。そうだねぇ、保証はできないよ。元々の人格がこの体を弄られる過程でだいぶ傷付いてるから。きちんと戻せるかは、その“ノアくん”の力次第かな。ボクが去ったあとで変異したこの体に馴染めるかもわからないしね。でも、少しでもその可能性を上げたいのならボクにそれを渡すべきだよ。ボクがこのまま消えたら彼は終わりだからね。短期間すぎて体が耐えられないんだ。ああホラ、聞いたことない?神が人の身に降りたみたいな話。いくつかあるはずだよ」
知らない。世界の仕組みばかりに気を取られて、おとぎ話とかは読んでなかったから。本当に軽くとか知らない。知ってる中にそんな内容の話はなかったし。
「白き癒しの聖女、とかですか?」
ミーシャは知ってた。少し周りの反応を見ても、なにそれという顔はしてない。普通にみんな知ってる話か……。
「いや、それはボク自身。どちらかを勝たすつもりはなかったから、みんな癒してたんだ。ま、余計に激しい争いになったんだけど。始めは国取りだったのが最終的にボクの所有権を巡って戦ってたよね。飽きたからそれらしい演技して消えたけど」
「え……嘘……あの話好きだったのに……」
シーナも知ってたのに私知らないって。ほんと私人任せにしすぎだよね。世界のこと見て回りたいって思ったのに知ろうとしてない。意味ない。
「まあアレだよ。ボクが人の身に降りることで、その身はボクに耐えようとして変質するの。より大きな力に耐えられるよう、扱えるよう。そうなった体に馴染めなければ、力を制御できず自爆。馴染めれば、今まで通り。いや、それ以上の力を手に入れられる。でも“ノアくん”は傷付いてるから普通よりも戻れる可能性が低い。短期間っていうのは、力の出入りの問題、ぐわって広がったものがまた急激に凹む感じ?それで耐えられなくてバーンしちゃう。死に方はたくさんだったよ。心臓止まったり、血吐いたり。頭が弾け飛んだのもいたなぁ。みんな自業自得なんだけどさ」
ニコニコしながら話してる。みんなは黙ってそれを聞いている。
結局魔道具はどうなったの。渡さなくていい?
この神の目的はなんなんだろう。対処、っと言ってた。何を対処するつもりなんだろう?
「結局何がしたいの」
「調子に乗ってる子供たちの躾。ボクの世界だ。好きにはさせない。あ、魔道具渡してくれる気になった?」
神というのは本当なんだろうね。
ノアが戻ってくるかわからないっていうのも。
「……わかった。渡す。でも、約束して」
「おお。神にそんなこと言う?すごいね。何かな。好みの体で機嫌が良いからね、ボクにできることなら聞いてあげよう」
「ノアがそのまま戻れるように、協力して。絶対じゃないのはわかってる。確率が高いようにしてくれればいい。だから、悪いようには、しないで……」
だってこれじゃあノアを人質に取られているようなものだし。この体がどうなってもいいの?なんて言われたら聞くしかない。
それにもし、この神がルス教についてしまったらノアが戻る確率はほとんどなくなる。魔道具だって必要っぽかったし、そもそもあそこはノアを望んでいないから。
「ああうん。そんなこと。いいよ。わかった。ボクのこの世界にかけて誓おう。ていうかね、ボクのすることはキミたちにとってもいいことだよ。こんな状況なんだし、大体のことは察せる。ボクね、ボクを信仰する宗教から命狙われてるんだ。神からの支配を脱したいって」
この神にとって世界は大事そうだった。それにかけるほどだから、破ることはないはず。
それに命狙われてるって。
え?
「ルス教からルス神が命狙われてるの!?」
饒舌な神
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