第1話 偵察……もとい探索です。
4章1話になります。
別人称の後、ローズ視点
その世界には神がいた。
信仰として、人々が創り出したものではなく実際にこの今の世界を創造した神が、実在していた。
名を、ルス。神自ら名乗ったものであり、この世界の人々が名付けたというわけではない。神が神として人々の前に現れた回数は少なくなく、姿を変え、奇跡を起こし神としての力を見せつけ、自らの名を、存在を広めていった。
この神は今の世界の仕組みを作ったのであり、世界自体、つまり土台を創り出したモノはまた別である。ならばこの神は一体どこからやってきたのか……ということになるのだが、神はまだ語らない。
地上のどこかへ住んでいる、などということはなく、いつもは世界とは違う異空間に概念として存在している。よくある話では信仰が薄まると信仰対象も力を失うということだが、この神の存在方法は信仰力などではないため、そんなことはない。
今残る1番古い神の伝承は、悪を打ち倒すため勇者へ力を授けたというようなもの。この伝えからルス教が生まれ、異常なほどの光信仰が始まったとも言える。
神、曰く。
『そんなつもりは全くもってなかった』
らしいが果たして。
●●
偵察、ってことでシーナを説得してきた。
ただ今私は1人で影の中である。
「おっ、なんか人集まってる」
教会の、城みたいなでっかい建物の中。建物の中なんて影だらけだからね。移動も楽チン。内装はほぼ白だけどそんなの影には関係ないしね。
本当はノアを探そうと思ってきたんだけど、勘で移動してる内に上へ上へと来てしまった。今?5階くらいじゃないかな。何階まであるのかわからないけど。
とりあえず集まって話してるから盗み聞きしよ。
『だから言ったではありませんか!アレは、あの男は信用ならないと!』
『だが……しかし、だな……実際神を落としたのはあやつであろう?実力は充分、今までそれでやってきたではないか』
『ええ、そうですよ。その通りでございますとも。実力と思考がこちらへ従うのであれば、何も言うことは無し。実力があれど考えが違うのであれば、“裏”へ回すか思考処理を行う。せめて思考処理だけでもしておくべきだったのです!』
『そんなにカリカリしてても起こったことはもうどうにもなりませんわ、ねぇ、枢機卿』
『うん。そうだね。とりあえずさ、エルピスの助手は確保できたんだから良しとしようよ。それから神の対処を考えよう。それでいいですね?教皇様』
『ああ……』
偉い人たちの集まりだったらしい。どうりでなんか豪奢な部屋だと思ったよ。
で、教皇か。あの人だ。なんか恰幅が良くて、まさにそういう役職についてますって感じの。……隣の、枢機卿って呼ばれてた人の方が強そう。戦闘面も、立場も。形だけのトップなのかな?
『じゃあ彼の頭に直接聞きに行こう。エルピスの目的と反乱理由を。そして今、彼はどこにいるのか。神はどうしたのか。……ま、何にも知らないんだろうけど。エルピスの下で働いてたのが悪かったね』
『……それより先にするべきことがあるだろう』
『なんですの?』
教皇が、手に持った杖で床をダンッ、と叩く。なんだ。……あれ?もしかして見つかっ……。
『……ああ、本当だ。すみません、こんなこと始めてで。さぁ仕事だよ』
枢機卿が右手を肩の高さまで上げる。するとそこへ小柄な人物が現れた。深く被ったフードの影で、顔は見えない。よって性別はわからない。
その場にいる人たちみんな白い服だけど、新しく現れた人も白。ただ、この人はノアの着ていた服みたいに、体のシルエットを隠すような形で、所々にベルトが付いている服を着ていた。そのベルトはすでにいくつか閉まっている。あれじゃあ移動もままならない……。
『影を分解して。影に潜り込むネズミを炙り出さないとね』
私のことだ。退散しなきゃ。
その言葉で、その人物は床へ、詳しくは床の影へ手を突っ込んだ。あ、魔法に干渉されてるらしい。この影の街を作り出してる魔法へ直接魔力を混ぜ込んで、魔法を解除しようとしてるんだ。
ぐるぐるする。とりあえず早くここから離れよう。それがいい気がする。
「たいさーん……」
急いでその場から離れれば、ぐるぐるは治った。魔法に他人が無理に干渉するとああなるのか……。覚えとこ。下手に兄さんとか、他の人の魔法手伝おうなんて考えないように。
「さてと」
戻るか、まだ探索するか。間違えた。偵察。遊びじゃないから。
そろそろ兄さんも戻ってきそうなんだよね。戻って来た時に居なかったら怒られそうだし、許可したシーナも怒られそう。戻ろう。
もう少し閑話書こうかと思っていたのですが、ネタが無かったのでやめました。
今のうちに案募集します、4章終了後か4章前に差し込みますのでネタ提供お願いします。どんなのが見たい!みたいなのでもなんでもいいので…!ぜひ!




