第37話 教祖の隠密行動2
シーナにしました。
私、シーナ。朝ごはんを食べた後ルーチェさんと別れ、お仕事をしているシスターさんたちのとこに行って仕事の邪魔を……じゃない、お話を聞かせてもらってた。
ルス教について。教会のどの本が1番色々詳しく書いてあるのかだとか上の人はどんな人たちなのかとか、最近何があったとか、例の闇属性の女性はどうなったのか、とか。
まあ、信者さんに色々教えるのも仕事だよね?多分。シスターの仕事なんてわかんない。でも楽しそうにみんな話すんだよね。サボれるからかな。
「そうそう、また見失ったんですって。噂じゃあもう、居場所も掴めてないらしいわよ」
「へぇ〜。それって不味くないの?」
「大変よぉ、だって、闇よ?闇属性で暴れるってわかってる人が野放しになってるのよ?不味いに決まってる」
そういうとこについて聞いたんじゃ無いんだけど……。ルス教の信用とかそういうとこが不味くない?ってことなんだけど。
「その……暴れたっていうのは、1回だけ?なんだよね?」
「そうよ、でも闇でしょ、本当はどうだかわからないじゃない」
その暴れたっていうのも本当かどうかわからないよね。全部闇だから悪って決めつけないでもらいたい。
この話の時だけは辛い。だって相手に同意しないとバレるもん。同意したくないのに。
「そ、っか」
「それ関係なんだけどね、前に話したでしょう、主の使いによって女を追ってた大司教が罰せられたって。だから一部じゃ上は間違ったことをしてるんじゃないか、って話も出てるの。本当は闇属性じゃないのでは?とか、あの女は闇でも主の加護を受けている者なんじゃ、とか。闇だとしても加護待ちじゃ話は変わってくるわよね」
「へ、へぇ〜」
そう、間違ったことをしてる。だから今すぐ女神を追うのはやめてもらいたいし、闇が悪だとするのもやめてもらいたい。
加護持ちっていうのは、光属性とか闇属性になるのと同じくらいの確率で現れるらしい。なんでも、神から特別な力を授かってるとか。過去の英雄とかの話を読めばよく出てくる。とてつもなく力持ちとか、魔力量がものすごく多いとか。祈るだけで致命傷でも治せちゃうとかも。
力持ちってさ、どの基準だろうね。握力?腕力?木くらいなら私でも片手で抜けるよ。潰すのもできる。大きさは……そうだなぁ、大人2人が両手を広げて輪になったときくらいならいけるんじゃないかな。10mくらいなら余裕だよね。だって魔法で体強化すればいいだけだし。それなら誰でも力持ちになれるよね。
多分、加護っていうくらいだからもっとすごいんだろうな。片手で地面割るとかできそう。
ものすごく多い魔力量ってどれくらいだろうね。シンとかだいぶ多いと思うんだよね。多分ね、一週間くらい全力で戦ってても生きてられるくらいはあるんじゃない?バケモノじゃん。私がそれしたら4日でギブ。死にたくない。命削ってまで魔法使うなんてしたくない。体力までも行ったことないもん。だから魔力切れで動けないとか、倦怠感とかの経験がないの。村にいた時にしておくんだったなぁ、慣れるべきだったよね。
あ、女神のためならいくらでも命削ります。
最後の祈って致命傷治すってのはそれっぽい。ありそうだもん。聖女とか聖人とか呼ばれるやつでしょ。シンでも致命傷は治せそうだけどね。あの人、真っ二つとかになってなきゃ治せそうだよね。女神なら死んでても治しそうだし。いや絶対に死なせないけど。例えだから。……例えでも殺してしまい誠に申し訳ございません!
加護ってなんだろね。あ、そうそう加護持ちは体のどこかに印があるんだって。加護を使うとそれが光るらしいよ。神の加護って感じする。
ま、女神には関係ない話だよね。女神は神の加護持ちとか以前にまず神だから。女神だから。授ける側だから。神だし。存在が神。
「でもいくら加護持ちだからって人を傷つけるのは良くないわよねぇ。……もしかするとその情報が間違ってるのかしら。でももうそういう風に言ってしまったから引くに引けない……ねぇ、ルーチェ様と話してたでしょう、何か言ってなかった?」
「ルーチェさんはそれは合ってるみたいなこと言ってたかな。ああでも……どなただったか忘れたけど、話してるのこっそり聞いちゃったんだよね。上の人たちが、主に逆らったことをしてるって」
これは本当のこと。
一般立ち入り禁止書庫で隠れて本見てたら、2人の男がコソコソ話してるの。隠れたまま隣まで行って聞いてたらさ、1人がそんなこと言い出して。主のお言葉は違ったはずだ!とかなんとか。
「う、わぁ。それ私聞いたら不味そうだわ。やめておく。ここだけの話、上にそれ関係で直訴しに行った人が何人か戻って来てないって噂なの。消されたくないもの。……そろそろ怒られそうだから行くわ。また呼んでね」
「はーい」
ふーん。ふむふむ。戻ってこない人、か。
他のシスターさんにも聞いてみよ、それ。シンにも伝えなきゃ。確証なくてもわかったことは全部言うようにしてるんだ。もしもは絶対ないけど、もし私がやらかして居なくなったり死んだりしたらもう伝えられないもん。
よし、頑張りましょう!
お昼くらい。
シスターさんたちと一緒に礼拝した後、帰ろうとしたら青いのがいた。シスターさんたちに囲まれてる。てか何あの服!真っ白じゃん、吹いたわ。
何してるんだろ?……花を、咲かせて……る?
白の服でそれ?笑うしかない。そうだ、特別な演出してあげよう。
「風よ……えいっ」
ブワッ、と風で地面に咲いたたくさんの花から花弁が取れ、舞い上がる。シスターさんたちから嬌声が上がる。あれ、想像してたのと違う。私はもっとこう、花びらが顔にぶち当たって面白いことになる感じだと思ってたのになんでいい感じになってんのさ。
「くっ、ならこうだ!荒れ狂え!」
結果はご存知の通り。
『まさか魔法失敗して頭に花咲かすとは思わなかった。それで可愛いとか言われてるから腹立つ。ものすごく笑ったけどさ』などと供述しており……。




