第36話 教祖の隠密行動
シーナ視点
私はただ今隠密行動中の女神教教祖、シーナ。
アルカーナ国へはとても簡単に入れた。簡単すぎて大丈夫か?って心配になったよね。多分、まさか外からの侵入者が来るなんて考えられてないからそこら辺弱いんだろうね。
今私はシンとこっそり魔道具を使って連絡を取り合いながら行動してる。
誠に誠に気に入らないんですが、ルス教信者として。
私の最終目的はルス教を無くす、若しくは考え方を変えさせる。ま、光信仰はいいんだけど闇が絶対悪とかやめてほしいよね。女神が悲しむし、あんなカッコいいのに何言ってんの?って感じだし。
闇が悪っていう教え無くさせるってことはルス教自体を無くすのと変わらないかな?
じゃあ私の目的はルス教を無くすこと!だ。別にさ、信じるものは人それぞれだよ?でもね、悪だなんてするものが悪かったな。女神が悪?忌避するべきもの?ばっかじゃない?
だから私が変えてあげる。
女神こそ至高。女神こそ正義。女神こそ全て。女神よ永遠なれ。ようこそ、女神教へ。
「シーナさん、おはようございます。今日も朝の礼拝ですか?」
「おはようございます。ええ、そうなんです」
「熱心ですね、良いことです。神は見ておられますよ」
シスターさんに声をかけられるのにももう慣れたな。最初は信仰するものが違うとバレないかヒヤヒヤだったもん。全く杞憂に終わりましたね。
ルス教信者として教会に入るのも簡単だった。
女神を信仰する気持ちは、ルス教でも通じたみたい。ルス教の神を崇めているフリをしながら女神を崇めてるからね、私。
アルカーナの教会は、ルス教の地だけあって大きい。聖堂って呼ばれてる、ステンドグラスとルス神の象徴である、丸に4つトゲが生えた太陽みたいな形の像とパイプオルガンみたいなでっかい楽器が壁に取り付けられてる綺麗な広い部屋があるんだけど、私はいつもそこで礼拝してる。他の人も大抵そう。パイプオルガンみたいなのはあれ、5人で演奏する楽器なんだって。今は奏者がいないから弾けないとも。
説法とかを聴くのはまた別の所。そこも聖堂らしいんだけど、聖堂って呼ばれてることはない。何々様のお話を聴きに行きましょう、とかで表されるから。ここはステンドグラスもパイプオルガンもない。壁にルス教の象徴が刺繍された大きな布が垂れてるくらい。
何回か行った。なんか、ちょうど聴きに行った話をしてる人が毎回同じで、しかもその人の話を聴くのは信者の中でも特に熱心な信者の人たちらしくて、私も熱心な信者として思われてる。騙されてて笑えた。
でもね、その人の説法ほんと良いの。為になる。もちろん女神教信者として、だけどね?主を崇め、主を敬いなさい、って。私の場合主=女神で聴いてるから苦じゃない。まさかそんな認識で聴いてるとは思われてないんだろうけど。
「シーナさん。おはよう、今日も来てらしたのね。本当に熱心なこと」
「ルーチェさん、おはようございます。主の為、今の私にできることをしようと思いまして」
ルーチェさんはルス教のシスター。結構仲良くなった人。馴れ合うつもりはないけど、話を聞く上で内部の知り合いというのはとても重要。
しかもルーチェさん、上の方の役職の人だったんだよね。私すごい、いい人捕まえた。
「良い心がけね。きちんと続けるといいわ。そうだ、朝食は済んでいる?よければ今から朝食なの。一緒にどう?」
「いいんですか?他のシスターさんたちもいますよね」
「問題ないわ。敷地内に食堂があるのは知っているでしょう。本当なら別の場所で集まって皆で決められた食事を食べるのだけど、私の場合朝はそこで済ませてしまうことが多いのよ。私の立場だから許されることね。朝だけは無料で食事が提供されているのよ。シーナさんのような信者の方も気軽に来られるように」
シスターさんたちは決められた時間に起きて決められた時間に決められたことをする。規則正しいことをすることで何たら〜みたいな話を少し前にルーチェさんから延々と聞かされた覚えがあるけど内容はもう覚えてない。
部活の合宿かな。
何回か食堂は行ったことがある。お昼にるーくんたちとそこで食べた。美味しかった。なんか悔しかった。へぇ、朝は無料か。いいこと聞いた。
「そうなんですね。なら行きます」
シーナ視点続けるかローズに戻るかは明日考える




