第33話 お風呂ですって。
「じゃ、ここでお別れね。バイバ〜イ。また会おうねぇ」
チャラ男は、魔法調べるから別行動する、って言って行っちゃった。まあ、元々そうだったしね。なんか着いてきただけだし、別行動されても問題はない。
「もう会いたくないですよね、お姉様」
「会いたいか、って言われると会いたくない、かな」
「ですよね〜!」
苦手な感じは治らなかったし。なんだろうね、顔はいいの。上の方に分類されるんじゃない?だって兄さんとかノアとかと並んでてもまあ大丈夫だったし。ま、ノアには及ばないけど。
チャラ男も何かの乙女ゲームの登場人物だったのかな。……いや、ないか。あんなの攻略対象なら私絶対にやらない。ミーシャもシーナも好きじゃないなら、世の乙女も嫌って言う人多いはず。制作陣が案出してる時点でボツだよね。
「さて、宿を探そう。……おそらく長期滞在になるぞ」
情報集めて、潜り込んで。どのくらいかかるんだろうね?ていうかその間私が闇だとバレずにいることができますかね?
「さっきの門兵たちが言っていたけど、少ししかないようだよ。商人が滞在する時に使うような。外から来ないのなら、商売にならないだろうね。ああ、あっちだ」
●●
私は、属性が闇だとバレてはいけない。
だからアルカーナにいる内は兄さんと離れられない。どの程度の距離にいないといけないとか詳しいことは兄さんから言われてない。ただ、離れるなよ、とだけ。
わざと言わないんじゃ?
いやいや、そんな大事なこと普通は言うからまさかそんなこと兄さんがするはずがない。……ないよね?
「あぁ……ローズと2人っきりだ……」
宿の部屋の中。
兄さんは私を抱き締め、髪に顔を埋めていた。スゥゥウって音が頭からする。吸われてるらしい。
やだな、森にいる間髪洗えてないから匂ってるかも。恥ずかしい。
「に、兄さん……頭洗えてないから、臭いから」
「そんなことない。無臭だ。いや無臭じゃない。ローズの匂いがする。大好きな匂いがする。すぅぅううううう…………はぁぁ……はっ、これから一緒に寝られるのか!やったな、ローズ!」
やったな、じゃなくてさ。
私の匂いって何、体臭そんなしてた?うっわ恥ずかし、兄さんだから好きだなんて言ってくれてるけど他の人なんて思ってたんだろう。
ていうか兄さんでも妹の体臭好きってそれどうなの。大好きって言っちゃってるし。
「……ベッドくらい離れても大丈夫でしょ?」
「いや、駄目だ。危ない」
嘘だ。絶対嘘だ。ていうかその程度も駄目なんて、風呂で体洗う時どうするんだろう?
……まさか一緒?
いやいやいや、流石にそれはない。兄さんもそれは考えてくれてるはず。まさかこの年で一緒はないよね。
「お姉様ァっ!お風呂があるそうです!使っていいと宿のおばさんに言われました!凄いんですよ、お湯がたっぷりであったまるんですって!今もう入れるそうです!行きましょう!」
バァンッ!と大きな音を立てて部屋の扉を開け、入ってきたミーシャ。私が兄さんに抱き締められててもなんの反応もしない。慣れたってことか。
風呂、か。しかも湯船付き。この世界じゃ珍しい。大抵は水で体洗うだけだから。湯船に浸かるのはやっぱり日本独特だったんだなぁ、って思った。村で川の近く住んでる人はそれやってた気がするけど、大量の水をすぐに運べる人の特権だよね。火属性じゃなきゃ燃料もないとできないし。
「行く。兄さん、離れて平気?」
「いや……でも……建物の大きさ的にそこまで広くはないはず、なら平気、か……?まさか一緒に入るわけにはいかないし……」
流石に兄さんもそこはちゃんと駄目ってわかってくれてるみたい。良かった。
あれ待てよ、私女として風呂入って平気なの?
「ミーシャ、風呂は一つ?」
「はい。先に使っていいよ、って言われました!……あ、そうかお姉様が女性とバレたらまた面倒なことになりそうですね。どうしましょう?」
「……結界張っておく。その間は誰も近づかないから大丈夫だ。ここ今俺たちしか泊まってないだろ。俺も風呂の前までは着いていくから問題ない。もし、もしも宿の人が来たら入らないように言っておくよ」
それなら大丈夫そう。バレる心配は多分ない。
先に女子入るならセネルも誘っていった方が良さそうだな。
「うふふ、お姉様とお風呂……」
ミーシャが怖い。
ああ、ミーシャと風呂か……裸か……体型の差を見せつけられるみたいで嫌だなぁ……。特に顔の下の辺り。ミーシャ、大きい。フィオの方が大きいらしいけどミーシャも充分大きい。私を見ろ、これが男と間違えられるものだ。
おかしい、ゲームの“ローズ”はちゃんとあったのに。なんでないんだ。
「行かないのか、ローズ」
「あ、行く。行くよ」
せめてもの救いは、そこにあったはずの肉が別の場所に行ってないこと、かな。スレンダーって言うの?全部細い。うん、“全部”だからね。ぺ、ペタンコじゃないもん!
山はあります。
旅ができるような男物の、ちゃんとした生地の服着ると分からなくなるというだけで。でも小さいんですけど。
ま、セネルよりはあります(セネルは年下)(ミーシャも年下)




