第32話 ここがアルカーナです。
ああ、完璧ではないですか?
これほどまでに事は上手く動いております。
これならば、必ず。必ず……!
●●
「緊張しました……」
「まだ安心はできないからな」
アルカーナ国。
青い屋根と白い壁で統一された建物がまず目に入る。全部同じ。すごい。建物の形も同じような感じで、歪さは感じられない。全部が整っていて、綺麗。
宗教で神秘の国、って感じする。
私たちは何事もなく、旅人として国へと入ることができていた。普通は商人とかしか来ないらしくて、ちょっと驚かれたけどそれだけ。
「中心に城があって〜、その向こう、見える?あの高い塔のある城の次に大っきい建物が、教会」
お椀みたいな地形の中にアルカーナは収まってる。だから今いる門の位置は1番上で、この国がよく見える。
アルカーナは小さな国。門の位置からだと国全体が見渡せるんだね。普通それって城からじゃない?
「綺麗ね!青と白で、空みたい!私、この国好きよ」
「うんうん、嬉しいねぇ」
綺麗。本当に綺麗だと思う。
観光で来てたら普通に楽しめたんだろうなぁ。でも今回目的が目的だからさ……。
私は今の現状は嫌。ずっと追いかけられて、後ろとか周りみてビクビクしながら過ごさないといけなくて。普通に街にも入れないしさ。それに男って何度も何度も言われて……私女だから!
もう『おにーさん、私とお茶しませんか?』なんて逆ナンされたくないし、前から歩いてくる赤い顔した女の子からキャッ!なんてわざとらしくぶつかられたりしたくないんだ……っ!
でもどうすればこれが変わるのかはよくわからない。私だけなら、時が経てば普通の人たちは忘れてくれるんだろうなぁ、って思ってた。でも兄さんたちは違う。
『────潰す。再起不能にする』
ルス教をどうするか、って話をした時。これはあれだな、兄さんが嘘ついて私のとこまで来た時だな。
兄さんは極々真面目な顔で、なんて事ないみたいにそういった。周りの木々がザワザワって風で揺れて拍手してるみたいだったのを覚えてる。
『めっためたです!お姉様かわいそうですもん!』
『まあ……そうでもしないとローズが安心して過ごせないですからね』
その後にミーシャが当然、って具合に兄さんに頷いて、ノアもおかしいことはない、みたいにそう言ってた。ナラルさんだけなんか苦笑してたな。
『お嬢様のためにもなりますし、もちろん協力させて頂きます。力の出し惜しみはしませんよ』
『ローズの役に立てるのね!何でもするわ!とりあえず潰すのね!』
『あ〜、人変えとか面白そうだよねぇ。全部変えて教えも変えちゃうの』
セネルとエスペラールも普通にやるって言ってるし、チャラ男だっていつもみたいにニヤニヤして反対しなかった。
え?あれ?世界的に広まってる宗教を潰すなんて言ってるのっておかしいことじゃないの?私がおかしいのかな。
まずアルカーナへ行く。そして隠れながらルス教に関する情報を集め、どうにかして壊す。
その肝心の“壊す”っていうのが、人によって考えてるのが違うみたいで。そこは面白い。
だって、兄さんとミーシャとセネルは弱い所を見つけて壊す(物理)だし、ノアとナラルさんとエスペラールは弱い所を見つけて壊す(情報戦)で。時々話が噛み合ってない。
いつもそこまでしなくていいんじゃないの、なんて返してたら意見を聞かれることはなくなった。




