第30話 敵陣前夜さ皆無ですねこれ。
「ねぇノア────」
「ミーシャ、これもう少し焼いてくれませんか。まだ赤いので」
「はーい、どうぞっ!」
「ミーシャちゃん俺のも!」
「そのくらい食べられるんじゃないですか?」
「まだ生肉なんだけど!?」
チャラ男のはともかく、どう見てもノアの肉、ちゃんと焼けてたんだけどな。赤いとこなんてないように見えた。
話しかけようとすると話を逸らす。近づけばそれとなく離れていく。
うーん、やっぱ避けられてる?私何かした?
「ローズ、食べないのか?食欲ない?」
「えっ?あ、ううん、食べる」
今日の夕飯は魔物の肉にエスペラール特製スープ。スープが美味しいのはもちろん、チャラ男が解体してた魔物の肉もエスペラールが処理したことによりとても美味しい。なぜ彼が料理までできるのかはわからない。執事って料理人じゃないよね?
「明日からは絶対に、俺の側から離れるなよ。そうじゃなきゃ、隠せないから」
私は魔力を薄くするのが苦手。魔力薄くって何?
だから兄さんがどうにかして隠すって言ってたんだけど、どうにかのその内容を教えてくれない。あれか?光の魔法で隠すの?いやでも光ってバレても面倒くさいって言ってたよ?
わかんないね。
「うん。わかってる」
その返事で兄さんは満足そうな顔をした。
私が近くにいなきゃいけない、離れちゃいけない理由が出来たってだけで嬉しいんじゃ……とか思ったけどまさかそんな訳ないし、兄さんがそんなこと考えてるはずない。
自意識過剰だな恥ずかしい。
「そうだローズ、これ出来てる。面白い魔法込めたな。どっちがどっちのだ?」
魔道具だ。兄さんに最初に渡された時よりなんかキラキラしてる気がする。
どんな仕上げしたんだろう。
「こっちの丸いのがミーシャで、こっちがノア」
「じゃあ残りがローズか。……ローズの相手を考えて選んだ感性は誇らしいけどアイツのために選んだって考えるとなんとも言えない……うっ、クソっ」
渋い顔になりながら、兄さんはミーシャとノアに魔道具を渡しに行った。火を8人みんなで囲んでるから、座ったままじゃ渡せない。それに今兄さんとしてた会話も聞こえてない。
兄さんがしなくても私自分で渡そうと思ってたんだけどな。ま、してくれるならいっか。肉食べよ。
「お姉様ぁ〜!ありがとうございます!」
「……僕から、も。ありがとう」
肉に噛り付いてたら、2人からお礼を言われた。2人共早速首に下げてくれてる。ノアは兄さんに小突かれて苦笑しながらだったけど。
さっき私、ノアに何言おうとしてたんだったかな。
「それな〜に?魔道具?ローズちゃんが作ったの?」
「さ、ローズ。もっと食え」
チャラ男を無視して兄さんは私に肉を差し出してきた。私まだ食べてる途中なんだけど。
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