第28話 気がつけば朝でした。
「……はっ。あれ?」
気がついたら朝だった。
隣を見ればミーシャがまだ寝てる。背中が暖かいから兄さんもいる。いつもなら私のこと抱きしめて寝てるんだけど今日は普通に寝てる。2人を起こさないようにそっと起き上がると、先に起きていた人物から声がかかった。
「起きましたか、ローズ。今日は早いですね」
「ノア。おはよう」
「おはようございます。変な夢でも見たんですか?」
ノアはいつも起きるの早い。ナラルさんより早く起きてる。早く起きて何してのかは知らない。大抵は、起こしてる焚き火を見つめてることが多い。
もの憂げな表情で揺らめく炎を見つめてるノアはすごく、うん。素敵だった。私そんなに早く起きられないから滅多に見られないんだけどさ。
「ううん、何も見てない。……と思う。気が付いたら朝だった」
「そうですか。……それは?」
ノアが指差してきたのは昨日兄さんから渡された魔道具。握りしめて寝てたみたいだ。
結局魔法はどうしたんだったかな。
「兄さんから貰った魔道具。魔法込めないか?って言われて」
「魔法を?」
「うん。……まあどんなの込めるか悩んでる内に……」
「どうしたんです?」
違う、込めたな、魔法。良いのを思い付いて込めた。込めた、んだけど……。
「……どんなの込めたんだっけ……」
忘れちゃったよ肝心の中身を。え、待って、そんな結構大事なことだよ、本当に忘れたの?
えっと、守れないから反撃系がいいなって思って、反撃の内容を考えてて、私闇だしそれを活かすかあんまり出さないようにするか悩んで、2人も闇だ!なんて言われたら嫌だからバレないようなのがいいのかなって思って……あっるぇ……おかしいなぁ。
駄目だ。忘れたらしい。
「込めたのに忘れたってことですか?それ普通忘れます?ふふ、ほんとローズってどこかおかしいね」
「いや酷くない?」
ほんとどこかおかしいってさ、普通に悪口じゃん。わかってるけど。だって普通は忘れないもん、こんなこと。
いつ寝たのかも覚えてないなぁ。
「すみません。ではもうそれは完成系なんですか?」
「んーん。兄さんが仕上げするって。そしたら完成。でも今日中には渡せると思うよ。兄さんそういうの早いし」
どれくらいかかるんだろう。兄さんのことだから気がついたら終わらせてそう。
ていうか、ここで渡してきたってことはできたらアルカーナに入る前に完成させたいってことだよね。入ったらこんなことできないかもだし。
「……渡せる?どういうことです」
「あー、これ、ノアとミーシャの分もなの」
少し形とか石の色とかが違うからどれを誰のにするかは決めてた。それは覚えてる。込めた魔法は忘れましたがね!
ミーシャのは、丸い金属の土台に赤い石がはめ込まれたやつ。ミーシャの茶髪に合うな、って思って。ノアのはダイヤ形。石の色は青。そのまんま。私?私のは、三角。2人の決めて余った1つにした。真っ黒な石がはまってる。見事に全部イメージに合ったものになったよね。
「そう、なんですか。…………僕にはひ……いえ、いえ。ありがとうございます。後でシンにもお礼を言わないとね。僕のために行動してくれるような人じゃないのにわざわざしてくれたんですし」
なんだろう、何を言いかけたんだろう。なんか、嫌、みたいな顔してた、ような……気がする。気のせいだな。そんなことするはずないし。
ノアがそんなことをすると思ってしまった一瞬前の私をぶん殴りたいな。
今までのノアの対応からしてあり得ないことなのに、ということです。
感想ありがとうございます!!!
活動報告で時々、その時の裏話的なのを言ってます。補足等。




