第27話 私が魔道具ですか。
夜。森のちょうど中くらいまで来た。……らしい。私にはわからない。わからないと不味いと思いながらも、他の人がわかってくれてるから任せちゃってる。1人になった時どうするんだ。
今のところはまあいいとして。
あれか、心配なのは、もしルス教から逃げることになったとして(今も逃げてるけど)、アルカーナ国から逃げる時に私がもしこの森で1人になったら、なんだよね。迷うの確定!出られないぜ!
……ふざけてる場合ではなくガチ目にやばいと思うんだ。太陽の方くらい見るようにしとこ。
「ローズ?寝られないのか?」
地面から上へ高く高く伸びる木々、そこから覗く真っ暗な闇をぼーっと見つめながらそんなことを考えていたら、兄さんが声をかけてきた。
兄さんは真横にいるので私が寝てなければすぐに気がつくのです。反対の隣にはミーシャがいる。最近外で寝る時は大抵こう。時々ミーシャの向こうにノアがくる。兄さんは苦い顔をする。
今日はミーシャの隣にノアはいない。
「何か、考え事してた。もう寝るよ、大丈夫」
なんか目冴えてるから寝るのに時間はかかるだろうけど、その内寝れるさ。
「そっか。……もし寝られないのなら、これ」
「……魔道具?」
上体を起こした兄さんが私へと差し出したのは、ペンダントみたいな魔道具が3つ。細い鎖がついてて、ネックレスみたいに首から下げられるようになってる。
細かな細工で、中央と上の方に何かの石がついてるやつ。綺麗。
眠れる魔道具とか?いや兄さんがそんなの作るか?ていうか光魔法でそんなの作れる?
「ああ、って言ってもまだ未完成なんだ。ミーシャと……ものすごく癪なんだけどさ、あいつの分も。これにローズが、魔法を込めないか?魔力を込めるだけでもいいんだ。相手を強く思って込めた魔法は、少ない力でも最大限に効果を発揮してくれる。仕上げはやるから、ほら。眠くなるまで考えてみてくれ」
兄さんと同じように上体だけ起こして、魔道具を受け取る。
光魔法がかかった魔道具ってものすごく高いんだよねー。魔道具自体高いんだけど、光魔法は使える人が少ないからもっと高い。庶民で持ってる人なんてそうそういないし、貴族だって2つか3つ持てたら凄い!ってなるくらい。どこかの国で下位の貴族位が買えるらしいんだけど、そっちの方が安いって。
そんなのを私は影の中に何十個も仕舞ってますね。そして兄さんはぽんぽん作ってます。
魔道具を作るのは手間がかかる。まず込める魔法に耐えられる土台から探さないといけない。これが難しい。そして土台に対して込める魔法が大きすぎたら魔道具は壊れるし、複雑なものはまず込められない。難しいんだって。魔法を込めて、定着させて、効果が持続するようにする。
だからまず作る人自体が少ない。
でも兄さんなんていつの間にか作ってるし、いつ土台見つけてるんだろう?っていうのが謎。街に寄った時にでも買ってるのかな?
「でも。守るようなの込められるわけないし、変にやって壊しちゃうかも」
「大丈夫、壊れないようにしといたから。魔法はどんなのでもいいんだ。無理そうならやめていいから」
どんなのでもいいって言われると迷うよね。うーむ。……考えるか。
魔道具。所持して効果を得る。
どんな効果?兄さんから貰ってるのは、守る系、反撃系、回復系……たくさんだ。その中から私にできそうなのは……反撃系、かな?
発想が攻撃的だ。まあいいか。どんな反撃をしようか。範囲は?どの程度の反撃?そもそも、どれくらいで反応するようにする?
うわぁ、兄さんこんなこと考えて魔道具作ってるんだ。確かに魔道具作るの大変。




