第24話 森の中です。
着いて行って足引っ張るかもって心配してたのどこのどなた様でしたっけ……。全くその心配ないよね、ミーシャ。
私の方が心配になってきたよこれ。
闇の魔法の扱いはセネルの方が上。兄さんが全部済ませるから最近はそういった魔法を使うことも無かったし。兄さんが居なかった時は、ノアとナラルさんがあっという間に終わらせちゃうから私が入れば迷惑になってたし。
うん、せめて自分の身くらいは守れればいいな。足引っ張ることがないようにね。影の中入るだけだし、問題ない。……たぶん。
「わぉ、見事にローズちゃん付近だけ結界が何重にもなってる。多重結界ってめちゃくちゃ維持しんどいよね〜。魔力も使うしさ。シンくんしんどそうに見えないのなんでだろーね?そんなの屁でもない感じ?俺がおかしいの?あとさ、俺だけ避けて結界張ってるのなんで?」
「多重結界くらいどうってことないだろ。お前は自分でやれ。できんだろ。なんで俺がお前の面倒まで見んだよ」
兄さんのこういうのは守られてる、思われてるって感じで嬉しいんだけど、そこまで私に力を割かなくていいよ!?という気持ちもあるからなんとも言えない。
嬉しい、なんて言えば兄さんはもっと大きなことしそうだな。
「ねぇ、私も結界できるわ!する?」
「お嬢様はしなくていいんです。お嬢様のアレは結界ではなく、罠、ですよ。中の者を死に至らしめるような」
怖っ。でもそれなら私もできそうだな。前に私が部屋にやったやつを変えれば。
しないけどさ。
「なんかこの森、木が茂ってて日が届かないからか、寒いですね。お姉様、寒くないですか?」
「大丈夫。ミーシャは?」
「私は大丈夫ですよ!だって私、火属性なんですよ?」
関係あるのかな、それ。火であっためてるとか?なら私も寒さとか暑さとか感じなくできそうだよね。ほら、闇って無って感じするし。
するだけなんだけどさ。
それにしても暗いな。ここの木、育ちすぎじゃない?ミーシャの言う通りに葉がみっしり生えてて、日の光が地面まで届いてない。だからか、地面は土が剥き出しでなんかジメッとしてる。
早くて1日かかるって言ってたから夜は森だろうなぁ。こんなジメジメした地面であんまり寝たくない。ミーシャに乾かしてもらおう。
そんなことを考えてたら、横でドサッ、ゴウッ!という音が聞こえた。なんだなんだ。
「あ〜っ!絶対私の方が早く気が付いてましたよね!もう少し魔法発動が早ければ……っ!」
「そんなことはない。俺が気が付いてないはずないだろ」
「う〜!!次は絶対に私が倒します!」
ミーシャと兄さんが何か競ってた。
音の方を見れば、離れた所で黒い塊が煙を上げて地面に転がってる。魔物の死骸だね。……私気が付いてなかったんだ。でも、ミーシャと兄さんは気が付いてて、どっちが早いか競ってた、と。
マズイぞ、なんだこれ。私ほんと守られるだけ?いやいや、そんなの駄目でしょ、魔物退治くらい私にだってできる。
「つ、次は私だって」
「ローズはいいんだ、転ばないように気をつけろよ、足元ぬかるんでるから」
「そうですよ、魔物は私たちに任せてください。思ってたより弱いです」
これ、頼ってていいの?私、どんどん駄目な人になっていく気しかしないぞ……。
「……う〜ん、シンくんが魔物相手に遅れを取らないのは当然として、ミーシャちゃんが想定よりだいぶ強いの俺驚きなんだけどなぁ。ここの魔物、そんなに弱くないよ?」
魔物の強さとかは私わからない。そんなこと考えて魔物を見てこなかった。魔物は魔物だな、って。会わないように避ける存在だったし。兄さんにかかれば瞬殺だし。
でも普通は違うか。人にも兄さんみたいに強い人もいれば私みたいに何にもできない人だっている。それと同じで、魔物も強いのと弱いのがいる。
ここの魔物はどのくらいの強さなんだろ?そんなに弱くないって。私じゃ敵わないかな。
「よわよわですね〜。あ、でもさっきのが格別に弱かっただけかもです。……シンさんが倒しちゃいましたし。私じゃ無理だったかも……次こそは!」
それはないと思うな。丸焦げになったらさすがに死ぬでしょ、魔物も。
「いーや、ここの魔物は強いかものすごく強いのしかいないよ。弱いのなんていないんだ。ということはミーシャちゃんが強いんだよ」
へー。そうなんだ。なんで知ってるんだろ。来たことあるのかな?いやでも来たことあるからと言ってここの魔物に弱い魔物がいないって断言できるはずないし。
あ、ここら辺じゃこの森の魔物が強いってのは当たり前の情報だったり?
「……へぇ」
ノアだ。チャラ男をジッと見つめてる。何も伺えない、表情の削げ落ちた表情で。何か怖い。やっぱり、チャラ男がなんでそれを知ってるのか疑問に思ってるのかな。
「ノアくーん、怖いよ〜。それやめてー」
チャラ男も怖がるノアの顔。
ジメジメした地面……
じめじめしたじめん………




