僕が考えるに
ノア視点です。
ローズは強い。
1番それがわかるのは精神面。闇だからと、これまで散々嫌な目をされた。ローズがそうだと知らない人でも、みんな闇は駄目、恐ろしいと言う。でも折れることはない。
ラクスの時、流石に悲しむと思っていた。少しの間だけだけど、関わったわけだし。
でもローズの反応は違った。
『先に着いてきたのはラクスだ。それで騙したとか言われてもどうすりゃいいんだって話なんだよね!お前は自分の行動に責任持てないような子供なのかよ!』
まさか怒るとは思わなかった。
しかもあんな、普段使わないような言葉遣いで怒るとは。あんなこと言うんだ……。
それからも色々言われたけど、ローズが悲しんでいるような素振りは無かった。隠しているだけかもしれないけど、抱え込むようなことはしないと思う。シンもいるんだし、ローズが何か悩んでいるのなら彼はすぐに気がつく。
いや、何か悲しんでいるような感じはあった。
例えば僕とローズとで買い物に行った時のこと。兄さんたちカッコいいねぇ!オマケしちゃう!と店のおばさんに言われた。ローズはなんとも言えない表情になっていた。
後、僕たちと同い年くらいの女性2人組におにーさんたち、お茶しない?と声をかけられた時。ポカーンとして何も言わないでいるローズの代わりにそれを断り去っていく女性たちに手を振って、ふとローズを見たら俯いていた。これは流石に堪えたのかな、と僕でも思った。
うん、これまでのことからするにローズは闇だと罵られるより男だと思われていることの方が悲しいみたいだ。それは僕でもわかるな。時々女だと間違われるから。時々だよ?本当に時々。ローズはまだいい方だと思うんだ。男装をして男だと思われているんだから。僕なんて女装していないのに間違われるからね?時々だけど。
金髪の彼。やけにローズを気にしているみたいだ。
でもシンは彼が共に来ることを許している。
何でこんなに彼が気になるのか、自分でもよくわからない。怪しさで言えば後から来たセネルとエスペラールだって充分以上に怪しい。本当にもう敵意はないのか、またおかしなことをするんじゃないのか?
それでも僕は彼の方が怪しいと、そう何故だか思ってしまう。
『ノアくんさ、なんでローズちゃんといるの?怖くないの?闇だよ?へーきなの?シンくんはわかるよ?オニーサンだし?ミーシャちゃんはまあ例外として、ノアくんは?なんで?」
彼と2人でいる時に言われたこと。
僕はローズが闇だから怖いとか、そういう風に見たことはなかった。というか、闇属性が怖いという思いがほとんどない。幼い頃から旅をしているからか、それとも親父がそう覚えさせたのか。わからないけれど別にだからと言って損をするわけでもないし、中身を知らないのにそれだけで離れてしまう方が損だと思う。
怖い目には合った。洗脳されそうになったり、殺されそうになったり。それでも闇属性だからローズが怖いとは思わなかった。
なんでローズといるのか。怖くないから?それは理由にならない。ならなんでだろう?
少しだけ考えて僕は、彼にこう答えた。
『好きだからです』
今考えるとおかしな答えだなと思う。でもその時はそれでいいと思ったんだ。嫌いじゃないし。好きでなければ長いこと一緒に行動する旅になんて誘うか?答えは、否だ。
彼は勘違いしたと思う。僕の言った好きが恋愛としての好きだと。
……僕は恋愛として、異性としてローズを好いているんだろうか?
否、とは言えない。だって、少しだけ。ローズのふとした動作に心が揺れる時があるのを自覚している。でもこれだけでそうだとは思えない。
恥ずかしいことに、18になっても恋愛なんてしたことないから。何もわからないんだ。
ローズはどうなんだろう。村にいた時は村長の息子アレクと婚約していたと聞いていたけど。それ関係でシーナと色々あったのも知ってる。それしか知らない。
僕が彼女を見るようになってからはアレクと2人でいるのを見た覚えはない。僕の誘いを受けたくらいだし、彼とは何も無いんだろうな。
そう、僕の誘いを受けてくれた。いずれ村を出るつもりだとは言っていたけど、僕が嫌なら受けてくれないはず。今まで嫌な顔をされたことはないし。
どちらかと言うと好かれてると思う。ターイナで隠れている時だって嫌な顔なんてせず、なぜか僕の胸の辺りを見て顔を輝かせてたし、男たちが去った後安心したのか、腕を揉んできたし。安心の仕方がおかしいなとは思った。後、僕を見て突然ニマニマしだす時もある。
あれ。おかしいな、何かおかしいな。
でも、嫌われてたらこんなことしない。恋愛としてどうなのかはわからないけどね。別に僕の気持ちもどうなのかわからないし、ローズからの気持ちがどうだって僕はいい。
ただ、ローズの笑う顔は。そう言う意味で好ましいと思う。
『恐ろしい!闇がこの国に入り込むなんて!穢らわしい!害だ!悪だ!この国で何をするつもりだったんだ!』
悪意を持ったことば。彼女の耳には入らなければいいと願いながら、それは叶わないのだろうなと諦めている。
闇。恐ろしいもの。
揺れる。何が?
「…………こわ、い……?」
時々。時々ですよ。
ローズが普通の服の時は女には見えない、と言っているのは推しフィルターがかかっているからっていうのもあります。




