第21話 危機感のなさに絶望を覚えます。
最初三人称、残りはローズです。
それはとてもゆっくりで。
誰にも気がつかれないようにゆっくりじっくり時間をかけていて。
でも手間だなんて思わない。
だってこれは◼️◼️様のためになるから。
今までだってそうやってしてきているから。
ずっとずっと、そうやってきたから。
あぁ、あぁ!
愛しき我が主よ!
●●
大変なことになった。
「おいっ!こっち探したか!?」
「見たよ!向こうだ!」
「1人いたぞ!……ってお前かよ!紛らわしい髪しやがって!」
「俺のせいじゃねぇよ!金髪なんてそこらにいんだろ!」
「向こうにいたってよ!さっさと行こうぜ!誰かに手柄取られる前にな!」
バタバタと走り去る音が聞こえる。
やがてそれは小さくなっていき、この場からは話し声の主たちはいなくなったことがわかった。
「……行った、かな?」
「おそらく。気配はありませんから。隠しているのならまた別ですが……ないと思います」
「ん、なら行こう。兄さんたちと合流しなきゃ」
「そうですね」
ターイナ国。アルカーナ国の隣国で、チャラ男によると治安が悪く、ルス教が浸透している国。小さい国だから、端から王都まで行くのに1番遠い町でも歩いて1日くらいで着けてしまうらしい。馬とか魔法使ったら半日かからないって。
私たちが寄るべきではないと言っていた国。
そこに結局来ていた。
兄さん曰く、『今まで大丈夫だったんだし、やばそうならローズのは俺が隠せばいい。治安が悪いのは、それもどうにでもなる。だって俺がいるんだから』
だって。
駄目だったけど。
国には入れたんだ。何にもないだろ?って兄さんも言ってたし。でも、バレた。私が闇属性だと。数人で歩いてた人たちとすれ違った時にいきなり、闇だ!って叫ばれて。逃げてる途中で聞いた話によると、その人たちはルス教信者で、つい最近アルカーナから帰って来たばかりの人たちだと。
何かそういう訓練してきてたってことかな。
まあそれからは早かったね。こっちだ!あっちだ!囲め!みたいに。分断されて兄さんたちと逸れちゃったし。
で、今は裏通りの木箱と木箱の狭い隙間にノアと入り込み、うまい具合に影を使って隠れているという状況。
ノアが近い。なんで2人でこんな狭い所入ったんだ、って思ったよ。
片足を立てて座りその間に私を入れ、腕で隠すように覆いかぶさってきている。当たる胸板が硬くて大きくて、あんな綺麗な顔しててもやっぱり男、綺麗な長髪で女装したら絶対女の子に見えるけどやっぱり男、みたいなことずっと考えてましたね。
あと腕。シャツ越しでもわかる、異性の腕。突きたくなったけどさすがに我慢した。そんなことしてる場合じゃない。このシャツに隠された筋肉を確かめたいけど今は緊急自体なんだ!
「……ローズ、なんで僕の腕を揉んでるんですか」
「……はっ」
我慢できなかった。
しっかりしてました。
「と、とりあえず行きましょう」
「うん。わかった」
「……腕は離してください」
名残惜しいけど本当にふざけてる場合じゃないもんね。後でノアが寝てる時にでも触ってみよう。ああ、もっと前に触っておけば良かった。もっと前から知ってたかった……。
木箱の影から出る。うん、いないね。
今のうちに移動しなきゃ。
「でも兄さんたちどこにいるかわかんないしなぁ」
この国から出るのが1番いいことなんだろう。迂回して行け、ってチャラ男も言ってたし。
でも兄さんたち出てなかったら?一回出たら入るの大変そう。まず出られるかもわからないしね。
「それなんですよね。どうしたものか」
絶対に、セネルとエスペラールはもう出てそう。エスペラールが転移魔法使って。代償はあるけどそんなことどうでもいいです、お嬢様のためですから。なんて言って躊躇なく使うんだろうな。兄さんは私が止めるからその時間は躊躇してくれる。すぐ使うけど。
2人は心配ないかな。
でもミーシャが1番心配かも。兄さんといればいいけど……。
「いたよ!」
「っ!?」
男の声。裏路地の奥の方から。男……の子、の声だな。
なんか聞き覚えのある。
「るーくんでかした!ローズちゃん、無事!?」
そこに現れたのはシーナとルフトだった。
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