第16話 チャラい男だ。
振り向き、声の主を認識するかしないかで後ろからグイ、と兄さんに引き寄せられた。ミーシャも一緒に。
「お前、森にいたやつだな。何の用だ」
低い声で兄さんが相手の男に問いかける。
「アハハ……そりゃ警戒されるか。いやだって普通驚くでしょ、その子と、君と。組み合わせ的に?街に来ても特に何するでもないし、大丈夫かな〜?って」
街灯に照らされる鮮やかな金髪。ニコニコと笑い、敵意がないことを表しているのか体の前でわずかに両手を広げている。
服装とか、態度とか、一言で表すとこう。
チャラい。
なんかジャラジャラしたベルト付けてて、派手な色のシャツ着てて、ピアス。苦手なタイプ。髪は地毛か?染めたのか?疑っちゃうよね。あ、厚底の靴履いてる。
「で?何の用なんだ」
「え〜、なんか危険そうでもないし、不思議な組み合わせの2人と話してみたかっただけーって信じてもらえないかな?」
「わざわざ近くに転移してまで?」
「……あれれ。バレてないと思ったんだけどなぁ。さすが【光の騎士】サマだ」
なんか感じ悪いな。ニコニコがニヤニヤに変わってるし。
あれ?この人兄さんのこと知ってるの?【光の騎士】って……ラクスが。あーあ、嫌なこと思い出しちゃった。でもなんでこの人それ知ってるんだろう。あの国にいた人とか?兄さんの知り合いって雰囲気じゃないし。
「…………お前、何を」
「あー、あー!勘違いしないでね?何かしようってわけじゃないからさ〜。本当にただ、気になっただけ。……信じて?」
兄さんの腕の力が強くなる。まあこんな胡散臭い人信じるなんて無理だよね。油断したところで何されるかわからないもん。
「で?」
「で?って……。それだけなんだけどなぁ。とりあえずさ、塩の店まで話そうよ。案内するからさ」
「嫌と言ったら?」
「え〜そんなこと言わないでよ〜。着いてくけどさー。お話したいもーん」
●●
「ねーねー、君たちは兄弟なんだよね?そこの子は?兄弟っていうかさ、兄妹?ねーどっち?2人共綺麗な顔してるよねー。ここ右ね。君は綺麗ってよりか可愛い系だよね。俺は2人より君の方が好みだな〜。女の子って感じするし。無視しないでよー。あ、そういうプレイ?」
何を言っても着いてくることに変わりはないし、塩の店を知っているのはチャラ男だ。渋々、案内させることにした。
兄さんが私とミーシャの手を繋ぎ、男はミーシャ側でずっと喋っている。最初は答えてたんだけど、男の反応が嫌なのと兄さんが答えなくていいって言って不機嫌になるからもう答えてない。
「うるさい。黙れないのか?」
「お話したいって言ったじゃーん?お話させてよー」
お話っていうか、ただ質問してるだけじゃない?
「お前に話すことなんてない。黙って案内しろ」
「え〜…………やだ」
結局チャラ男は店までずっと話してた。




