第10話 ちょっと覚えてないですね……。
ミーシャと布を大量に買った街から出発して半日、お昼くらい。
朝からずっと兄さんの機嫌が悪い。
不機嫌ですオーラを出して私の隣を歩いている。こんなことになった原因は、ナラルさん以外の私たちのせい。
朝私はノアの借りていた部屋で目覚めた。正確にはノアの借りていた部屋のベッドの上、ミーシャとノアを両腕に抱えて。
はっきり言って昨日のことはほとんど覚えてない。ただ、布を抱えたミーシャに連れられノアの部屋に突撃し、遅くまで話し込んでたことは覚えてる。途中でシーナも来たんだっけ。
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「お姉様にはこの色でこの形がいいと思うんですよね〜。……じゃないですか?」
「色は似合うと思いますよ。でも、その形は日常的に着ると考えたら実用的ではありませんね」
「それなんですよね〜」
「あ、じゃあここの部分取ってこっちに足して、こうすればいいんじゃない?」
話題の中心である本人抜きでどんどん進んでいく話、口を挟む間もない。
ミーシャと一緒にノアの部屋に来たまでは良かった。大量に買った布を広げてこれがどうだ、どんなのがいいか?みたいな話をし始めてもまだ私の意見を聞いてくれていたから。
シーナが来てからだな、私抜きで私には何が似合うからこれ、ってなり始めたのは。
シーナは私たちが話している途中で『安全確保完了!後はここだけ!おっ邪魔しま〜す!参加費に飲み物持ってきたんで許して!』って言いながら窓から入ってきた。ちなみにこの宿は3階建ての宿で、ノアの泊まる部屋は3階の真ん中らへん。
どうやってきたんだ。……と思ったけどシーナ飛べるんでした。なんの問題もない。
問題はあるな。
参加費、と言ってシーナが持ってきたのはたくさんのお酒。色とりどりの瓶が大量に部屋に並んだ。
いやまあ成人したことになってるし前世合わせたら完全に成人越してるおばさんなんだけど、ミーシャもいるし駄目じゃない?
そんな私の言葉はこの場の誰にも届かなかった。
前から少し飲んでる所見たことあるノアは普通に飲むし、持ってきたシーナはこれがおススメ〜とか言いながら一緒に持ってきたグラスにどんどんお酒注ぐし、飲んだら駄目であろうミーシャはこれ美味しいやつじゃないですか〜!とか言って楽しそうにしてるし。
ミーシャいくつなんだ?年下に見えるけど飲んだことあるとは……わからない。
みんな飲むなら私だって飲むよ。こっち来てから飲んでないし。
「かんぱ〜い!!」
ここからだな、3人のテンションが上がってきて、私抜きでどんどん話し始めたのは。仕方ないから私は1人でどんどん飲んでる状態。




