第9話 買い物です。
「お姉さ……ロゼさんと歩いてるとすごい視線感じるんです。もちろん私に、じゃなくておねっ……ロゼさんになんですけど」
今はミーシャと2人。服を買いに来ていた。
何か好きなのあったら買ってきな、って兄さんとナラルさんからお金渡されて。
男達は他のとこ。武器見に行ったり防具買いに行ったり。兄さんは本屋とか言ってたな。ノアに、『離れるなんて珍しい』て言われてた。
「どういうこと」
「そりゃあおねえ……ロゼさんが魅力的ってことですよ!……言いづらいな……そうだ、お兄様って呼んでいいですか?」
魅力的って、男としてだよね。女としてじゃないよね。悲しい。
いや、魅力的なのは嬉しいことだしそういう風に見られることなんて前世から合わせたってなかったからすごいことなんだけど、性別がなぁ〜。
「はぁ……もういいよ……」
「やった!ありがとうございます、お兄様!わ、しっくりくる!」
お姉様じゃしっくり来なかったってこと?ん?ねえミーシャ、お姉様はそこらへんがちゃんと聞きたいな。
「でも私なんかが隣歩いてるなんてほんと今でも夢みたいです。お兄様とこうして一緒に過ごせているなんてことも。嬉しいです」
……にっこり笑うミーシャを見てたらなんでも良くなった。ミーシャは女の子らしいもんな、可愛いし。癒される。ノアとは別の意味で。
1つ気にくわないのは顔のしたいかな。
大きくない?
「これは現実……」
「はい!そうですね!」
●●
「うーん、いいのがないですね」
「もうどれでもいいのだけど」
「ダメです!」
これで5軒目の服屋。女物のとこも男物のとこも全部行った。この街そんなに大きくないからそろそろ店ないんじゃないかな。
どの店の服もミーシャは気に入らないらしい。私はどれでもいいと思うんだけど。上にマント羽織ったらどれも同じじゃない?
「色はさっきの店の方が良かったけど形が着づらい絶対。でもこっちだとこの色……ダメダメ。買って後悔する」
もうこんな悩むならミーシャが自分で作った方がいいんじゃないかな。あんな上手いんだし。
好きな形、好きな色でできるよ。
「自分で作れば?」
私のはもうここにあるのでいいや。このシャツ。安いの買ってるからなのかなぁ。シャツってなんかすぐに色が汚くなって形が崩れてく。この前は袖が破れて取れた。ノアと一緒にまとめて買ったやつ、ノアのだけ綺麗なままで私のはすぐ破れた。私の使い方の問題か。
……お会計してこよ。
「えっ!また作ったの着てくれるんですか!ありがとうございます!!作ります!何着ですか?何着までいいんですか?」
あれっ。ミーシャが、ミーシャのを作ると思ったんだけどな。なんか勘違いされてる。
「いや自分のを」
「え?私服着てますよ?」
私も着てるんだけどな。
「予備とか」
「足りてますよ?お兄様の買いに来たんじゃないんですか?」
2人の、だね。
「ミーシャのもなんだけど」
「なんでですか?え、ならそこの靴下で充分ですけど」
今まで散々悩んでたのはなんでなんだ。何軒も回って……全部私ので悩んでたのか。
「……作ってくれるのは嬉しい。でも自分の服をまず選んで。せっかく好きなのあったら、ってお金くれたんだから使わないと」
「お兄様のものを選ぶことが好きものにならないんですか……あ、なら布買って帰りましょう!それならお兄様の服も作れますし、余ったら私の分も作ればいいですよね」




