3話
翌日、ようやく部屋を出ることができた。
久しぶりの食卓である。
正直おなかすいて倒れそうなところだったのでありがたい限り。
食卓には父、母、兄、姉、そして妹が席についている
「おはようございます、ご心配をおかけいたしました。」
まず父に一礼する。
「うん、無茶はいけないよ。君がけがをしたり、亡くなったりでもしたら家族みんなが悲しむということをしっかり気をつけなさい」
頭ごなしではなくきちんと諭してくれるいい父親である。
シャロン家はそこそこの貴族らしく朝ごはんもおいしそうである。
「それでは皆祈りを」
おなかすいているから早く食べたいんだがお祈りが必要らしい。といっても顔見知りの女神に豊穣なんてできるはずがないので名も知らぬ神様に。なんかイメージわかないのでお稲荷さんでいいか。ありがとうございます。
お祈りが終わって食事開始
なんだが、薄い。味が全般に薄い、パンも硬い。
これ大変だよね。飲み込むまでに何度噛まなきゃいけないのか。
10歳児にはきつい気がする。
ふと兄弟を見ると姉(12歳)兄(13歳)も辛そうだ
あきらめるしかないか、今のところだけどね。
それから兄と姉は家庭教師についておべんきょタイム
本来この世界の成人は15歳らしい。13歳から3年間学校に通い卒業後貴族としての生活が始まる。とはいえ基本的なこと以外にも魔法、剣術などもあり魔導士を家庭教師にする貴族も多いのだそうな。
特に女子は護身用にも必須らしい。
ちょっと、うちの可愛いドロシーちゃんも護身用なら習わないといけないんじゃないの?
と思ったけど剣のほうに嬉々として混ざっていた。
お転婆だねぇ。とほほえましく見ているが好きで見ているわけではない。参加させてもらえないのだ。
あのドロシーよりも危なっかしいとみられているらしい。解せぬ
その後見ているとうずうずしてくるので家の裏手に回る。ちょうど厨房になっていて料理人さんたちが仕込みをしている。夕食の仕込みのようだが、うーん
「ねぇちょっといいかな?」
「おや?坊ちゃんどうなさいました?」
料理人の一人が答えてくれる。
「あそこの玉ねぎなんだけど一つくれない?」
「いいですけど何なさるんです?」
「いいから見てて」
玉ねぎを受け取りみじん切りにしていく。ちょっと泣きそうだ。
「何やってるんですか?坊ちゃん。食べ物で遊ばないでください」」
料理長に叱られる、しかし遊んでないのだ
「あそんでない!夜に焼く分のステーキ肉持ってきて、心配なら僕の分だけでいい」
毅然と言うとしぶしぶだが一枚肉を持ってきた。
胡椒が少ないので流石に使わせてもらえないが塩はある。ならばと思い
肉をたたいて格子状に切れ目を入れていく。
その包丁さばきから料理長は遊びじゃないと気づいたようだ
「坊ちゃんいつの間に?」
「包丁なんて少し触れば使えるよ、それよりこうやってと」
みじん切りに肉を漬け込む。タオルを借りて手を拭き焼く前に上げて水けをとってから焼くように指示を出す。ついでにあとの玉ねぎはあめ色になるまで炒めてソースにするようにも指示してから厨房を後にする
とりあえずあとは何しよう?体力作りに庭でも走るかな
それから延々と走って倒れそうなときに回復魔法。また走って回復魔法を繰り返す。なんだかんだ夕方まで走っていた気がする。
夕方食事のために入っていくと兄弟全員に不思議なものを見るような目で見られてしまった。
「ラウル・・・」
兄にかわいそうな子を見る目で見られてしまった。解せぬ
「トレーニングですよ。兄上みたいに強くなるためにはまず地力を上げるべきと思ったのです」
兄上みたいに、のところで喜んでくれた。ちょろい
そして食事。一人だけ違うお肉。どうかな?
うん柔らかい!んソースも甘い!成功だ!
ドロシーがものほしそうな顔でこっちを見ている。しょうがないな切り分けてあげた。
一口入れると満面の笑みで喜んでくれた
「料理長!ラウルの分だけ違う肉を出しているのか?」
父がシェフに文句を言っている。
「父上!料理長は悪くありません。実は下処理をしたのは僕なのです」
「どういうことだ?同じ肉なのだろう?」
この世界酵素とか説明できないよなぁ。シャリアピンステーキって作るの簡単だけど理科知識でないと説明できないし。。。
「実は夕べ夢で女神アルケー様が現れてこうやったらおいしいお肉になると教わったのです。勿論ただの夢かもしれないけれど万が一ということも思って、まずは僕一人の分で試したんです」
こういう時こそ女神のお告げだ。今度お詫びにお菓子用意してから召喚しておこう。
不思議そうな顔をしているが満面の笑みのドロシーがいい証拠である。
明日はとりあえず全員に作るということでこの場は何とかごまかせた。
ただ後で聞くとアルケー様って航海の安全の神様だそうな。なんで転生業務してるんだよ




