57話
「お前を呼んだのはこちらも聞きたいことがある、というのが理由の一つじゃ。だがまずはそちらの質問に答えよう」
創造神様がそう言ってくれる。ではまず一つ。
「不思議に思っていたのですがどうして合祀神殿だけなんです?セドナ様とかヘムダール様とかメイン張って一柱一神殿でもいい気がするんだけど。」
元の世界ではキリスト教神殿に必ず十字架があるようにこの世界の七柱神殿には必ず屋根に七本の塔がある。
逆に言えば塔が七本あれば神殿だというくらいなのだが。それでも分派はしそうなんだよな
「まず聞くのがそれとは面白い者じゃな。異世界人ならばある程度知識はあるであろう。信仰は権力と結びついては腐敗すると。それを抑制するために教義として一番に我ら七柱を合祀し分派せぬよう。そして権力に与せぬようにと定めておる」
「それに十数年に一度の神星祭で降臨神託を行ったりいろいろしているのよ。もっともあなたのいた世界と違って魔法現象のあるこの世界。神の権威を示すのは比較的楽だからね」
アルケー様が続いて説明してくれた。
まあ確かに歴史上世界宗教発生はそのまま権力闘争、腐敗の一途だもんな。
現代ですら根強い宗教戦争。なら分派しない方が得策か
「そしてそれが、今回君を呼んだ理由の一つとなるんだよ」
金髪イケメンがいう。
「ある教会幹部が意図的にクーデターを起こそうとしている。それを止めてほしいんだよ。」
「クーデター?」
「正確には違います」
ミーミル様が引き継ぐ
「王権に近い権力を教会に持たせようとしているのです。もともと民意を掴みやすいのは教会。あとそれに実績さえあれば民は王より教会を選ぶでしょう。」
「神託でどうこうとかはできないと?」
「神託といっても聞こえるのは巫女のみ。本来我々は大規模に姿を見せることはできない。それは自ら作った世界を壊す行為だからな」
ほーそんなもんですか。まあ確かにほいほい神さまが現れてはありがたみもなくなる。
それでも俺の目から見るとかなり頻繁に姿を見せてる部類だけどね。
で、その教会幹部ってのが転生者だと。
「そういうことですね。正直に言いまして転生者に集団になられては対抗できるものも多くなく・・」
ラウニー様が申し訳なさそうにいう。巨乳美人が申し訳なさそうにっていうのはいいもんだなぁ。
ふとアルケー様を見ると目を伏せている。ああ、そういうこと。
「報酬次第ですね。タダ働きはごめんですけど他人の為ってのもモチベーションが上がりませんし」
そういうと肩をバンと叩かれた。
「面白い奴じゃねぇか、気に入った。神の名においてなんでも貴様の望む報酬をやろう」
そういって喜んでいるのは風と雷の神ペールアン。見た目通りの豪快さで肩が痛い。
見るとほかの神々も複雑そうだが安堵しているようだ。ただミーミルは訳のわからない物を見るような目でこっちを見、アルケーは逆に泣きそうになっている。
さていろいろと聞かなきゃいけないこともあるし大変だよ。
その後小一時間情報をもらい戻ることとなった。
かかった時間は身体の方は2.3秒くらいらしい。一時間お祈りしてたら大変だと思ったがそこは時間の作用が違うらしい。
戻り際にアルケーが寄ってくる。
「どうやって断らせようかと思ってたんですが」
「でしょうね。でもこの中ではさすがに一番よく表情見てますからね。顔みたら考え位読めますよ」
「なんで?なんでわかって受けたの?」
「無事に生きて残る確率が低いってくらいなんてこともないでしょ?」
前の死は覚えていないけどこうやって来世があるって証明されているし、
なにより自分でも覚えていない前世の記憶。でも確かにそこに起因する気持ち
「女の子を泣かせたまま、さよならってのは嫌いなんだよ」
おそらく、気づかせなければ、怖じ気づかせれば、即帰還させられただろう。
でも気づいたらしょうがない。
「大丈夫、判った限りには全力でいくし、当然神様みんなにも協力してもらうからね」
それに
「足りない確率は勇気で補えばいいんだよ」
俺は勇者じゃないんだけどね




