10話
試験の終わった夜 ダーキニーが帰ってきた。
来るときの盗賊はやっぱりどこかの領兵だったらしいのだがどうやら二つ隣の領主が犯人らしい。
「実行犯の首領をくわしく質問したところ商会、ギルド、教会、と転々と指示がされていたようですが最終的にはやはり領主の指示だったようですね。」
「教会もかよ。神様の使徒じゃないの?」
「そこの教会の神様はたしか女神様じゃにゃくて、商売の神カウタスだったはずにゃ」
「へー。そんな神様もいるんだ。」
「いや、いにゃいにゃ」
なんだよそれ、いない神様の教会なんて何であるの?
念のため召喚リストを繰ってみた。あ、ほんとにないわ。
この世界の神は創造神バルトール以下アルケーを含め七柱らしい。
こういう時は詳しい人にきいてみよう
【召喚 女神アルケー】
魔法陣が輝きアルケー様が召喚される。
でもパンツ一丁でタオルを首にかけ手にはホームランバーを持っている。
見つめあいしばし沈黙
「なんて時に呼んどるんじゃぁ~~!」
見事な左ストレート。まさに神の拳であった。
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ダーキニーとアンバーが二重に結界を張ってくれていたので家族にはバレていなかった模様
「とりあえず非はアルケー様にゃ」
「いいじゃない、仕事終わりにはビールかアイスって決まってるでしょ」
「お風呂上りに裸でビールとかどこのオヤジですか!」
「基本誰にも見せないからいいのよ」
「そんにゃんだからこうやって見られるにゃ」
「う・・・」
気絶から覚めるといつの間にか服を着た女神がアンバーとダーキニーに説教されていた。なんかシュールである。
「まあ、そんなことは置いといてアルケー様に聞きたいことがあるんだよ」
「あたしの裸がそんなこととでもいうの!?」
「アルケー様ご主人に商売の神カウタスについて教えてやってほしいにゃ」
「そうですね、眠る時間も惜しいですし手早く教えてあげて下さい」
「あんたたちあたしに対して冷たくない?」
ぶちぶち言いながらの女神を宥めて詳しく聞く
本来アルケー様が航海の神。即ち海運、商売も統括していた神である。
しかし200年ほど前の司教が勝手に独立して商売は別の神として立ち上げたのがカウタスということらしい。勿論勝手な流派である限りにはそのような神は存在せず。その教会も単純に商会の組合機関としてしか意味がないそうだ。
「天罰とかはしなくてもよかったの?」
「そうね、特に不敬ってわけじゃないからね。事実50年ほど前に大飢饉があったときなんかは時の司教がその資金で支援したってこともあるのよ。ただの組合に何をするでもないわね。」
ふーん、じゃあ今回の黒幕だったら取り潰したところで問題はないわけか。
でも貨幣経済の為には組合制度って意外と重要なんだよね。教会の体をしているのが問題なだけで。
「まあやり過ぎないようにね。大量殺人以外ならそんなにお咎めもないから」
そう言い残しアルケー様は還っていった。
「じゃあやり過ぎないようにいってみるか。目的は領主の失脚くらいかな」
「係ったものすべての失脚ではないのですか?」
「命令に逆らえなかった者もいるだろう?元凶だけでいいと思うんだけどね」
ある程度弱みは握ってきてくれたようだから個人的な仕返しで終わらせてあげよう。
【召喚】妖霊 朝露
魔法陣が輝き一体召喚する 黒髪を結いあげてブラウスにタイトスカート、ハイヒールに、銀縁眼鏡。
女教師スタイルだが半透明で少し後ろが透けている。
牡丹灯籠のお露さんである。妖怪だけじゃなく幽霊も召喚できるのか?と思っていたら、アンバー曰くそこまで長期間の怪談話になっていれば魂自体は輪廻しても魂の残り香に力が宿って妖怪化するらしい。
召喚ついでに名を与えることによって完全眷属として再生するようだ。
「旦那様、ご召喚ありがとうございます」
「うん、一つ仕事を頼みたいんだよ、朝露。詳しいターゲットはダーキニーに聞いてくれ。まあ仕事できなくなるくらいに消耗させるだけでいいからね」
「わかりました。血の一滴まで絞り出してまいります。お任せください」
「わかってないよね?殺さないんだよ?」
にこやかに微笑んでいる、のに言うことは殺伐だ
「お任せください、旦那様の意に背くことは致しませんので」
一礼される。そこはかとなく不安だがまあいいか
「じゃあ、だーちゃん行きますよ、さっさと終わらせます」
「その呼び方やめなさい!」
文句を言いながら二体の気配が消えていく。
「文句言わなくてもいいにゃ」
アンバーがあきれたようにつぶやく。
因みにアンバーは猫ちゃんと呼ばれている
名前で呼ばないのは何かあるのかね?
まあ仲が悪いとかそんなんじゃなさそうなのでいいんですけどね




