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第十八話

 ゴブリン狩りを始めてから、ゲーム内時間で一ヶ月程が経過した。

 近接系スキル値が80.0を超えた俺達は、ここ数日は鉱山地帯の最深部にあるダンジョンへと挑んでいる。

『アーカス廃鉱』と呼ばれているこのダンジョンは、かつてアーカス村の主要産業でもあった鉄鉱石の採掘場だ。

 しかし虚族の襲撃以降は廃鉱となり、以来ゴブリンの巣窟となっている。

 配置されているゴブリンは最低でも四匹程度で群れを成しており、二人で分担するとしてもかならず複数戦闘を強いられる。

 更に、特定の場所に屯する群れの他に、廃鉱内を巡回する群れもいるため、戦闘中に巡回がリンクするのを避けるためには、敵の行動パターンを把握しなければならない。

 薄暗い廃鉱内で周囲の敵の様子を探るには、危機探知スキルは必須と言える。

 おまけに廃鉱内のゴブリンは、外をうろついているゴブリンよりも強い個体ばかりなので、初めて挑戦するダンジョンとしては難易度はかなり高めだ。


『グギァァァァ!!』

 上段から振り下ろされたツルハシを【シールドバッシュ】で弾き、無防備な腹部に【ステップインスパイク】を叩きこむ。

『ギィィィ!!』

 無防備状態のゴブリンは急所を貫かれ、大ダメージを受け衝撃にたたらを踏む。

 こちらの攻撃動作後の隙を狙って、もう一匹のゴブリンがショートソードを突き出してきた。

 それを身を捩ってかわし、あらかじめ詠唱しておいた【シャドウアロー】を放つ。

『グガッァ、小癪ナ!』

 胸に突き立った漆黒の矢を忌まわしそうに睨み付けるゴブリンの頭を目掛け、上段から強力な斬撃を繰り出す片手剣術SA【パワースラッシュ】を見舞う。

 強烈な一撃は粗末な兜を強かに打ちつけ、ゴブリンは短時間の気絶状態に陥る。

 意識を失ったゴブリンの背後に回り、相手の背後からの攻撃時にダメージを倍化させるSA【バックスタブ】を使用する。

『ガッ……ア』

 背後からの一撃が致命傷となり、ゴブリンは絶命し崩れ落ちる。

『ギギィィ!!タダデハ死ナヌゥ!』

 先程急所を貫かれたゴブリンが、仲間の死に激昂し決死の突撃を仕掛けてきた。

『【シャドウバインド】』

 しかし、振り上げた棍棒が俺の元に届く前に、ゴブリンは自らの影に動きを封じられる。

『グォォッ!オノレェ!』

 動きを封じられたゴブリンに袈裟掛けの一太刀。

『ギギ……ギィィ……』

 膝から崩れ落ちたゴブリンが絶命するのを確認し、構えを解き、既に戦闘を終えて壁際で休んでいたメリルの隣に腰を下ろす。


「おつー」

 メリルは羽ペンを持ち、羊皮紙にこれまでのルートを書き込んでいる。

 ダンジョンに挑むに当たって、マップの作成はメリルに任せる事にした。

 俺は危機探知による周囲の警戒、メリルはマップ作成という分担だ。

 アトラスではスキルの合計値によるキャラクターの成長限界は無い。

 しかし、個別のスキル値が上昇すればする程、スキル合計値が増えれば増える程、スキルの上昇効率は悪くなっていく。

 闇の民はそのあたりの制限が緩くなっているのだが、無意味に伸ばすスキルを増やしていく程の余裕は無いので、危機探知やマッピングといったスキルは分担する事になった。

 メリルの作成したマップを覗き込む。

 アーカス廃鉱は、長く続く一本の坑道と、そこから分岐するいくつもの細い坑道で構成されている。

 細い坑道の先には、採掘現場となっている広い空間がある。

 迷うような構造ではないので、マッピングは必須という訳ではないのだが、分岐が何度も続けば次に来る時に奥へと続くルートがわからなくなる。

 それにこういった単純な構造のダンジョンでマッピングのスキル値を上げておかなければ、更に複雑なダンジョンに挑む際に苦労する事になる。


「かなり奥まで来たな」

 メリルの描いたマップを見る限り、現在地は最深部と言ってもいいだろう。

 もっとも、どれだけの深さがあるのかわからないので、実はまだ序盤だった、という事も有り得るのだが。

「そうだね。もうそろそろ一番奥に着くと思うけど」

「初めてのボス戦になるからな……楽しみではあるが」

「エリートは拍子抜けもいいとこだったもんね」

 このダンジョンには細い坑道の先の採掘現場毎に一体、エリートモンスターと呼ばれる通常のモンスターよりも強いモンスターが配置されている。

 そして、最深部にはこの廃鉱のゴブリン達を指揮するボスがいるそうだ。

 エリートモンスターは、通常のゴブリンより二回り程の巨体で、力も強く体力も高い。

 しかし、それだけだ。

 普通のゴブリンを相手にする感覚で戦っていれば、多少時間はかかるが苦も無く倒せる。

「エリートは美味しいけど、つまんないよね。強敵って感じじゃないし」

 エリートを倒すと、3s程度の銀貨とかなり品質の良い武器が手に入る。

 現在の俺の武器はゴブリンチーフソードと呼ばれる大振りの片手半剣。

 メリルの武器はゴブリンチーフフィストという巨大で無骨な手甲。

 どちらもここ数日、エリートを狩りまくって集めたエリートゴブリンのドロップアイテムだ。

「まぁエリート単体で言えば確かに拍子抜けだけど、もし取り巻きと同時に相手するとなったらかなり厄介だろ」

「そう考えると、ここにソロで挑むのは大変だよね。危機探知は欲しいしマッピングスキルも欲しいし、戦闘スキルもかなり高くないと辛いし」

「確かに俺達みたいにペアじゃないと、ここまで来るのはしんどいだろうな」

 先日、とうとう大規模掲示板に俺達がこれまでやっていた闇の民でペアをする方法が書き込まれた。

 しかし、闇の民のプレイヤーは基本的にソロプレイヤーばかりなせいか、未だペアを組んで行動するプレイヤーは多くない。

 なので鉱山周辺でゴブリンを狩るプレイヤーは見かける物の、こうしてダンジョンに挑んでいるプレイヤーは今の所俺達だけだ。

 ここのダンジョンより下位の狩り場にいるボスはマンイーターだけなので、闇の民でボスを倒したプレイヤーは未だいないと言う事になる。

「ここまできたら最初にボス倒したいよね」

「そうだな。けど最初にボスやるのは俺だぞ」

 道中の雑魚は分担出来るが、ボスにはソロで挑まなければ共闘ペナルティを受けてしまう。

 仮に共闘ペナルティは無くとも、俺もメリルも強敵をソロで狩る事に価値を見出すタイプなので、二人掛かりでボスに挑む選択肢は無い。

 なので、どちらが最初にボスに挑むかは既にじゃんけんで決めてある。

「わかってるわよ……けどボスがリポップ無しだったらどうしよ」

「ボスもちゃんとリポップするって話だから、大丈夫だろ、多分」

 マンイーターのような特殊な背景を持つボスであれば、一度倒せば二度と復活はしない可能性もあるが、ゴブリンの親玉程度ならば別の個体がボスになるという設定でリポップするだろう。

 これまでの狩りで、エリートゴブリンに関してはゲーム内時間で六時間経過すればリポップする事が判明している。

 それより時間はかかるだろうが、ボスゴブリンもちゃんと復活すると見て間違い無いだろう。


「……休憩は終わりだ。巡回が来るぞ」

【テリトリーサーチ】の範囲内に気配を感じ、盾と剣を構えて立ち上がる。

「数は?」

「四匹。いつも通り分担しよう。タゲは任せる」

「おっけ」

 身体強化SAをかけなおし、坑道を進む。

 やがて前方から耳障りな声が聞こえてくる。

『【ナイトミスト】』

 周囲一帯を暗闇で包む神術スキルの特殊技能SAを使用し、ゴブリンの群れの視界を奪う。

 しかし【ナイトサイト】と【夜目】のある俺達には影響は無い。

 メリルが漆黒の霧の中を疾走し、二匹のゴブリンを殴り飛ばす。

「そっちよろしく」

「了解」


 俺は残ったゴブリンとメリルの間を遮るように立ち、二匹のゴブリンを纏めて斬り付ける。

 前方百八十度範囲内の敵に攻撃を加える【ワイドスラッシュ】により、視界を奪われ満足に防御行動の取れないゴブリンは大きく体力を削られる。

 最早同時に複数の敵を相手にするのも慣れた物だ。

 最初はどうしても片方に意識が行き過ぎて、もう一方の敵から手痛い一撃を貰いがちだった。

 しかし、神術スキルを上手く併用する事で、今ではほとんどダメージを受ける事無く複数を同時に相手にする事が出来る。

 視界を奪われ、でたらめに剣を振るうゴブリン達は、お互いの攻撃でお互いに被害を斬り付けていた。

『【ダークネスボルト】』

 一度距離を取り、遠距離から高火力神術SAを放つ。

『ギィィッ!!』

 飛来する五本の矢を受け、ゴブリンの片割れは絶命した。

『オ、オノレ!』

【ナイトミスト】の効果が切れたのか、ゴブリンがこちらを濁った目で睨み付けてくる。

 盾を構え、相手より先に動き距離を詰める。

 慌てたゴブリンの不用意な一撃を【シールドバッシュ】で弾き、【ステップインスパイク】で止めを刺す。

 ゴブリン一体を倒すにしても、随分と手数が減った。

 これもスキルとステータスが上昇した恩恵か。

 メリルも既に一体を片付け、もう一体も虫の息だ。

 壁際に座って祈りを捧げ、体力とディバインエナジーを回復しながらメリルの戦闘が終わるのを待つ。


 回復を終えて再び坑道の奥を目指す。

 先程戦闘を終えた場所から少し進んだ所で、前方に複数の気配を感じる。

「……この先、採掘場みたいだぞ。気配が多い」

「え?ボスの部屋ってこと?」

「そういう雰囲気じゃないが……まぁ行くしかないか」

【テリトリーサーチ】で感じる気配は、途中の分岐の先にある採掘場の物に似ているが、今回は分岐が無い。

 慎重に歩を進めると、その先にあったのは、やはりこれまでの採掘場と同じ光景だった。

 壁際では多くのゴブリンの作業員がツルハシを振るい、中央には武装したゴブリンを両脇に侍らせたエリートゴブリンが佇んでいる。

「完全に採掘場じゃん。分岐見逃した?」

「いや、いくらなんでも見逃すはずはないだろ……見ろ、あれが奥に続く通路じゃないか?」

 今俺達が広間を覗き込んでいる場所から、エリートゴブリンを挟んだ反対側に通路がある。

「ここを抜ければボス部屋かな?」

「可能性は高い。とりあえずあのエリートは無視しよう。片側の壁際のゴブリンを倒して奥の通路までいくぞ」

 本当にリアリティを追求するなら、侵入者を発見したゴブリンが周囲の仲間を呼びそうな物だが、さすがにそんな事をされてはゲームにならない。

 基本的にモンスターに設定された探知範囲より外であれば、近くでどれだけ派手な戦闘をしようとリンクする事は無い。

 俺達は壁際で採掘しているゴブリンを釣りながら一匹づつ始末していく。

 ツルハシを持ったゴブリンの作業員は戦闘スキルが低いので、呆気なく倒す事が出来る。

 壁際に十体程いたゴブリン作業員を始末して、奥へと続く通路へと踏み込む。


「なんか雰囲気違うね」

「これは……とうとうボスかもしれないな」

 壁際に等間隔に設置された篝火に照らされた通路を進む。

 真っ直ぐな一本道の通路には、ゴブリンの気配は無い。

 感じるのは前方、一つの強い気配だけだ。

「いるぞ……かなり強そうな奴が」

「当たりだね」

 五十メートルほどの通路は、これまでにあった採掘場の半分程度の広さの空間に続いていた。

 その広間の奥、岩を掘り出して作ったような椅子に座るのは、エリートゴブリンを遥かに上回る巨躯。


『闇ノ民カ』

 こちらに気付いたボスゴブリンが立ち上がる。

 明らかに他のゴブリン達とは違う。

 細身の長剣を片手に持ち、巨大な盾を構えている。

 他のゴブリンの粗末な鎧とは違って、装飾が施された立派な鎧に身を包んでいる。

 周囲にはエリートゴブリンやゴブリンはいない。

 俺は身体強化SAを掛け直し、メリルを通路に残して、一人で広間へと踏み込む。

「護衛でもいるかと思ったが、一匹だけか。やり易くていい」

『フン、自分ヨリ弱イ護衛ナド何ノ意味モ無イダロウ。貴様コソ一人デ我ニ挑ム気カ?無謀デアルト言ワザルヲ得ンナ』

 俺は盾と剣を構え、神術SA【カースオーラ】を使用する。

 ゴブリンチーフソードの刀身に影が絡み付く。

 武器に闇神の加護を付与し攻撃力を上げる神術スキルだ。

『我ガ名ハ、ラガナム。名乗レ、闇ノ民ヨ』

「ガイアスだ」

『ガイアス。カ弱キ身デヨクゾ此処マデ辿リ着イタ。敬意ヲ持ッテオ相手シヨウ』


 ラガナムと名乗ったボスゴブリンと俺は、同時に地を蹴る。

 相手は重戦士らしく、見た目通りの鈍重な動きだ。

 しかし、

『ヌウウウゥゥアアァァァァッ!』

 こちらの動きなどお構いなしといった勢いで振るわれる長剣。

 凄まじい速度で繰り出されたそれを盾でガードする。

 しかし、盾を通して全身を叩く衝撃は凄まじく、数メートル吹き飛ばされた。

『アレヲ受ケテ堪エルカ。呆気ナイ幕切レノ心配ハ必要無サソウダナ。安心シタゾ』

「随分お喋りな奴だな」

 防御したにも関わらず目減りしているライフゲージに舌打ちし、再び盾を構える。

『クハハ、部隊ヲ束ネル身ダ、相応ノ知性モ無ケレバ務マラン』

「そうか、よ!」

 ラガナムがお喋りに興じている間に詠唱を終えた【ダークネスボルト】を放つ。

『ホオ、忌マワシイ神ノ力カ』

【ダークネスボルト】の五本の矢はラグナムの正面に翳された大盾に突き立つ。

 だがそれでいい。

【ダークネスアロー】は囮、本命はこちらだ。

『タダ闇雲ニ放ッタ所デ無駄打チダ、ゾッ!?』

 盾を下げたラグナムの顔面に、俺が投げた盾が直撃する。

【シールドスロー】。

 装備している盾をフリスビーのように投げて攻撃するSAだ。

 当然投げた盾は装備から外れるが、重い盾であればあるほど威力は増加する。

 軽量化されているとはいえ、タワーシールドの重量は相当な物なので、かなりのダメージを期待できる。

【シールドスロー】発動と同時にゴブリンチーフソードを両手持ちに構え疾走する。

『ヌ、ウゥ、小癪ナ手ヲッ!』

 体勢を立て直しきれていないラガナムは、疾走する俺を見据えると、盾を構え防御体勢を取る。

 それも予想通り。

 俺は両手剣SA【ガードブレイク】を使用する。

【ガードブレイク】は防御体勢の相手に使用した場合、相手の防御体勢を解除する。

『クオッ!?』

 防御体勢を解除され、無防備に身体を晒すラガナムに【ガードブレイク】からの連携技【エクスキューション】を叩きこむ。

 相手の脳天にジャンプ斬りを見舞う【エクスキューション】は、モーションが長く、モーション中に攻撃を受けると被ダメージが増加するというデメリットがある。

 しかし単純に攻撃力が高い上に、ガードブレイクが決まった後に使えば確実にクリティカルになる大技だ。

『ガァァッ!!』

 頭部への大ダメージにたたらを踏むラガナム。

 しかし、雑魚が相手であれば【シールドスロー】に【エクスキューション】の時点で絶命している筈だ。

 だが未だに立っているというのは、流石ボスクラスモンスターと言う事か。


 傍らに落ちているタワーシールドを拾って再び構える。

「あれを食らって立っているとは、呆気無い幕切れの心配はしなくていいようだな?」

 俺の皮肉に、ラガナムは凶暴な笑みを浮かべる。

『クハハッ、無論ダ!』

 再び繰り出されたラガナムの一太刀を、腰を落としてガードする。

 先程の一撃程の威力は無い。

 しかし、それでも防御の上から僅かにダメージを食らう。

 竦む身体を奮い立たせて【シールドチャージ】を発動。

 硬直するラガナムに【ファストスラッシュ】の上位SA【ソニックスラッシュ】を見舞う。

 ただ早く武器を振るうだけの【ファストスラッシュ】とは違い、攻撃速度は更に強化され、ダメージ倍率も高い。

『グウッ!グハハハ!ガイアストイッタカ?弱キ民ノクセニ、ヤルデハナイカ!』

 大振りに振るわれる長剣の射程内からバックステップで距離を取り、【シャドウアロー】を放つ。

 攻撃動作中のラガナムにこれを防ぐ手立ては無く、胸に漆黒の矢が突き立つ。

『ギィィッ!コレシキノ矢デ止メラレルト思ウナ!』

 しかし臆した様子は見られず、ラガナムは地を蹴り間合いを詰めてくる。

 迫り来るラガナムの前に盾を翳す。

 しかし予期していた衝撃は来ない。

「ッ!」

 バキン、と何かが砕けるような音と共に、翳した盾が跳ね上がる。

 これは、ガードブレイク……!

 弾かれた盾の向こうには、凶悪な笑みを浮かべるラガナムの濁った目。

 次の瞬間、脇腹に凄まじい衝撃が走る。

「ぐぅ……はっ……」

 ラガナムの一撃を無防備な脇腹に受け、ライフゲージは一気に六割以下に減少していた。

『コレデ五分カ?ダガマダ終ワランゾ!』

 大ダメージの衝撃に竦む身体で、ラガナムの猛攻を必死で捌く。

 盾で防ぎ、剣で受け、なんとか凌ぎ切り、体勢を建て直すためにバックステップで距離を取る。

『逃ガサンッ!』

 距離を取られるのを嫌ったラガナムが跳躍し距離を詰めてくる。

 ラガナムが武器を振り上げた瞬間、奴の全身に絡み付く影の鎖。

『ヌゥッ!コンナ脆弱ナ鎖デ我ヲ縛レルト思ウナッ!』

 しかし【シャドウバインド】は格上が相手では本来の効果時間が期待できない。

 ラガナムの動きも一瞬鈍った程度に過ぎない。

「充分だ!【ステップインスパイク】!」

 鈍った一瞬を逃さず、隙の出来た腹部への突き技。

 身体を貫かれ、苦痛に顔を歪めるラガナム。

『舐メルナッ!コノ程度デ竦ム我デハナイッ!』

 密着した状態から長剣が振るわれる。

 かわせる距離ではない。

 かわす必要もない。

「【オーラバースト】ッ!」

 刀身を包む漆黒のオーラを炸裂させる【オーラバースト】により、ラガナムの身体を貫く剣が傷を焼く。

『グウウゥゥゥオオオオォォォォッ!!』

 黒い炎に包まれたラガナムは、ブンブンと炎を払おうとするかのように両手を振り回し、やがて膝から崩れ落ちた。

『ググ……クク、ハハハ……悪ク無イ闘争デアッタ』

「そうだな」

 全身を焼かれてなお、よろめきながらも立ち上がったラガナムに歩み寄り、胸を剣で貫く。


『然ラバダ、闇ノ戦士ヨ』

 ラガナムの絶命に、システムアラートが重なる。


【封印スキル【一騎当千】の開放条件【ボスクラスモンスターの単独撃破】が達成されました】

【開放条件の達成により、封印スキル【一騎当千】が開放されました】

【封印スキル【一騎当千】の開放により、一騎当千スキルのスキルアーツ【決闘】を習得しました】

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