蜂蜜と硝酸、くすぶる火種
累計10万PV達成しました。(頬をつねる)
総合評価1,000pt達成しました。(頬をつねる)
ブックマーク200件達成しました。(頬をつねる)
なんか日間ランキングの最初のページにいるよ。
ありがとう、本当にありがとう。
『T県探索者協会西部支部』は、長い事『T県探索者協会本部』と対立関係にある。探索者協会が成立した時から、T県は『本部と支部』の関係で、足を引っ張りあってきた。それもこれも、T県の東部と西部の文化の違いによる。おおざっぱに言うならば、『文化と商売の西部』と『政治と発展の東部』という形だ。西部は関西文化圏の影響下にあり、東部は関東文化圏の影響下にある。西部は大阪と、東部は東京と昔から交流が盛んである。これは、県西部と県東部の間に山脈が入っている為である。同じ県であるが、西部と東部では、何もかもが違うのだ。
ダンジョン出現後、日本探索者協会が発足する時。日本探索者協会と政府は、各都道府県にそれぞれ本部を設置する方向で計画を進めた。その計画を進めている際の調査で、「T県においては、本部を県東部に置くと、県西部の発展を軽視しかねない可能性がある」ことが発覚した。そのため、日本探索者協会は、「県東部に探索者協会本部を置く代わりに、県西部に支部を起き、そこに独自裁量権を与える」ことで、東部西部のバランスを取った。
その結果が、今日まで続く『本部と支部の足の引っ張り合い』の発端である。それも1年前に十文字が支部長になった際、「支部の独立性を確保しつつも、本部の足は引っ張らない」という方針を打ち出したことで、多少はましになった。ただし、本部からの西部への感情は未だに変わっていない。
『T県探索者協会西部支部(以下西部支部)』は、常に本部に頼らずに独自に力をつける必要があった。その結果、『FPダンジョン』『古城ダンジョン』『雨岩ダンジョン』『雪崩谷ダンジョン』といった、他に類を見ないダンジョン開発と運営によって、いくつもの人気ダンジョンを傘下に抱えることになった。いくつもの人気ダンジョンを抱えるということは、資源と財源を抱えるということに等しい。
本部から見れば、支部が独自の力をつけることは面白くないし、それが本部と同等、あるいはそれ以上の力をつけようとしているとなれば、たまったものではない。決して本部のダンジョン運営が、下手な訳でもなければ上手くいっていない訳でもない。だが、西部支部のそれに比べると一段劣る。そこで本部長や運営グループはこう考える訳だ、「西部支部をなくして本部に吸収してしまえ」と。故に、西部支部はたびたび、T県本部よりちょっかいをかけられている。十文字が西部支部支部長になっているのも、このT県本部からのちょっかいに、対抗できる貴重な人材であるとの評価からである。
だが、いつまでもこの状態で良いわけではない。そのため十文字は、『西部支部のT県本部からの独立』を密かに検討していた。このいびつな関係は、あくまで本部と支部の関係から発生するものであり、対等な関係になれば、正面から渡り合える。また、仲裁役に日本探索者協会本部が介入する余地が生まれる。
長い事十文字を悩ませていた事柄であったが、ここにきて偶然、佐藤と霧島による「FPダンジョン3・4階層に関するレポート」が提出された。その内容とは「新種のモンスター『キラー・ハニー・ビー』の発見」「アシッドスライム出現メカニズムの解明と、硝酸地底湖の確認」「『キラー・ハニー・ビー』の蜂蜜の効果について」「FP3・4階層に存在する断崖の岩石成分の予測」と、今までどうしようもなかったFPダンジョン3・4階層が、実は、「資源の宝庫であった」という玉虫色の報告書である。
FPダンジョンを再建すれば、硝酸と蜂蜜の利権が確保できる上に、FPダンジョンのボトルネックの改善により、以前よりも遥かに過ごしやすく、人気のダンジョンに変貌する。それはつまり、この本部・支部のいびつなパワーバランスの天秤を、一気に西部支部側に傾ける事に他ならない。
これにより十文字及び西部支部の首脳陣は、西部支部の本拠地を、新規に建設する事になったFPダンジョン施設に移転する事を決定。ついに長い間の懸案であった、『西部支部の独立』にむけて、大幅に舵を切った。
―そして、一悶着が起きる事になる。
新作あり〼
触手 in クーラーボックス(仮)
https://book1.adouzi.eu.org/n1200kj/




