指導探索者「佐藤孝太朗」
「はぁ!?中川と鈴木の現役探索者が、二人体制で見失ったのか?詳しく説明しろ!」
『分からないっす!一瞬目を話した隙に、姿を消したっす!中川先輩も周辺を警戒していたのにも関わらず、いつのまにか消えてたっす!』
『そのとおりだ、俺の探知すらすり抜けた。まず間違いなく周辺に居ない。』
「…まじかっ!」
えっあのバカ二人、現役探索者の目かいくぐって逃げたん!?
「とりあえず本部から増援呼べ!」
『もう呼んでるっす!その前に中川さんが巡回の増援を要請してるっすけど、本部に人が居ないって言われてしまって…』
「あー!もう!12校も集団探索の予定を受け入れるから!そうなる!周辺ダンジョンの支部から応援…いや時間がかかりすぎる!2F巡回の探索者集めろっ!」
『FP本部より佐藤へ。それはもうやってます。』
あっ岬さんの声だ。
『本部から2Fの保安要員のうち、巡回中だったメンバー10名を対象に非常招集かけました。十中八九3Fに無断侵入してるけど、単純に崖から落ちたとか、川に流された、水深の深い水溜まりに落ちた等の事故の可能性もありえるので、6名を3Fに、4名は念の為、ロスト地点周辺の危険スポットへ確認に向かわせています。』
『同時に、呉西商業の集団探索の中止命令を発令。引率探索者は生徒を連れて全員、2F入口に帰還せよ。…佐藤と鈴木と中川は一緒?』
「鈴木と中川が一緒です。私は女子生徒1名と別行動中。…別行動事由はK。現在位置は本来予定していた地点ではなく、3F入口近くの通称『スライムプール』。」
『…言いたいことはあるけど、概ね状況は分かったわ。中川を3Fに向かわせて、佐藤は鈴木と合流して、生徒を連れて帰還して。』
「…。」
『どうした佐藤。返事は?』
「…私が一番3F入口に近いはずです。」
『正しく集団探索をした、生徒の安全のほうが大事よ。』
「…ある女生徒の力を借りたほうが良いかと。」
『佐藤、あなた何言ってるのか分かってる?仮免許で3F以降には潜らせられない!』
「詳しく説明してる暇はありません、時間も惜しいです。それにこれは勘ですけど、どうもきな臭い。トラブルの臭いだ。」
『ならば!なおさら!生徒を危険にあわすな!佐藤!帰還しろ!』
『そうっす!佐藤さんの勘はほぼ当たるっす!生徒の安全を最優先するべきっす!』
『…佐藤!』
「…」
『…』
『…FP本部より、鈴木と中川へ、無線を切れ。』
『なぜっすっ!?』『なぜです!?』
『FP本部命令、中川と鈴木は生徒を連れて即時2F入口へ帰還せよ。』
『…了解っす。帰還するっす。無線切断。』『…了解。無線切断。』
「黒川さん」
「ひゃいっ!?」
無線で話していた佐藤さんが、急に私に向かって声をかけてきた。
「本当のレベルいくつ?」
『―佐藤!』
「…」




