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竜と騎士の物語(終)

 ちちんぷい!

 魔女は竜に掛けられた王様の呪いを解きました。


 竜はもう、王様の言いつけに従う理由はありません。その立派な翼で自分の生きたいところに行くことができるのです。


 魔女は独りぼっちですが、とてもたくさんの本がある図書館を持っていて、それを整理したり埃を掃ったりするので忙しいから寂しくないと言いました。病気の間、本の整理ができなかったのでやることが沢山あるようです。

 忙しくなってきた魔女にお別れを言って、竜は砂の城の外に出ました。そこには騎士が待っています。


 騎士の姿を見た竜は、今までないような気持に襲われました。胸がきゅっとする一方でふんわり暖かいのです。

 二人はお互いの無事を喜び、それから砂の城から立ち去ること決めました。お別れの言葉を言おうと思いましたが、魔女は図書館の仕事に夢中でこちらの方を見もしません。呆れて笑いながら、二人は砂の城を離れます。二人はまた砂漠の大地に戻ってきました。


 それもまた二つの月が輝く美しい晩でした。空にはたくさんの星が瞬いています。騎士は戦争の好きな王様の国に戻るのが嫌になってしまいました。王様は戦争が好きですが、戦争は嫌いだと言わない国民もきっと戦争が好きなのです。自分達もこのまま国に変えれば戦争が好きだと思われてしまいます。

 もう嫌だなあと騎士は思いました。


「戦争よりも物語が好きなんだ」

 と竜に言いました。竜は初めて聞く騎士の言葉にとてもびっくりしましたが、よく考えたら自分もそうだと気が付きました。


「物語が好きだし、それよりもっと騎士のことが好きだ」

 竜が言うと騎士は恥ずかしそうでしたが、とても嬉しいと答えます。王様の呪いが無くなったので、竜と騎士は思っていることを話し合えたのです。


 竜と騎士はその砂漠に留まることにしました。時々、戦争が好きな王様の遣いや、他の国の誰かが魔女や本を奪いに来ましたが、騎士と竜はとても強いので、追い払います。


 長い長い年月が過ぎて、いつの間にか、誰も来なくなりました。その代わり、砂漠に小川が流れだし、それは大きな河になり、やがて草が生え、木が伸び、立派な森になりました。森には小さな生き物たちがやってきて住み始めました。


 魔女とはもうずいぶん長い間話していませんが、砂のお城のなかできっと元気でしょう。

 騎士は竜に、自分の考えた物語を話します。竜はその話に喜んで、褒めたり笑ったり感心したり、……時々はおかしなところをちょっぴり指摘します。騎士は物語を直すので、どんどんお話は良いものになるのです。

 こうして竜と騎士は、今でも魔女の図書館を守っています。自分達の物語を考えながら。




END



最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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