(5)
ビビアーヌとクラリスを連れ、私は馬車を宮廷から出した。大きなフード付きマントをフィリップから借り、日が沈みかけている街を馬を駆った。今までやってきたことが影響しているぞ。
追跡者を気にしていたが、心配するようなことは無く。無事街の外れで修道院の使いと落ち合うことが出来た。
乗って来た馬車から降りて、迎えに乗りかえるときに、ビビアーヌが私に言った。
「どうか、頑張って。フリートのこと」
私は息を飲んだ。
「それってなんなんですか!?
彼女達になら聞ける。やっとタイミングが来た。私も食いつきにビビアーヌが目を丸くした。
「フリートはフリートですよ。お忘れになってしまったのですか?」
「いや、そもそも知らなくて」
「知らないなんてことはおかしいでしょう」
クラリスも口をはさんで来たが、その回答は私の納得できるところではない。なんなんだ~!
二人にとってはあまりどうでもいい感じの話題のようで、あっさりと会話を打ち切ってしまった。「このご恩が忘れません」という二人を引き渡し、我々は分かれる。
不可解は不可解だ。だんだんおかしな感じになって来た。
街の外れの森からでて、街中に戻ることになった。
今は一人となった馬車の中で私は考える。
エルキュール、クラウディオ、ラウル、フィリップ。攻略キャラと関わって来た。
エルキュールでは、本編ではリュカの死亡展開について変わっていたし、私も変えようとした。
クラウディオでは、不遇の運命だったデシデリアが人生を謳歌していた。
ラウルでは、彼とベルナルド王子の思い出を知ることができた。
フィリップでは、シナリオに振り回されるだけのビビアーヌとクラリスが楽しそうに駆け落ちをしていった。
割といい話だ。だけど、アデルは見つからず、知っているゲーム展開以外のことが起き続ける。
日はもうとっぷりと落ち残すところはもうあと五時間くらいだろうか。
このまま悪魔憑きに殺されなかったらどうなるんだろうか。明日になったら?
そのことを考えた時、ふいにざわっと背中が総毛だった。それはどうも避けた方がいいのではないかという本能的な直観だ。
一旦これで王宮に戻るとして、そうしたらイザボー皇太后に会って報告することから始めようか。アデルはほんの数日前までの目撃情報はあるのだから、遠くには行っていない。荷物が哲一のところからも王宮内にまだいるような気がしている。そうなると彼女の力で人数動員して探した方が良くないか?
その時だった、急に馬車が止まった。
まだ王宮は遠いはずだがと思って、私は首を傾げる。もしかしたら野盗かもしれないので、用心を兼ね、私はフルーレを手にした(こういう時のためにフルーレゲットできるエルキュールとの邂逅は省略できん)。
そっと窓の外を伺おうとした時には、扉が開き、誰かが私の腕を乱暴につかんで引きずり出された。まだ都にも入っていない林道で、遠くにはぼんやりと夕闇を照らしている都の明かりが見えた。
わたしと御者を囲んでいるのは、十人ほどの男達だ。それぞれ身なりはいいので、物取りや盗賊ではない。
一番奥から白っぽい人影が歩み出てきた。その彼を見て、私は息をのむ。
あ、あ、アルマンだ!
私は思わずガン見してしまった。
枢機卿アルマン。隠し攻略キャラ!




