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今から遣り返す!

暑い中読んでくださってありがとうございます。


 ゆっくりと砂埃がおさまり、その先に真っ紅に光る瞳。薄暗い地下に光その瞳はまるで暗闇を照す炎の様に燃え上がっているかのようであった。


「なにが…… 起きたの。何で壁の中から…… 」


 ミーナ自身も状況が解らず立ち尽くす最中、人間達は余りに唐突な出来事に動揺するも直ぐに冷静さを取り戻した。考えれば隠れていた敵に不意打ちを食らっただけだと考えたからだ。


「探す手間が省けました。さあ、その獣人達を早く始末して探してる物を手に入れるとしましょう」


 ユハルの言葉に再度人間達は、武器をとり魔法の詠唱を開始する。


「全く時間が勿体無い、時間は皆さんには限られているのですから急ぎなさい」


「はい! ユハル様、直ぐに」


 しかし、ユハルの思い通りには為らなかった。壁の先から姿を現したのは真っ紅な目をした見たこともない獣人であった。


 体毛は殆んど無く、耳は獣人、特有のモノだが顔は人間と変わらない。


 獣人は雄ならば、子供でも獣の面構えをしていて全身を体毛が包み込んでいるのが普通だった。

 女の獣人で在れば尻尾にうぶ毛のような体毛が在る筈だがそれもなかった。

 爪は鋭く尖り、犬歯が牙のようになっている姿は間違いなく獣人であったがまるで人間と獣人の中間の様な存在としか説明が出来ないその姿に人間達は警戒を強めた。


「素晴らしい! お前達、あの獣人は生け捕りにしろ! 手足は無くても構わん、あはは! ディノスのお陰でコレクションがまた増えるぞ」


 ユハルが高笑いをしようとした瞬間、顔に水滴が飛んできた。


「ん? なんだ」


 ユハルが顔から水滴を拭うと其は血液であった。直ぐに下を見れるとさっきまでの余裕は一瞬で消えた。下にいた人間達から次々に血飛沫ちしぶきが舞い上がる。

 武装した兵士の体をまるで葉っぱを裂くように爪で切り刻むその姿はユハルにすら寒気を与える程、圧倒的な威圧感を全身から放っていた。


「場所が悪い、1度外に出ねば!」


 ユハルは直ぐに扉を開くと外に向けて走り出した。その後を追うように兵士達も地下室から逃げ出していく。


 それを追おうとしたコウヤで在ろう獣人にミーナが抱き付いた。


「コウヤなんだよね、私を助けてくれたんだよね。ありがとう」


 そう言われコウヤの眼から輝きが無くなりいつもの紅眼に戻っていった。コウヤ自身、自分の体に何が起きたのか分かってはいなかった。


 呼吸が落ち着くまでの数秒、ミーナは只、コウヤを後ろから抱きしめていた。


「僕は、本当に僕なのかな…… 僕の爪も耳も、人間じゃないみたいだよね?」


「コウヤはコウヤよ。私には分かる、貴方は間違いなくコウヤ=トーラスよ」


 そんな中壁の向こうからゴブリンとオークの二人と後から逃げてきたゴブリンが、顔を出した。怯えた顔をしていたが、コウヤの顔を見て直ぐに歩み寄ってきた。


「コウヤだよな?」


「うん、僕もコウヤなんだよ、君達の知ってるコウヤとは少し違うけどね」


 そう言うと少し寂しそうな顔をされた。


「俺達の事、忘れちゃったのかよ」


「…… また、ラシャに内緒で果物を取りに行くんだから、忘れるわけないよ」


 そう言いコウヤが笑うと子供達が笑顔になった。

 人間達の死体が在る中で笑っている事を自覚したコウヤは既に自分が人間側にいないことを悟った。


「コウヤ、私は一緒にいくから何処までもコウヤと行く、だから…… 」


 喋るミーナを見てコウヤが微笑んだ。


「皆、気を付けて外に出るよ。ラシャに逢わなくちゃ! ミーナは子供を連れてきて! 先に外の様子を見るから」


 急ぎ扉に向かおうとした時、パンプキンからの“ライエス”を受信した。


『コウヤさん、御無事のようですね。私が奴を追います。爆発音がしたら、扉の外に出てください』


『わかったよ、一人で大丈夫なの? パンプキン』


『大丈夫ですよ。私は此れでもかなり強いはずですからね。其れに今回の相手は私が戦わねばならない相手ですので、手助けは無用です』


『わかった。ちゃんと帰ってきてね』


 そうして“ライエス”は、終了した。其から直ぐに“ドゴォォォン”と爆発音が聞こえた。


 コウヤはパンプキンに言われた通り、扉を開き外に出ると王宮内は酷い有り様だった。至る所に死の香りが充満する真っ赤な世界が広がっていた。

 急激に嗅覚もあがっているのか、以前より遥かに鉄臭い香りが鼻を刺激してくる。そんな中、コウヤは直ぐにラシャの居場所を魔眼と体外魔力を使い探し出した。少し距離があるが急いでラシャの元に向かおうと走り出した時、馬小屋が眼に入った。

そして、コウヤは馬小屋に繋がれたワットに跨がった。


「ワット、僕がわかるかい?」


「クワァァァァ!」


「よかった。なら頼むよワット! ハイヤァァァァ!」


 コウヤは禁忌の森の中をワットに跨がり全力で駆け抜けて行くのであった。そんなコウヤの向かう先では多勢に無勢の状態を余儀なくされたラシャ達が必死に王宮への道を守っていた。


 コウヤが向かっていることを知らないラシャ達は死を覚悟し始めていた。しかし、王宮の方から高速で森を走り抜けてきたコウヤを見てラシャは驚いていた。コウヤは直ぐにラシャの元に駆け寄る


「ラシャちゃん。生きてて良かった」


「記憶が戻ったから、ちゃんは無しだ。ラシャでよいぞ」


「ただいまラシャ。今からが反撃の時間だね」


「ふん! 初めから其のつもりだ」


 コウヤの言葉にラシャが微笑んだ。


読んでいただきありがとうございます。

感想や御指摘、誤字などありましたらお教えいただければ幸いです。

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