勝利の代価
遅くなりましたが更新しました。(*^^*)
ブックマークが増えてて嬉しくて仕方ありませんでした。
作品の内容はダークですが(><)読んでくださる人がいる事実に感謝です。
ロナの眼には既にコウヤは獲物としか写っていなかった。そんなロナの後ろから一人の男が現れた。
「我が娘よ、よくやったな! ちゃんと足止め出来たじゃないか」
ロナを娘と呼び頭を撫でる男。そして、嬉しそうに微笑むロナの姿が其処にはあった。男はコウヤの方を向くと“ニヤリ”と笑みを浮かべた。
「やあ! はじめまして、グランの倅よ。会いたかったぞ」
「何故、父さんの名を!」
コウヤの父の事はロナすら知らない事であり、コウヤ自身もソウマに聞かされるまでその名前すら知らなかった。
「自己紹介がまだだったな、失礼した。俺は警備隊の総隊長。“ディノス=タクト”だ。お前の父、グラン=トーラスには大変世話になったのでな、お前さんにも御礼をしようと思ってな」
ディノスの名を聞きコウヤは怒りを露にする。
「お前がディノスなのか! お前が母さんを!」
「おいおい? 勘違いするなよ、俺がお前さんの住むカルトネに着いたのはお前が火を放った後の話だ! お前の母など知らん」
ディノスはそう言うとある紙を取り出した。
「アグラクトからの正式な逮捕状だ。コウヤ=トーラス。お前をアグラクトの名において! 連行する」
コウヤにつけられた罪状。
・アグラクトに対する反逆行為。
・国家反逆罪。
・兵士への暴行。
・兵士殺人。
・兵士殺人未遂。
・国家権力暴行罪。
・都市、村等に不安を与えた事による、人々の生活を脅かす行為。
・村に火を放った放火行為
次々に罪状が読み上げられていく。
「国を脅かす害虫、罪を重ねし悪魔、コウヤ=トーラス。アグラクトで死刑になるか、この場で処刑されるか選べ!まあ、処刑と言っても生きて貴様をアグラクトの裁判所へ渡さねばならないので殺しはしないがな!」
ディノスが語っている間にコウヤ達の周りに歩兵達が囲むように陣形を組んでいた。学生の其れとは違い、隙のない統率のとれた、その動きはコウヤとミーナの身動きを完全に塞いでいる。
「お前は此処までだ! よく逃げてきたと誉めてやるよ。禁忌の森に入るためにどれ程、王への説得に骨を折ったことか、だが、やっとすべてが報われる!」
そんな会話を聞きながらもロナは微動だにしない。
「1つ聞きたいんだけど、ロナに何をしたの!」
ロナのあまりの豹変ぶりにコウヤは違和感を感じていた。何よりSクラスのトップだからと言って全生徒に命令するなど普通あり得ないことだ。
「知りたいか? あはは、可哀想なロナ。お前に敗北し悲しみにくれたあげく、絶望的な状況で帰宅すると家は火の海、すべてを炎が包み込んでいたんだよ! そんなロナに魔法薬をくれてやったのさ! すべてを忘れられるようにな、お前が消えた日から感情を殺す為の魔法薬を毎日飲ませてやったのさ」
そう笑いながら話すディノスを見てロナは笑顔を浮かべていた。
「其れから毎日新しい記憶を空っぽのロナに植え付けた。此れは実に素晴らしい時間だった。俺の命令で人すら殺める完璧な人形の出来上がりだ! 今では俺の命令しか聞かないし、俺の為だけに生きる人形だ 」
ロナは全てを聞いても尚も笑っていた。そして、コウヤは怒りを感じながら拳を握った。
「もう、いい……黙れ」
「ああ? おいおい、いきなりキレたのかよ。まあ、無理もないか、あはは」
「黙れって言ったんだよ!」
コウヤは怒りに任せて自身の魔力を解放した。解放された魔力は体外魔力が補い空に成ることなく魔力がコウヤの中に供給され続けていく。余りの魔力に兵士達もそして、ディノスさえも、驚愕した。
コウヤの魔力に指輪の幻術が消され、コウヤの紅眼がディノス達の前に露にされた。
「な、紅、紅眼だよ! くははは、ならば話は別だ。今すぐあの化物をぶち殺せ!」
ディノスの命令で兵士達は一斉に弓矢を放ち、その後方から魔法攻撃をコウヤに向け発動する。学生のとった戦略はディノスの入れ知恵であり、今攻撃を仕掛けてきている部隊が本来追い込んだ敵に使う為の攻撃方法であった。
しかし、ディノスはコウヤを軽んじていた。10歳の子供と侮っていたのだ。そして、コウヤはその魔力の矛先をディノス達に向けた。
コウヤは全ての弓を燃やし尽くし、飛んでくる炎を更に強い炎で消し去った。そして兵士の体を次々に燃やしていったのだ。その光景はディノスにとって悪夢と言う他なかった。
ディノスの兵士達は訓練された軍人であったが、コウヤ程の魔力を扱う相手に対する訓練は受けていなかった。コウヤの魔力は予想の範疇を越えていたのだ。
「化物はやはり違うな、ロナ、アイツを何とか出来るかい?」
「何とかするわ、任せてお義父さん!」
そう言うとロナはコウヤに襲い掛かって行く。ロナはコウヤを本気で殺す気なのだろう、その一撃、一撃が確実に食らえば肉体が吹き飛ぶであろう魔力を込められていた。
そして攻撃を繰り出す度にロナの表情は険しくなり、顔からは血の気が引いていく。
「ロナ、やめるんだ! その魔力は使ったらいけない!」
ロナの使用している魔力は体外魔力ではなく、自分の生命力を使い強制的に体内で作り出した魔力だった。ロナは一撃に自身の魔力の半分を込めており、それをコウヤに何度も繰り返し攻撃を行った結果、ロナの体力も生命力も凄まじい勢いで消耗しているのが魔眼を通して確認できた。
「アナタには分からないわ、コウヤ、お義父さんの為に私は命を捧げて戦ってるの、素敵でしょ?私は……お義父さんだけ要れば幸せなの……あとは要らないわ」
ロナは更に魔力を高めると両手に魔力を集中するとコウヤに再度攻撃を開始する。
しかし、コウヤは覚悟を決めていた。ロナに向かいコウヤは走り出した。そしてコウヤは全力で魔力を撃ち放った。
「行けぇぇぇぇぇ!」
コウヤの放った魔法は雷の魔法であり、ロナはそれを即座に回避した。
「そんな攻撃が当たるわけないわよ!」
しかしコウヤの狙いはロナではなかった。ロナの後方にいる、ディノスであった。
しかしデュノスもそれをアッサリと回避した。
コウヤも躱す事は予想していた。次の瞬間、デュノスの体内に凄まじい勢いで痛みが走った。
「ぐわぁぁぁぁ! な、なんだ……体が!」
コウヤは一瞬の隙を逃さなかった。デュノスとの距離を即座に縮めたコウヤは土魔法を使い砂鉄を一瞬で剣の形に変化させ。手に握ったまま、火炎魔法で即座に剣を造り上げたのだ。
コウヤはデュノスが避けるのを計算していた。デュノスがどちらに避けても確実に電流を流す為に地面に流れた夥しい血液を利用したのだ。
デュノスは難なくコウヤの電流を避けたがその時点で勝敗は決していた。
そしてデュノスの眼には凄まじい勢いで走ってくるコウヤと今にも眼球に突き刺さらんとする剣先が写し出されていた。
「やめてぇぇぇ! お義父さん!」
ロナの声がコウヤの耳に届いた瞬間、それと同時にデュノスの眼から頭蓋に向けてコウヤの剣が真っ直ぐに突き刺さった。
「ぎゃあぁぁぁぁッ!!」
「イヤァァァァ!」
デュノスの断末摩とロナの叫び声が同時に禁忌の森にこだました。その声を聞き直ぐにソウマが駆け付ける。ソウマが見た光景は余りに悲惨だった。
コウヤの手に握られた剣の先には、1度は一国の将軍にまで登り詰めたデュノス=タクトの無惨な姿があった。そして、周りには状況が理解できずに立ち尽くす兵士達と膝から崩れ落ちていたロナの姿があった。
「お義父さん…… お義父……さん…… 」
ロナは壊れた人形の様に同じ言葉を繰り返しながらデュノスの体を擦っていた。
そして、ディノスの部下である校長は直ぐ兵士達を命令を下した。
「撤退だーー! 森に火を放て!」
その言葉に兵士達は直ぐに森に火を放った。そして、馬に乗った騎士の一人がロナを掴み上げ連れていく。
「イヤァァァァ離して! お義父さんーー!」
ロナを追いかけようとするも放たれた炎の勢いは凄まじくコウヤ達は炎の消火せざるをえなかった。
そんな最中、一瞬の閃光がソウマに向け撃ち放たれた。その一撃は背後から一瞬でソウマの心臓を貫いたのだ。
ソウマ自身何が起きたか理解できなかった。
ただ、分かったことがあった。自身の死を理解したのだ。一瞬で体から鼓動がなくなり、息を吸い込もうとした瞬間に口から逆流する大量の吐血、ソウマは最後に全魔力を使い冷氷魔法を発動させた。
本来なら冷氷魔法を全力で発動する者はいない。
ソウマの冷氷魔法は一瞬で炎を凍らせた。森の一部は氷に覆われ、コウヤとミーナは何が起きたのか分からなかった。しかしミーナはソウマの立ち尽くす姿を見て直ぐに理解した。
ソウマは立ったまま凍っていた。全力で冷氷魔法を使えば、血液や内々の水分は全て凍り付く。
その為冷氷魔法を使う際には火炎魔法と合わせなければならない。しかし死が確実になったソウマは全ての魔力を冷氷魔法に注ぎ込んだのだ。
ソウマの心臓部は赤い氷で覆われていた。コウヤがソウマに近付いた瞬間、ソウマの肉体は跡形もなく砕け、ソウマは塵へと姿を変えた。
「そんな……なんでだよ、アイリに何て説明するんだよ……助けるって言ったじゃん! 任せろって言ったじゃんか…… ソウマァァァァ!」
悲しくもコウヤの声は氷の森の中に響き渡り消えていった。
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