再会
今回は森に住む種族も内容に取り入れながら書いています。
楽しんでいただけたら幸いです。
コウヤとミーナが部屋を出ていき、ソウマも急ぎ二人の後を追い外に向かおうとする。しかしソウマには、どうしても腑に落ちない事があった。
ソウマは急いでコウヤ達を追いたい気持ちを押え、その場で足を止めた。
「おい、パンプキン! 何故、コウヤ達を焚き付ける様な事を口にした答えろ!」
ソウマはパンプキンがコウヤ達を森の中に行くように仕向けたのでは、ないかと疑ってかかる。
其れに対してパンプキンは冷静な口調でソウマからの問いに答えた。
「焚き付けるだなどと、とんでもないですよ。今の現状を見ればアナタならお分かりでしょう? 其ともソウマさんは、ただ友人が殺されるのを黙ってコウヤさんとミーナさんに見せる御積もりだったのですか?」
「其れは…… しかし、他にも遣り方があった筈だ!」
「仮にあったとして間に合わす程の時間などありません、森にラシャとエルフ達が向かえば森に侵入した学生さん達はモノの5分で全滅するでしょう」
パンプキンの言う通り最初に侵入してきた部隊は10分と掛からずに全滅している。その事を考えると学生と言ってもまだ初等部の彼等にラシャ達と戦える程の経験も実力も無いことは明白である。
「若い彼等に命で通行料を払わせるのは余りに酷な話ですからね、いくら人間が嫌いな我々、魔族でも子供が無意味に死ぬのは見たくありませんからね」
パンプキンはそう言うと空を見上げた。ソウマは返す言葉が見つからない様子で複雑な表情を浮かべる。
「そうですね……ソウマさんにも“ライエス”を掛けておきましょう。そうすれば位置が把握できますし、会話も出来ますからね」
パンプキンはソウマが断るのも聞かずライエスを発動した。ソウマは怒りを表情に出していたがそのまま、コウヤ達の後を追って森に入っていった。
「ソウマさん頼みますよ……コウヤさん達に今、死なれては余りに悲しいですからね。間違った選択をしないように祈っていますよ。ヨホホホホ」
ソウマがパンプキンと話している間にコウヤとミーナは確実にロナ達に確実に近づいていた。
真っ暗な暗闇の中、鬱蒼と生い茂る木々の中をコウヤとミーナは突き進んでいく。二人はリンクする事により、ミーナの猫眼と体外魔力のお陰で暗闇の中でも移動速度を落とす事なく森の中を進んでいく。そして、ロナ達は直ぐに発見する事が出来た。
ロナ達は体外魔力を使えない為に火炎魔法を松明の代わりにしている者や光魔法を使い闇を照らしている生徒が殆どであり、数人で固まって移動しているのがコウヤ達から見えている。
「もし、ラシャ達が来てたら的にしか為らないな、パンプキンに言われて来て正解だったね」
離れた木の上からロナ達を見てコウヤは素直にそう言うと次の木に移動を開始した。そんな中、学生が洞窟の中にゴブリンのコロニーを発見したのだ。
ゴブリン達は見馴れない光を放つ集団に警戒しながら戦闘準備を始めて最中の出来事であり。
学生の一人がコロニーの中を光魔法で照らした瞬間だった。コロニー中のゴブリンの群れが一斉に学生に襲いかった。
通常、ゴブリンは弱者として人間の間では知られている。しかし、ラシャ=ノラームの支配する禁忌の森に於いて、その常識は通用しない。
エルフの支配下に置かれた彼らゴブリンの戦闘能力は一般の人間の戦士と同等にまで上がっていたからだ。
彼等は、ゴブリンでありながら、禁忌の森の外に住むホブゴブリンよりも戦闘能力は上であり、禁忌の森の中での戦闘ならば更にその能力を発揮する。
そんな事とは知らない学生達は一人が遣られると直ぐに集まりだし次々に攻撃魔法を発動していく。
しかしゴブリンのコロニーの出口が3ヶ所在ることに学生は誰一人、気づいて居なかったのだ。
次第に前方と後方からの挟み撃ちにあっている事態に学生達は気づき出すと我先に逃げ出したのだ。
ゴブリン達も散りじりになった学生を次々に襲っていく。コウヤ達が駆け付けた時、ゴブリンのコロニーの周囲には、学生とゴブリンの死体が至る所に目につく悲惨な状況だった。
「く、不味いよねこれ、急がないと!」
コウヤは急ぎ散りぢりになった学生を捜しにいく。しかしミーナは複雑な気持ちだった。自分達、獣人とゴブリンを重ね合わせていたのだ。
もし、同じ事が起きたときにコウヤがどう動くのか、そして人間の側につくのだろうか、ミーナの中で少しだけ不安が過った。
しかしコウヤは急に足を止めた。ミーナが不思議そうにコウヤを見ると何かを考えていた。
「コウヤ、どうしたの?」
「変なんだ、さっきからゴブリンの死体しかないんだ」
其れは余りに不自然であり、ゴブリンの方が遥かに条件が整っている状況下であれば尚更だ。
学生がゴブリンを倒しながら一人も犠牲を出さずに一定の距離を逃げきったと考えるのは無理がある。
コウヤは少し悩んだが、スピードを少し緩め、警戒しながら先に進んだ。その頃にはコウヤの中で学生の心配よりも大量の森に転がるゴブリンの亡骸に対して哀しみの感情が生まれていた。ゴブリン達は四方八方から弓や攻撃魔法で殺られているのが直ぐに分かるほど無惨な死に方をしていた。
コウヤ達が少し開けた草むらに足を踏み入れた瞬間に四方八方から光魔法で照された。
「うわ、なんだ!」
余りの眩しさに視界が一瞬見えなくなる。
「お前達がゴブリン達を殺したのか!」
コウヤの問に答えた声。それは聞き覚えのある声だった。
「そうよ、ゴブリンの道案内は分かりやすかったでしょ? 久々ねコウヤ、会いたかったわ」
眼が光になれ、声のする方を見ると其処にはロナの姿があった。その横にはキャメルとクレスト達Sクラスのメンバーが勢揃いしている。
「会いたかったぜ! コウヤ=トーラス、お前をぶっ潰さないと傷の痛みが収まりそうにないんだよ!」
クレストがそう言い動き出そうとするとロナが待ったをかける様に手を伸ばした、クレストは其れに従い一歩後ろに下がった。
「コウヤ、私ね…… Sクラスのトップになれたのよ。でもね、誰も私を認めないのよ……コウヤにあんな負け方したから、私はトップになってもなにも変わらないの、アナタが憎いわ、陰口を叩かれる度『盲目に負けた幼馴染み』って言われるのよ!」
ロナが睨み付ける。その表情は既に今まで知っているロナの物ではなかった。
「コウヤ、チャンスをあげるわ! 私とSクラスに来なさい! そうすればコウヤ程の実力が在れば自然とアグラクトでの将来が約束される。もし来ないなら、アナタを危険分子としてアグラクトに報告するわ。私は本気よコウヤ! 選びなさい」
ロナは、本気だ。しかしコウヤにSクラスの栄光もアグラクトでの未来も必要なかった。
「ごめんロナ。僕は行けない…… アグラクトの未来なんか要らないんだ。僕はディノスって奴に復讐したいだけだから」
初めて出たコウヤのディノスに対する復讐心。それを聞きロナの目付きが鋭くなる。
「わかったわ……なら幼馴染みの誼で、アグラクトに引き渡すのは勘弁してあげる。殺されちゃうからね……」
ロナは鋭くした目付きのまま微笑む。
「コウヤ! 悪いのはアナタよ。コウヤ=トーラスの手足を切って連れてきて、でも殺したら駄目よ……あと、獣人はいらないわ……」
ロナの言葉に耳を疑った。そして、Sクラスのメンバーと他の学生達が一斉にコウヤとミーナ目掛けて押し寄せた。
コウヤに本当の決断を迫られていた。
コウヤの決断を次回は書く予定です!
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