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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第4章 カルトネ新たな道へ
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父の名と戦場の真実

今回の話はコウヤのお父さんのお話になっています。

宜しければ読んでください。

 馬車は土砂降りの雨の中を駆け抜けていく。揺れる馬車の荷台に雨音が鳴り響く、屋根にあたる雨風は次第に勢いを増していくように感じる。そんな馬車の中に横たわるコウヤとソウマの間にあったのは沈黙であった。


 互いに言いたい事だらけだが何から話すべきかが分からないでいた。


 ただ解っている事はある……ミカが死んだ事であった。そして分からない事は消えたアイリが何処にいるのかとソウマが何故、刺されてたのか、そして殺されずに放置されたのかであった。


 全てを確かめたいと言う気持ち、だが聞きたくないと言う気持ちがコウヤの心の中に存在していたのも事実であった。そんな二つの感情は渦になり心をのみ込んでいくようだった。


 そんな二人の沈黙を雨風が嘲笑うかの様に激しく屋根を打ち付けていた。


「コウヤ……アイリと母さんの事……ごめんな、本当に……ごめん俺が……生き残るべきでは無かった……ごめん」


 ソウマの最初の一言は謝罪であった。大の大人がまるで、子供の様に大粒の涙を流しながら“ごめん”と横で涙を流している姿にコウヤも堪えていた涙があふれ出した。


ーー大好きだった……毎日ずっと居たかった……ただ愛してるって最後に伝えられた筈なのに、僕は……最後……母さんにちゃんとサヨナラすら言わなかったんだ……


 馬車の手綱を握るパンプキンとミーナは二人の涙を流す悲しい声と会話が雨音で途切れながらも確かに耳に入ってきていた。ミーナは自分が獣人であるが故の耳の良さを後悔した。


「コウヤ……ソウマ……」


「ミーナさん。今はそっとして置いてあげましょう、時が来れば自然と話してくれる日が来ます」


 パンプキンの言葉に無言のまま頷くミーナの表情は、少し寂しげで悲しそうな目をしていた、パンプキンはそう感じながらも其れを口に出すことはしなかった。 そんなミーナの心を癒すべきはコウヤだと信じていたからだ。


 パンプキンは、ミーナを娘の様に感じていた。それ故に今回の人間のやり方は赦せる物では無かった。 コウヤが意識を失っている間に駆け付けたパンプキンとミーナは直ぐに雨の中で炎に包まれたコウヤの家の火を必死に消火した。


 その際に隣の家にもミーナが助けを求めに走ったが、周囲の家には誰も居なかったのだ。むしろ、生きている人間はいなかったと言う方が正しいだろう。


 ミーナが家の中に入るとまだ新しい血の跡があり、その先に住人と思われる死体が無造作に転がっていた。ミーナは嫌な予感がして他の家を直ぐに調べたが、コウヤの家の周囲全てが同じ状況であり、ランプに使う油が家中に撒かれていた。


 ミーナは急ぎその事をパンプキンに伝えると、パンプキンは消火を諦め直ぐ消火する為に出した使い魔をポケットにしまい。コウヤとソウマを担ぎあげた。


 そして、ミーナに直ぐにワットと共に森の外に抜けるように指示したのだ。 ミーナはそれに従い、パンプキンとミーナは森を急ぎ進んだ。


 森の中央に入る頃にはコウヤの家とその周辺は炎に包まれ全てが灰に変わっていった。消火した際に火が消えないように、予め時間差で火炎魔法が仕掛けられていた。


 勿論、本来時間魔法などは世界に存在しない。それを可能にした“ロストアーツ”が存在するのだ。そして、それはパンプキンの探している物でもあった。遠い昔に人間に奪われた大切な思い出のロストアーツ。


 パンプキンは此処にきてやっと手懸かりを掴んだのだ。しかし、素直に喜べる状況ではない事をパンプキンが一番わかっていた。


「相変わらず……人間は救いようがありません……」


 ミーナは確かにパンプキンの小さな呟きを聞いた。怒りに満ちているのに切なくて悲しい声でそう呟いたパンプキンの表情はとても怖いものに見えた。


 馬車の中ではソウマがコウヤに何故こんなに早く警備隊が動き出したのかを話していた。


 そこには今は亡きコウヤの父親が関係していたのだ。


 コウヤの父親、グラン=トーラスはソウマの友人であり幼少を同じ村で過ごした仲であった。


 そんなグランとソウマも成人し互いの道を進むことになった。グランは魔術の才能にも恵まれ、魔法を使わせても村でソウマと並ぶ程の実力の持ち主だった。しかしグランは、その才能に頼らず教師になる道を選び、小さな村の小さな学校で魔術を教えながら幸せに暮らしていた。


 ソウマは魔術の才能を医療に使いたいと“医療魔導士”になり更に数年で“医療魔導師”になった。

 そして、獣人や魔族の使う“体外魔力”や“魔感”、“魔眼”等を研究する魔導研究の分野に身を置いていたのだ。 そんな二人が逢わなくなってから数年が過ぎたある日、一通の手紙がソウマ宛に届けられた。それはグランからであり、ミカと結婚すると言う内容であった。


 ソウマは『直ぐには向かえないが、いつか会いに行く』とグランに手紙を返した。しかし、グランから返事が来る事は無かったのだ。


 そして、直ぐに“アグラクト王国”と隣国“シャパル王国”の戦争が始まったのだ。


 アグラクトの騎士団が王都を離れたと聞きシャパル王国が兵を動かしたのだ。それに伴い近隣の村や町から住民を集めシャパルの兵隊に対し抗戦させたのだ。


 正規の軍人でない者達で構成された軍隊では、足止めにしか為らないと考えていたが、グラン指揮の魔法部隊は次々に敵陣を破壊し敵兵を撤退させていった。予想外の戦果をあげていたのだ。


 しかし、グランは敵兵を徹底して殺すような真似はしなかった。逃げられる敵兵には撤退するように呼び掛け、隊長格のみを瞬殺する事で敵兵の士気を奪う戦い方をしていたのだ。


 そして正規軍が戦場に到着した時も状況は同じであった。グラン指揮の魔法部隊は敵兵を撤退させていったのだ。しかし、正規軍指揮官のディノス=タクトは其れを赦さなかったのだ。


 ディノスは正規軍にシャパル兵の追撃と一掃つまり、皆殺しを命令した。そんな中、グランは直ぐにシャパルの兵を逃がそうと必死に奮闘したのだ。

 何故ならば、シャパル兵の多くが若者であり、皮肉にもその中には自分が教師にするべく教えた教え子達もいたのだ。


 本当ならば、教師になり生きる術を教える筈だった者達が戦場で相対していたのだ。ディノスは敵味方が走り抜ける戦場に大量の弓矢を打ち込んだのだ。そして、グランはその弓から仲間と敵兵を防御魔法を使い守り抜いた。


 そして、シャパルの青年兵達は直ぐに撤退をしたのだ。しかし、青年が振り返って見た光景は、ディノスがグランの心臓を剣で貫き、倒れ込む恩師グランの姿だった。青年は直ぐに戻ろうとしたが、グランは風魔法を使い青年を吹き飛ばしたのだ。


「命あるものは! 逃げよぉぉぉ! 若き命を戦場に捧げるなぁぁぁぁ!」


 グランの声に青年達は直ぐに撤退を再開した。


 ディノスのとった行為に対して、アグラクトは戦時中の事故とした。グランは魔法部隊の隊長として名前が広まりだしていたからだ。その隊長を正規軍指揮官が殺したとなれば士気が下がると考え、グランは敵兵に殺されたとする方が兵士の士気が上がるからであった。


 更にグランが殺されるところを見ていたアグラクト兵は既に拘束済みであり、真実が明るみに出ることは無かった。


「コウヤ、お前の父さんは立派な男だったんだぞ、本来なら将軍だって、夢じゃなかったんだ」


 ソウマはコウヤに父の真実を語ってくれたのだ。


「ディノスはその後、正規軍指揮官の任を解かれたんだ、グラン程の戦果をあげられなかったから仕方無いことだが、ディノスはそう考えなかったんだ」


ソウマは更なる真実を話そうとしていた。


更なる真実は次回!


読んでいただきありがとうございます。

感想や御指摘、誤字などありましたらお教えいただければ幸いです。

ブックマークなども宜しければお願い致します。

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