全てが終わり、始まる
「僕は何をしているんだろう……何であんな魔法を使ったんだろう……」
コウヤは自問自答していた。クレストの魔法では炎が消せないのは理解してた。なのにも関わらず放った上位魔法、何故放ったのかを考えていた。
コウヤは、此ほどの大怪我をクレストにさせるつもりは無かった。ただ、予想外だった事は教員達の魔力が弱すぎた事だった。ミーナが居たから良かったが、もしミーナが居なければクレストはその姿を灰にしたとしても、消えることは無かっただろう。
そして、ミーナは自分を嘲笑ったクレストを助けなければいけなくなり。皮肉だったのは、コウヤよりも炎を消してクレストを助けたミーナに向けられる目線の方が更に冷たいものだった事である。
そして、生徒の一人が声をあげた。
「バ、バケモノッ!」
その一言は会場にいた誰もが感じていた言葉であり、教員達すらも、そう感じていた。
「帰ろう……ミーナ、もう疲れちゃった」
そう言うとミーナと共にくらい通路を歩き出した。
「なんでだよ……僕が悪いのか……クレストが僕を灰にしようとした時に誰も動かなかったじゃないか……なんで……うあぁぁぁぁ!」
コウヤの叫び声が暗い通路に響き渡り、其れは悲しく、こだました。コウヤの横にいたミーナにはその辛い気持ち、悔しさ、憎しみが沸々と伝わってきていた。
まるで今にも砕け散りそうなコウヤの理性を繋ぎ止めていたモノはミーナであった。
「ミーナ……僕が悪いのかな……僕が死ねば皆は喜んだのかな……僕わからないよ」
その言葉がコウヤの口から語られる度に巻き直した包帯から大量の涙が染み出していた。一言に詰め込まれた感情は口にする度にコウヤを苦しめていくようであった。
そして、二人は学校を後にした。もう、二度と来る事は無いだろうと。
試合が終わって直ぐ、上級生や強化クラスの生徒達の何人かがSクラス入りを狙ってコウヤとミーナに対して攻撃を仕掛けようとしてきたが、其れを全て薙ぎ払った。相手が詠唱を終わらせる前に全てである。
そして、学校を出る頃には誰も側に近寄らなくなっていた。いや、近寄れなかったのだろう。
生徒を倒す度に苦しむのコウヤを見かねたミーナが全身から今まで感じたことも無いような、凄まじい殺気を放っていたからだ。
二人が家に帰ると家の周りを兵隊が囲んでいた。彼等は校長からの連絡を受け二人を捕らえに来たのだ。
校長は試合で事故を装った殺人を犯そうとした生徒と獣人がいると警備隊に連絡し、警備隊が獣人がらみ為らばと他の近隣の警備隊も呼び寄せたのだ。
そして、目の前で警備隊複数から殴られているソウマの姿とぐったりとしているミカの姿、その横で大泣きをするアイリの姿があった。
「なんなんだよ……お前らァァァ!」
コウヤの叫び声に此方に気づいた警備隊は直ぐに此方に走ってきたのだ。
「はぁはぁ、逃げろぉぉぉぉ! コウヤ今すぐに逃げるんだ」
「黙れ!!」
そう叫んだソウマに警備隊は更に暴行を加えたのだ。
二人は状況の分からぬまま、急ぎ森に向かった。
直ぐ其所まで追手が来ていたが慣れ親しんだ森の中でコウヤとミーナを捕まえることは困難であった。コウヤ達の隠れた林を警備隊は通り過ぎていく。
「いったいどうなってるんだよ、ソウマがアンナ奴等に負けるわけないのに」
「それは、相手がアグラクトの兵隊だからよ……逆らえばソウマとその場にいた、ミカさんとアイリちゃんに危害が及んだはずよ」
アグラクトの兵隊に手をあげれば国家反逆罪になる。ソウマはそうならないように理不尽な暴力を受けることで家族を守っていたのだ。
「おかしいじゃないか……僕なんだよね……僕の存在が全てを招いたんだよね」
コウヤはそう言うと、手を天高くあげた。
「僕は僕のやり方で家族を守る! ウオォォォォ」
コウヤの掌からは激しい炎が天高く巻き上がった。それは村に住む全ての者が見える程に巨大な炎であった。辺りは一瞬で焼け野原になり、空気を一気に吹き飛ばす程の威力であった。
ミーナもその余りの威力に息を飲んだ。
「僕の居場所は此れで分かった筈だよね」
警備隊が森に集結するとコウヤは最後の挨拶をするために自宅に戻っていた。其処には庭で怪我の治療を受けるソウマとミカの姿があった。
アイリが近くの家に助けを求め、警備隊が居ない隙に治療をしてくれていたのだ。
「なんで、戻ってきた! 早く逃げろ」
「師匠……今まで御世話になりました。母さん、本当にごめんね……アイリ、母さんを宜しくね? 僕はもう……戻らない」
そう告げるとソウマとミカは直ぐにコウヤに駆け寄ろうとしたがコウヤは地面に向けて炎を放った。
「おばさん、母さん達の治療をよろしくお願いします。其れと僕はもう、母さん達の子供を辞めます。今までありがとう母さん」
そう言うと、とびきりの笑顔を作った。泣きそうな笑顔はきっと不細工だっただろう。
再度、空に向かい炎を撃ち放ち、庭の数ヵ所にわざと軽く焦げ目を残した。
直ぐに警備隊が来るとコウヤは警備隊の頭上に炎を撃ち出した。
「もう、きたんだね? 今から証拠を全部燃やす筈だったのに残念だよ!」
「キサマ! 親も殺そうと言うのか報告にあった通り悪魔のようなガキだな」
「僕に家族なんか無い! 全て……全て利用してただけだ!」
そう言いコウヤはミーナを連れて馬小屋に走った。そして、ワットに跨がり直ぐに警備隊の頭上を飛び越えると直ぐにカルトネを後にしたのだ。
「ごめんね……ミーナ……ごめん」
「いいよ、私はコウヤと行くって決めたんだから」
走りながら流れる涙はやがて大粒になり、空はまるでコウヤと心を分かち合うかのように雨の涙を流した。
「母さん、ソウマ、アイリ……酷いこと言ってごめん……」
雨に混じるコウヤの涙を感じながらミーナは、ただただコウヤと生きていく事を誓った。
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