放たれた炎
全ての生徒達はクレストとチェフールを直視する事すら出来なくなっていた。その光景に更に笑い声を響かせる二人の姿に一人の生徒が立ち上がり声をあげた。
「もう……もうやめてくれ! 勝負はついたんだろ、このままじゃ、コウヤが死んじゃうよ!」
それはガストンの声だった。しかし、クレストとチェフールはそれを聞き更に火力上昇呪文を発動する。
「「残念だな!俺に逆らうお前が悪いんだよ」」
ミーナは慌てて声をあげた。
「ダメ……! 早く逃げて!」
ミーナの慌てふためく姿を楽しそうに嘲笑う二人は火力を段々と弱めていく。そして火柱は小さくなり、やがて炎の中に倒れるコウヤの姿があった。
「「アハハ可愛そうになぁ、丸焦げだぜ!」」
炎のに焼かれたコウヤを見て笑うクレストとチェフール、誰もが目の前に横たわる姿を見てコウヤの生存は絶望的だと口にしなかったが感じていた。そんなコウヤの姿を見て興奮した二人はコウヤを近いて行く。
「た、だめ……お願いやめて……」
ミーナは再度止まるように言葉を口にする。 しかし、それはクレストとチェフールに向けられたモノではなかった。
「もう……ミーナ止めないで……僕まで悲しくなっちゃうよ」
会場はその言葉にどよめいた。何より驚いていたのはクレストとチェフールであった。
そして、コウヤが何事も無かったかのように起き上がると会場は更に混乱し、どよめきが交差するする事となる。
「僕はチャンスをあげたんだ……ミーナも最初は君を止めてたのに本当に残念だよ。先輩……でも言ったよね? 試合中は全て事故だって」
コウヤの言葉は、とても冷たくその場にいた全員が背筋に寒気を覚えるようだった。そしてコウヤは 掌 をチェフールに向ける。
「コウヤァァァァッ!! ダメぇぇぇ!」
ミーナの声が会場に響き渡る中、一瞬の出来事だった。
「〔グラビナス〕……僕を止めないで……ミーナ」
チェフールの腹に黒い球体が凄まじい勢いでぶつかり、球体が消滅したように見えた。
「「なんだよ、ハッタリかよ!」」
たが、それは直ぐにチェフールの体内でその牙を露にした。チェフールの腹部が急に真っ赤に染まったかと思うと次の瞬間、無言のままチェフールは倒れ込み口から血を吹き出したのだ。
「これで耳障りな声が1つになった。ワザワザ二人になる魔法を選ぶなら、もっと上手く操らないと意味ないよ」
その言葉にその場に居た生徒達がざわめいた。
クレストとチェフールは双子ではなかった。普段は上手く二人に成り済ましていたクレストであったが、コウヤの挑発と自信から傲りが生まれ、この結果を招いたのだ。けれども、バレたのは其れだけが原因では無かった。
コウヤの新たな能力、魔眼によってクレストが砂嵐を巻き起こした瞬間に色が変わりった事が分かっていたからこその結果だ。
そうでなければ、流石に怒っていても人を殺めようなどと、愚かな考えはコウヤには無かった。
しかし、クレストに其れを伝える気は無かった。
「次はクレスト、君を倒す」
そう言うとクレストに向けコウヤは掌を向けた。
「ひいぃぃぃ、ま、待ってくれ……頼むよ……悪かったよ! 反省するから頼むよ……命だけは死にたくない」
全生徒が見守る中、Sクラスのトップが命乞いをする。誰がこの展開を予想しただろうか。
「その言葉が嘘じゃないと僕は嬉しいんだけどね」
コウヤはそのまま後ろを向くとミーナの待つリングの外に向かい歩きだした。
「甘いんだよ! チビがァァァァ!」
コウヤが背を向けた瞬間にチェフールが復活しクレストと同時に先程より遥かに強い火炎魔法をコウヤに向けて撃ち放ったのだ。
会場はその余りに汚い戦い方に怒りを覚えたが誰一人声をあげなかったのだ。
其れほどにクレストの放った火炎魔法は強力であり、その力は生徒達を黙らせるのに何一つ問題なかったからだ。
「クレスト……人が燃える臭いを知ってるかい? 凄く嫌な臭いがして忘れられないんだ。その臭いの先に生きたいと願いながら死んでいく人を見たことはあるかい?」
そしてコウヤを包んでいた炎の中から新たな炎がクレスト目掛けて撃ち放たれた。炎から庇うためにチェフールが前に飛び出したがチェフールを焼きつくしたその炎はクレストを包み込んだ。
「何をしても、もう……遅いよ」
そう言うと僕は再度リングの外を目指した。
「熱いよぉぉぉうわぁぁぁぁ!」
悶え苦しむクレストは水魔法を使い炎を消そうとしたが無意味だったのだ
「それは人間と戦う為に考えられた炎なんだ。全ての魔法を焼き尽くす……その炎より強力な魔法があれば別だけど……ないよね?」
リングに向かい教員達が直ぐに上級水魔法を使い直ぐに炎を消しにかかった。それでも炎が消える様子は無かった。そしてミーナが駆け寄り炎を同じ系統の水魔法を使い消し飛ばしたのだ。
クレストは一命を取り止めたが、全身に大火傷を負う事になった。そして会場内の目は、まるで化け物に対して向けられる其れとかわらないような目付きでコウヤを見詰めていた。
いつもありがとうございます。
少し残酷な部分が増えてきました。
作者が暴走しないように気を付けながらこれからも書いていきます。
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