悲しい再会の果てに、怒りのコウヤ
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ミーナはキャメルに対して“フレイム”を1発打ち出したと会場にいた全生徒そして、キャメルは思い込んでいた。
しかし、コウヤはミーナの魔力の流れを見失わなかった。ミーナはわざと詠唱したのだ。
目的は別の魔法を無詠唱で発動するだった。
キャメルは“フレイム”を“アクアラン”で消し飛ばすと再度走りながら詠唱を始めていた。
「もう遅いわよ」
ミーナはキャメルの方を向くとそう口にした。その言葉にキャメルは無言のまま2発目の“アクアラン”を打ち出す。
「勝手に言ってなさい獣人! そして、やられなさい!」
キャメルは次の瞬間、自分の目の前の光景に言葉を失った。
リングを砕き、その下から巨大な口を開くように植物が生えてきたのだ。そのグロテスクな植物はキャメルのアクアランを丸飲みにすると更に巨大になった。
「なんなのよ……なら燃やし尽くしてあげるわ! 炎よ我が命令に従い……」
詠唱を始めたキャメルを植物の蔓が襲い掛かったのだ。
キャメルは走りながら詠唱を試みるも、その激しい攻撃に上手く詠唱を続けられなかった。
「どう、凄いでしょ? ダルメリアにも私ほど上手く植物魔法を扱える者はいないのよ。驚いたかしらって、聞いてないか?」
ミーナが喋っている間もキャメルへの攻撃は休みなく続けられていた。
「獣人、卑怯よ! 植物に戦わせて高みの見物なんて恥を知りなさい!」
キャメルの発言に会場もヤジを飛ばし始めた。
「そうだぞ! 獣人、卑怯もの!」
「汚いぞ! ちゃんと戦え!」
「戦え! 戦え! 戦え! 戦え!」
会場は戦えコールが沸き上がっていた。
「黙りなさい! アンタ達いつか戦争に行くかもしれないのよ。その時にアンタ達の常識が通用すると思ってるなら考えを改めなさい! 本当に死ぬわよ」
ミーナの言葉に会場はさっきまでと違い静けさに包まれていた。そしてキャメルがその隙に詠唱を終了したのだ。
「炎よ我が命令に従い力を解放せよ〔ギガノフレイ〕」
植物ではなく、直接ミーナを狙ったその攻撃は上級火炎魔法であった。ミーナは避けようともせず、真っ向からそれをあえて食らったかのように見えた。
「わかったわ、遊んでた私が悪いわね。少し反省するわ」
そう言うと植物達は一瞬でその姿を種にかえた。
ミーナはその種を魔法で掌に回収した。あまりに繊細な魔法にコウヤは驚いた。ミーナの魔法を使う姿はあまりに見たことが無かったが、ミーナは間違いなく国家魔導士ではなく、国家魔導師クラスの実力者だと感じさせられた。
「いくわよ! 人間、貴方がバカにした獣人の力を見せてあげる」
ミーナの体が炎に包まれと思った瞬間その炎がキャメル目掛け襲い掛かったのだ。
キャメルは急ぎ避けようとしたが、炎のまるで自我が在るかのように複雑な動きをするキャメルを追い続けていた。ミーナの体から更に激しい炎が燃え上がると炎は姿を変えた其れは炎の龍のようになった。
炎の龍はそのまま、ミーナ目掛けて飛んでいくとミーナの全身を炎の鎧が包み込んでいた。
「お望み通り、直接相手してあげるわ!」
そう言うとミーナはキャメル目掛けて移動した。
キャメルは即座に距離を取ろうとしたが次の瞬間、目の前にミーナの姿が入ってくる。そしてミーナの拳に魔力が集中していく。
「ダメだよーー! ミーナそんなの当てたらキャメルが死んじゃうよ!」コウヤはとっさに大声で叫んだ。
「もう遅いわよ! いけぇぇ」
ミーナの一撃はキャメルを会場の外に吹き飛ばした。
ミーナはちゃんと手加減をしていた。攻撃が当たる瞬間にキャメルに水の防壁魔法を使いその勢いを拡散したのだ。更に吹き飛んだキャメルが怪我をしないように背中にも風の防壁を使うという高等魔法の3連続使用を一瞬でやってのけたのだ。
会場はミーナの攻撃に言葉を失っていた。沈黙し静まり返った会場に向かってミーナが声をあげた。
「アンタ達! 文句があるなら此処に降りてきなさい。私が相手してあげるわ! もし本当の戦争ならこの場にいる全員が私の標的になるのよ! 卑怯とかズルいなんてママゴトみたいな事を言う前に先ずは力をつけなさい。いいわね!」
会場は無言のまま試合終了のゴングが鳴りミーナの勝利が決まった。次の試合まで15分の休憩が挟まれた。リングの補強が目的であろうこの時間はとても長く感じた。
コウヤは重いタメ息を吐くと気持ちを切り替えて試合会場に向かおうとした。そんなコウヤにミーナが耳元まで近づいてきて呟いたのだ。
「頑張って私の“御主人様”」
その言葉に顔を真っ赤にするコウヤ。余りの動揺にミーナは笑っていた。
「緊張は取れたみたいね? 頑張ってコウヤ応援してるからね」
ミーナはそう言うとリングにコウヤを送り出した。
リングに立ち久々にロナの姿をみた。ロナは前より身長が伸び長い髪をポニーテールにしていた。
「やあ、ロナ……久しぶりだね?」
「生きてたのね、私は死んだとばかり思ってたわ」
少し悲しそうな表情を浮かべるロナ
「心配掛けてごめんね、帰って来るのに4年も掛かっちゃったから」
「その首飾り、まだ着けてたのね懐かしいわ」
ロナは首飾りを見るなりそう言い微笑んだ。
「でも、私はこんな再会の仕方はしたくなかったわ、残念よコウヤ」
会話が終わり試合開始のゴングが鳴らされた。
「すぐに決めるわ、〔魔動撃〕装着」
ロナは直ぐに攻撃体制に入った。4年前は発動するだけでかなりの魔力を使っていた“魔動撃”の装備魔法も寸なりとこなし4年前のモノとは形も変わっていた。
ロナはコウヤが無詠唱を使える事実を一番最初に教えた相手であり、一番コウヤの行動パターンを理解している人物だった。
4年前と同じように魔法を使う前に試合を決めるつもりだった。
「ロナ、4年前はごめんね。今なら本気で戦えるから」
コウヤは包帯を取り外したように見せた。
“ロストアーツ”の指輪を使い皆には包帯を着けていないように見せたのだ。 これで体外魔力を使ってもバレない。
ミーナと一緒ならこんな真似はしなかったが、1対1では、仕方ないと今回、指輪の力を借りることにしたのだ。
「さあいくよ。ロナァァァァ!」
ロナに向かい突進するコウヤ。もしロナが真っ向から戦う気ならば岩魔法を使う、避けられたなら土魔法を使うつもりでいた。
「なめないで! 私はSクラスのロナ=アーマイルなのよ……ハアァァァァ!」
ロナは魔動撃に火炎魔法をセットするとコウヤ目掛け拳を突きだしたのだ。
コウヤも直ぐに岩魔法〔ロックシールド〕を発動させた。予想外だったのはロナの魔動撃が思った以上に威力があったことだ。
コウヤのロックシールドはかなりの完成度だったが、それ以上にロナの一撃一撃は重く凄まじいモノであった。
「コウヤ! 手加減するのは相手への侮辱よ! 確り全力でヤりなさい!」
ミーナの声にコウヤは“バレた”と言う顔をした瞬間、ロナの魔動撃の威力が更に増した。
「お互いに手加減してたんだね、ロナ。ビックリだよ。それで手加減なんてさ」
「あなたもね! コウヤが手加減してくれてるなんて嬉しいわ!」
互いに距離を取るとロナは魔動撃を両手、両足に発動し装着させたのだ。
「ミーナーー? 全力出して平気かな」
「取り合えず大丈夫じゃない? 皆自分の身は自分で守るでしょ?」
ミーナはそう言うと会場の生徒に笑いかけた。
ロナは魔動撃にそれぞれの炎・水・風・雷を装備すると一気にコウヤに詰め寄り攻撃を再開したのだ。
「待っててくれたわけね! 今回も私が勝つわ! コウヤァァァァ!」
ロナが攻撃をする度にそれを躱すコウヤ。ロナの動きは4年前より遥かに劣っていた。魔力は向上していたが体術はその遥か下で止まっているようにコウヤは感じていた。
「この4年で呼吸の合わせ方も忘れたんだね、残念だよロナ……」
ロナの手を掴みそのままロナを一回転させるとリングに背中をつけたロナに対して全力で造った水圧魔法で出来た水の剣を首に突き付けた。
「少しでも動いたら本当に刺すよ……僕は本気だ!」
「やれるものならヤりなさい! こんな大勢の前で負けるなら死んだ方がましよ!」
その言葉に苛立ちを感じた。
「勝手な事言うなよ……何が死んだ方がましなんだよ……死んだら終わりなんだよ……明日は来ないんだよ! 戦場に神なんかいない! 邪神もいない! 死んだら人間も肉の塊になるんだよ……もういい終わりだ」
そう言うとロナから手を離しリングを降りた。放心状態のロナとSクラスに対して会場からは幻滅と罵倒の声が嵐のように巻き起こり容赦ないその声にロナは涙を流していた。
「黙れーーッ!!」怒りのままに声をあげるコウヤ。
一瞬、黙った生徒達は上級生を中心に再度、罵倒を続けた。
「全ての元素は元の形となり静かに眠れ時は時間を遡り全てを無の元素へと誘いたまえ〔ラスタム〕」
「コウヤ!ダメーー!」
ミーナの声が耳に鳴り響いたが既にコウヤの魔法は会場の壁に向け発動していた。
会場を包んでいた壁や客席は一瞬で砂に替わり生徒達は慌てふためいていた。
コウヤは最後の部分をいい間違えていた。その結果“ラスタム”がちゃんと発動しなかった。
ミーナはホッと一息ついた。本当のラスタムが発動していたなら、生物も含め全てが砂になっていただろう。
更に言えばコウヤは“ラスタム”から新たな魔法を産み出した事になるのだ。
ミーナはコウヤがまだ子供だと再確認した。感情のままにその才能を暴走させたならば、世界は間違いなく滅ぶだろうと。
ミーナの心配は当たっていた。
コウヤがもし呪文を間違えなかったらすべては砂になっていただろう。
そして全てに絶望すら感じるコウヤは、次回……
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