アグラクトの先へ
二人に声を掛けてきたのは、オアシスで出会ったキャラバンの一団『カーミ』だった。
「おーい、聞こえてる。もしかして忘れちゃった? まあ、眼が見えないみたいだから印象が薄いよね」
そうコウヤに向かって喋り掛けてきたのはキャラバン『カーミ』の族長アルカだった。
「覚えていますよ。その声キャラバンの人ですよね?」
咄嗟にそう口するコウヤ。アルカは長い髪を後ろに束ね。その上から特徴的な『シュマーグ』と言う砂漠の民には欠かせない帽子のような物を被っている。そんな目立つ見た目をしている為、忘れる訳が無かった。
だが、普段から体外魔力に頼りきりのせいだろうか。見えていない事を前提に話されると焦ってしまうようになっていた。
「良かった心配してたのよ。ダンジルをちゃんと夜までに出られたかなって? 注意しても聞く耳持たない人っているじゃない。私からしたら有り得ないわ」
話が長くなりそうだ、よく見たら後から来た人達に抜かされていた。入る為の順番がどんどん遅れていきそうだったので話を切り上げる事にしたのだ。
「すみません、僕達も並ばなければ為らないので失礼します」
そう言い二人が最後尾に並ぼうと移動しようとするとアルカに手を掴まれた。
「さあ、いらっしゃい。ニヒヒヒ」
「えぇぇぇうわっ!」
意味もなく怪しい笑い方をするアルカは、コウヤ達を自分達のキャラバンの一団に引っ張り混んだのだ。
二人はアルカ達カーミのメンバーと共にアグラクトの中に入る事になったのだ。
行商人は、通常の入り口からは中に入らない。人数や積み荷の都合から別の行商人用の入り口を抜けて行くのだ。その際、兵士にキャラバンのメンバーリストを渡す。
リストを渡した後、兵士が荷物等を調べ最後にメンバーの名前を呼ぶ。その一番下に二人の名が書き足されていた。
入国する際に必要だったのでアルカに言われるがままに、名前を記入したのだ。勿論怪しくないかをミーナがしっかり確かめてくれたので問題はなかった。むしろ奴隷契約書であっても、背中に刻まれた魔族の本契約を超えるような物はまず存在しない。
そしてコウヤとミーナは自分達の手でカーミのメンバーリスト表に名を記入したのだ。
そして次々にキャラバンのメンバーの名が呼ばれ最後にコウヤとミーナの名が呼ばれ二人が返事をした時点で全てが終わった。
中に入るとアルカに頼み通行書を魔法文字に変更してもらい腕に刻んだ。
魔法文字は、行商人達が使う文字魔法であり。その行商の長だけが使うオリジナルの文字を創る魔法だ。創る事は簡単に出来るが其れを魔法文字を使う為には国家資格である“行商魔導士”の資格が必要になる。その資格が無ければ使う事は出来ないのだ。
もし使えば捕まり、国家裁判に掛けられる。そうなれば有罪は確定したも同然であり、最低でも5年から10年を監獄の中で過ごさねば為らない。
アルカは確りとした証明書持ちの行商魔導士なのをミーナが確認した為、僕達の腕にはカーミの文字が刻まれたのだ。その際のミーナの猫被りは凄いなと驚かされた。
「えぇぇぇ! アルカさん行商魔導士さん何ですか? 初めて見ました。資格とか大変なんですよね? 資格証明書何かも持ち歩かないといけないですもんね」
そして、アルカはミーナに誘導されるように証明書をミーナに自慢したのだ。その結果、国家“医療魔導士”の資格を持つミーナが本物と断定し今に至る。
因みにアルカに『カーミ』と言う名前の意味を聞いたところ、楽しむ者を差す古い言葉なのだそうだ。
「昔の人は楽しい人やすごい人を『カーミガカル』と読んでいたそうよ。私達も楽しい人ばかりが集まってるから名前を“カーミ”にしたのよ」
アルカはそう言いながら笑っていた。カーミのメンバーは皆とても気さくであった。
特に族長の“アルカ”と副長“エレーン”皆のまとめ役の“セラ”と交渉人の“シャークレ”は二人に優しく接してくれた。
「でも、本当に僕達に魔法文字を刻んでくれてよかったの?」
コウヤはアルカに確かめたくて仕方無かった。
「構わないわよ。通行の時にしか使わないし、其れに貴方には面白い物を感じるからミーナちゃんと僕ちゃんには特別にだから。普通ならしないわ」
アルカはそう言うとアグラクトの出口へと向かってくれた。
その途中でカーミの皆と少し遅い昼食にする事にしたのだ。
「好きなのを頼みな、アルカの奢りだからな」
「よ! アルカ族長。人間の器が違うね」
セラとエレーンが笑いながらアルカをからかっていた。其れは暖かい家族の様に見えた。むしろ家族なんだなとコウヤは感じた。
食事も終わりいよいよ出口が見えてきた。其れから、アルカは二人に魔法文字の浮き出させ方を教えた。
浮き出させたい時は“エレ”と言えば魔法文字が浮き出てくる。そして時間が立てば自然と見えなくなる。そう教えてくれるとアルカ達は手を振りその場で二人と別れた。
出口の兵隊には、シャークレとエレーンが話を通してくれたので問題なく通過できた。二人が其処までしてくれたのは、セラの指示だった。
カーミのメンバーの協力は二人にとって大きな物であった。何故なら、行商人用の入り口と出口には、通常の入り口と違い結界が無いのだ。
行商人の中には魔族から物を仕入れる者もいるので、全ての微量の魔族の持つ魔力に反応する結界が使えないのだ。その分リストと照らし合わせて少しでも不備があれば入国は出来ない決まりになっている。
二人の背中には魔族の魔力により書かれた紋字があるため、普通に入国していたら日が暮れていただろう。最悪は入国すら出来なかったかもしれない。
アグラクトを抜けた今、カルトネまでは1日の距離に迫っていた。
アグラクトを抜けたコウヤ達はいよいよ!カルトネの村まで後わずか!次回も読んでくださいね。
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