絶望の先にある希望2
パンプキンは音が鳴る方へ向かう事に気が進まない様子だった。明らかに音に近づくにつれ、速度は減速しているのを感じた。そしてパンプキンは足を止めた。
「コウヤさん、この先にもし戦っている人や逃げ延びた人が居たとして、どうする積りですか」
その真剣な声はコウヤに問い掛けている訳では無かった。コウヤに決断を迫ったのだ。
「どうしたのパンプキン、今は其れどころじゃ無いんだよ!」
その言葉にパンプキンは残念そうに首を左右に振った。
「今のコウヤさんの行動は死に急いでいるようにしか見えません。頭を冷やしなさい。この先は1つの判断が生死を別ける事に為ります」パンプキンはそう言うと再度、同じ質問をした。
そして僕は確りと声に出し答えた。
「無理をしに行く気も死ぬ気もない! 其れに僕は今から母さん達の居る村に帰ってる最中なんだ。今死んだら母さんに会えなくなっちゃうし」
さっきまでと打って変わりコウヤは笑った。
周囲には悪臭と死体の群れが溢れ情況も分からぬままだった。だが、コウヤの言葉にパンプキンも頷いた。その時には既に反響していた音は収まってしまった。
「私はコウヤさんの死体をミーナさんに見せる訳にまいりせんからね」そう言うとパンプキンは移動を再開した。
コウヤは死に急いでいた訳ではないが無鉄砲だったと思い反省した。そう思い返した途端、身体中に一瞬激痛が走った。
「っう……うぅ……」
その声にパンプキンは足を止めようとしたがコウヤは其れを拒んだ。
「僕は大丈夫、多分…無茶な事を仕様としたからかな? やっぱり無理は駄目だよね」そう返すとパンプキンは心配そうにしていたのは言うまでもない。
「私がコウヤさんを全力で護りますので御安心下さい。其れにミーナさんの拳で大切なカボチャヘッドに罅が入っては困りますからね」
本当か嘘か分からないがその言葉に笑ってしまった。二人が辿り着いたのは居住区の中央にある巨大な通路であった。
その通路の先には町の中でも、位の高い者達の住む居住区へと繋がる門があり其所に住人達が集まっていたのだ。
「パンプキン。あれ見て人がいる!」
コウヤが指差した先には確りと閉じられた門があった。その門を住人達が叩きながら怒鳴っている。
「早く開けろ! 奴等が其所まで迫ってるんだよ! あけろーー!」
住人達がどんなに声を出そうが門は開く気配はなく、住人達が絶望し始めていた。
「こ…これって」コウヤは愕然とした。
上層の住人達は自分達の為に門を閉ざした、そして空中に飛んだパンプキンとコウヤからは、上層の中を見るとアグラクトの討伐部隊が門を押さえている光景が眼に入ってきた。
「残念ですが。音の正体が分かりましたね。コウヤさん」その言葉をコウヤは理解出来なかった。
「それって、どう言う事」
パンプキンは教えてくれた。
「今、上層にはアンデットは居ないでしょう、元々上層のアンデットは少なかったのやも知れません」
パンプキンが語り始めた時だった。住人の一人がロープを使い門を越えようとしたのだ。男は急ぎ門の上から移動すると門に咬ませてある板を外そうとした。
次の瞬間、男の背後から真っ白な鎧の騎士が男を切り裂いたのだ。
その瞬間、鈴が鳴った。
二人が聞いた音は紛れもなく戦闘の際にロストアーツを使い戦った者が居た音であったが、其れは住人の為ではなく自分達の為だった。
そして上層を占拠したアグラクト兵達は直ぐに門を閉めると直ぐに封鎖した。其れから上層のアンデットを駆逐し始めたのだ。
反響が終わったと言う事は、上層のアンデットを駆逐した証拠であり後は日が登りアンデットが消えるのを待つだけであった。アグラクト兵はその為に下層の住人を見捨てたのだ。
コウヤは納得出来なかった。それ以上に怒りが込み上げてきた。
「パンプキン……何とか出来ないかな」
その言葉にパンプキンは無言のままだった。しかしパンプキンはコウヤを下に降ろすとコウヤを見て笑みを浮かべた。
「はぁ、仕方ないですね。まあ既に此れだけアンデットに無茶苦茶にされたのなら、住人も文句は言わないでしょう」
パンプキンはそう言うとポケットを大きく開いた。その途端、凄まじい勢いで水が溢れ出していく。その水の正体は海水であった。
パンプキンはポケットの中に入れていた海を全て外に排水したのだ。
海水は凄まじい勢いで町の中を突き進む、瞬く間にアンデット達は入り口側の壁まで押し流されたのだ。
更にパンプキンはもう片方のポケットから鮫の様な魔物を何体も海水に向かい解き放ったのだ。
「パンプキン、あれは何なの?」
「あれは使い魔ですよ。まぁ、余り使い魔にする者も少ないのですが。私は海が好きなので使い魔も多種多様なのですよ。ヨホホホホ」
驚く僕に対してパンプキンは笑いながらそう答えたのだ。
そして魔物達は海水の中を移動するとアンデット達を次々に噛み砕きながら喰らい尽くしていったのだ。
そして入り口を塞いでいたアンデット達が喰らい尽くされると凄まじい勢いで海水が外に流れ出していく。
そしてまた、残りのアンデットが入り口に詰まると魔物が喰い尽くす。何度か繰り返すうちに海水も次第に少なくなりパンプキンは使い魔達を呼び戻した。
その頃には、アンデットは殆んど動けなくなっていた。気づけば朝日が登り始めていた。アンデット達は次々に日の光を浴びて砂のように砕けていく。
そしてパンプキンはある事を口にした。
「コウヤさんが探してる少年は残念ですが生きていません」
「え……」
パンプキンは町に海水を流す前に魔眼と言う体外魔力を強化した様な魔法を使用し住人が逃げ遅れていないかを確かめていたのだ。
その際にコウヤを見つけた居住区で放置された少年の遺体を見つけていたのだ。
「すみません。コウヤさんを悲しませたくは有りませんでしたが、事実は何時かは分かることですので」
「仕方ないよ……妹は助けられたんだし……多分喜んでくれてるよね」
「ええ、きっと感謝していますとも」
「うん……うわーああぁぁぁ……」
コウヤは泣いた。大粒の涙は包帯を濡らし収まらない涙が海水に濡れた町を更に濡らした。それと同時に上層への階段に集まった生存者達は何が起きたか分からないまま生き残った奇跡に喜び歓喜の声をあげたのだ。
二人は急ぎダンジルの外に向かった。入り口には無数の死体と海水に流された町の残害が溢れていた。
そしてミーナの元に帰るとミーナは泣きながらコウヤを抱き締めた。二人と別れた後、赤子を連れてオアシスまでワットに乗り移動していたのだ。
その最中、ダンジルから凄まじい音が鳴り響いた為、近くまで戻って来ていたのだ 。
全てが終わり緊張の糸が切れたコウヤはミーナにもたれ掛かるように眠りについた。
ダンジルの悪夢は終わった。
コウヤの心に新たな傷を刻みつつ、世界は其れでも動き続ける。刻まれる時は止まらない。
次回来ていただけたら幸いです。
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