砂漠の先にある町『ダンジル』2
「うわー!すっごうぁぁぁ!」
ワットの背中から降りると直ぐに走り出すコウヤ。足元から伝わる砂の温度は驚く程の温度であった。コウヤは直ぐにワットの元に戻ってきた。
「どうしたのコウヤ。目的地は直ぐ其処よ?」
「ワットの足、大丈夫かなって」
コウヤは自分が走ってみて初めての砂漠の砂の温度を知った。ドグラ砂漠は砂と砂鉄が入り交じる。灼熱の大地だった。
ワットの背中に乗っていた二人は先方に風魔法と水魔法を重ねた防衛魔法を展開していた為、暑さは然程感じなかったが直接砂の上を進んでいたワットの事が気になったのだ。
「大丈夫よ。ワットは竜馬だからね、溶岩の上も難無く走りきるのが竜馬なんだから」
まだ、竜馬と言う物を理解していない。そんなコウヤは機会があればミーナに教えてもらおうと考えながらもホッと胸を撫で下ろした。一行は砂漠を抜けて目の前に広がる丘を進む。さっきまでの灼熱の砂漠が嘘のように涼しい風が吹いてくる。
「何で、こんなに違うのかな?」
そんな疑問を抱きながら少し進むと小さな泉を発見した。
「やった。丁度、水筒が空だったから助かったよ」
泉に近づくと一人の老婆が何やら御祈りをしていた。
「あれ、珍しい旅の方かい?」
「あ、はい。そうです」
「皆、急いで町に向かうから、此処いらで旅人に会うのは久々だよ」
「お婆さんは何をしてたの?」
「女神様に感謝の祈りを捧げていたんだよ」そう言うと老婆は女神の話を語りだした。
ダンジルは元々、荒野だった。その荒野と砂漠ばかりの土地を緑豊かな土地に替えようとした女神がいた。
女神は不毛の地になる前に何とかしようと考えた。そして、全てを1度緑豊かな地に戻すことを考えたのだ。だが其れは途方もない計画であった。
女神は一人では、叶えられないと悟ると太陽と自然の力を借りて獣人を、月と大地の力を借りて魔族を作った。
獣人達は灼熱の地でも、太陽と自然の加護の恩恵をうけ荒野を耕した。
夜になり月に照らされ不毛の大地を魔族が獣人達の耕した土地を浄化していく。
そして女神はその地に新しい種を蒔き、聖なる水で一気に緑の大地を広げていったのだ。
しかし、獣人達は自分達の森が出来ると直ぐに大地を耕さなくなり。魔族はそんな獣人達を見て、自分達だけが働くのは馬鹿らしいと女神に対して口にした。
それに対して女神は激怒し、人間の勇者と共に力を合わせて魔族と戦争をした。
長きに渡る戦争は人間の勝利となったが女神はその戦争で命を落としたのだ。其からも魔族と人間の戦いは続き、そして勇者様が魔王を撃ち破り、世界は平和になった。
魔族は心を入れ替えて人間に危害を加えないと誓い。誓いを破った魔族は天罰が下るようになった。
「これが女神様と人間が共に戦った実話じゃ、有り難い話じゃで」そう言うと老婆は祈りを終わらせて帰っていったのだ。
パンプキンとミーナは終始無言だった。老婆が見えなくなると二人はいきなり怒り出したのだ。
「我ら魔族が! 偉大なる『女神クライム』様に反旗を翻 す等有り得ない!」
「そうよ! 私達、獣人がクライム様に反抗するなんて断じて有り得ないわ!」
二人の凄まじい怒りにコウヤは驚いた。そして二人から真実の女神の姿を聞く事になった。
女神クライム、大地と自然を緑豊かな土地に替えようとして獣人族と魔族と共に枯れ果てた大地を耕した。それを面白く思わなかった種族がいた。
人間である。
人間達は荒野を数年で緑の土地に替えたその事実に、恐怖を感じていた。人間が争い世界が枯れるのは、当たり前の事であり。人間達はそうして、領土を取り合い国を広げてきた。
その常識を変えようとする女神が邪魔だった。
女神が緑を増やせばその土地に新たな人間が住み町を作り発展すれば新たな国が出来る。其れが人間達は許せなかった。
そして戦いは起きたのだ。
最初に人間達は女神に対して話し合いを求めたが魔族が其れを止めた。代わりに女神の使者として魔族が数名、人間の元に向かうが帰っては来なかった。
それを心配した女神クライムは獣人や魔族が止めるのも聞かずに人間達の元へ出向いたのだ。女神が見たのは、絶望と言う言葉では表せない光景だった。
使者として出向いた魔族達が拷問に掛けられ虫の息に成りながらも必死に息をする姿であった。
女神クライムは直ぐに解放するよいに人間に問いただしたが、人間達は其れを拒んだ。人間達はこの者達が王に対して無礼を働いた罪により拘束したと言った。
女神は自身が身代りになる代わりに解放を求め。
魔族達は、外に瀕死のままで投げ出された。
魔族達は瀕死の体で皆の元にたどり着くと、直ぐに魔族と獣人族は戦いの用意をした。
そして……王都に向かい魔族と獣人が押し寄せたのだ。
獣人達は眼を真っ赤にし、魔族達は全身から黒い霧を撒き散らした。太陽の光が黒い霧に隠され、人間達は恐怖した。
その頃既に、女神クライムが拘束されて3日が過ぎていた。
黒い霧は、王都の門を軽々と撃ち破り王城迄あっという間に突き進んだのだ。
そして、魔族と獣人達は涙した……
国王の後ろに見えるレンガが剥き出しの部屋の中央。女神クライムが鎖に繋がれ身体中から血を流し、その美しい肌には痛々しい程の拷問の痕が確りと刻まれていた。
獣人と魔族は怒り狂い城内を赤く染めた。人間達は自ら犯した罪を自覚したのだ。
国王は直ぐに魔族と獣人に命乞いをした。だが、魔族も獣人も許せる範疇を越えていたのだ。
国王は急ぎ奥の部屋に逃げた。そして魔族の一人は哀しみと怒りを剣に込めて王に襲い掛かった。
「駄目ッ!! うぁぁぁ……」
女神クライムは鎖をちぎり王の前にたった。魔族の剣は止まること無く女神クライムの心臓を貫いた。
「な、何故です! クライム様ぁぁぁ」
「争いは次の争いを生みます……皆が豊かに暮らす世界に争いは無用です……」
女神クライムは皮肉にも助けに来た魔族の剣で命を落としたのだ。クライムの言葉を聞き皆は涙を流しながら王都から姿を消した。
魔族は女神クライムの言葉をその場は聞き入れたが、人間を赦す事は出来ず争う道を選んだ。
獣人は女神クライムの言葉を聞き人を怨まなかったが関わることを避けた。
そして女神クライムの亡骸はダルメリアの森に運ばれ供養された。
「此れが真実です!」
パンプキンの語る真実は人間達の知るものとはかけ離れていたのだった。
語られた真実は全ての偽りの始まりだった!
人間達の信じる真実とは……
次回は、町の中に入ります!麦を買いたいです。
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