コウヤとミーナが里帰り。デーニ村3
二人を乗せたワットが日暮れの道をデーニ村に向け突き進む。コウヤは本気で焦っていた。
聞いた話が本当ならば、この数年の間、化物は夜に活動している事になるからであった。日が暮れれば化物と遭遇する可能性があるのだ。
「ミーナこの先に段差があるよ。気を付けて!」
「わかった。ワット飛ぶわよ!」
ミーナがワットを操り、コウヤが二人に変わり体外魔力で眼の役割を果たす。お互いの呼吸が少しでもずれたなら、ワットもろとも、大怪我は避けられないであろう、その速度を維持するために二人は精神を研ぎ澄ませていた。
互いにリンクが出来るからこその信頼がこの荒業を可能にしていた。
「ハアァァァァァッ! まだまだ加速するわよワットォー!」
「グオォォォン」
ミーナの掛け声に反応しワットが更に加速していく。日が完全に暮れようとした時だった。
「ミーナ! デーニ村が見えた!」
「このまま飛ぶわ。しっかり捕まってコウヤ!」
その言葉通りミーナはワットをその場からジャンプさせたのだ。
「うわぁぁぁ!」
「確り捕まるのよコウヤ!」
ワットは森の出口から村に繋がる小さな橋を飛び越えたのだ。余りのジャンプ力に振り落とされそうになるコウヤをミーナが抱き締めて自分の方に引っ張っる。
「コウヤ、大丈夫?」
「僕は大丈夫、其れよりミーナ、その…苦しいよ」
ミーナは必死だったので形振り構っている余裕はなかった。ミーナの胸に顔がうずまり息が出来ないコウヤ。
「コ、コウヤのエッチ!」
「た、たんま、待ってミーナあれ見て! ほら村の入り口の所?」
入り口の小さな橋に一匹の犬がいた。
「イヌがどうしたのよ?」
「ミーナ、よく見てあの犬、中に入ろうとしてるのに、さっきからは入れないみたいなんだ」
ミーナは首を傾げながら、不思議な顔をしていた。
「話を誤魔化そうとしてる訳じゃないわよね?」
その時、一匹の蛙が犬の方に跳び跳ねていったのだ。
「なによ、普通に行けるじゃない。其れよりクラッカさんを探すんでしょ?」
だが次の瞬間だった。蛙が此方側に飛ぼうとすると、蛙が何かにぶつかり、引っくり返ったのだ。
「え、今確かに!」
「うん僕も見てた、嫌な予感しかしない。早くクラッカさんを探そう」
二人は直ぐにクラッカの家に向かったが、既に人気はなかった。
そんな中、ワットが何かの匂いを嗅ぎ付けたのだ。ワットが加えていたのは、外に干してあった。
ジャムの入っていた空き瓶だった。その瓶からは、まだ甘酸っぱい木苺の香りが漂っていた。
「でかした。ワットその匂いを探してくれ!」
「クリュウゥゥゥン」
ワットが匂いを頼りにクラッカを捜していく。クラッカに着いた甘い香りをワットは見逃さないようにゆっくりと進んでいく。
すると数発の銃声が鳴り響いたのだ。
二人は急ぎ銃声がした方に向かうと、再度、銃声が鳴り響いた。
そして、銃を構えるクラッカを見つける二人。
「クラッカさん!」
クラッカがコウヤ達に気づき大声をあげた。
「くるんでねぇ! おめぇ達は逃げろ!」
クラッカの元に、真っ黒な獣の群れが迫っていく。
「ミーナ、クラッカさんを連れて逃げるよ」
普段のコウヤならば以前とは違い、獣の群れならば迷わずに撃退しただろう。だが、コウヤは逃げるとミーナに言ったのだ。
「どうしたのコウヤ! クラッカさんの事なら私とワットが守るわよ」
「あれは、只の獣じゃないよミーナ、よく見て銃弾の後が在るのに血が出てないんだ」
「それって、まさか!」
ミーナとコウヤの頭に過ったのは『アンデット』
しかし、この世界には自然にアンデットは生まれない。
『ドールマスター』と言われる上級魔導士に成らない限り、死人や死獣はアンデットには為らないのだ。
二人は気づいたのだ、これは紛れもなく人間の仕業だと。
「ミーナ急ぐよ! クラッカさん、早く此方に」
コウヤの声に一匹のアンデットウルフが反応し襲い掛かった。
「うわぁぁぁッ!」
「あぶねぇ! そりゃあ!」
その時、クラッカがコウヤに向かい襲い掛かったアンデットウルフに銃を発砲した。それを合図に一斉にクラッカに向けてアンデットウルフが襲い掛かったる。
「クラッカーさん!」
「ミーナ眼を瞑って!〔光の加護よ全ての者にその恩恵を!我にその光の力を貸したまえ〕“シャインブレス”」
光が一斉にアンデットウルフを包み込んだ。アンデットウルフは光を浴びて弱まったように見えた。
「此れでも食らえ!火炎魔法」
無詠唱で一気にアンデットウルフを炎の壁で包み込んだのだ。
「今だぁぁ! ミーナ!」
「わかってるわ! ワット行くわよ!」
ワットがクラッカを口に加えるとコウヤも直ぎワットに飛び乗ると村の入り口まで走り抜けた。
そのまま三人はワットと共に村の外へと飛び出したのだ。
「コウヤ、コウヤ、クラッカさんの血が止まらないよ、回復魔法が効かないの」
「浄化魔法を早く掛けないと!」
「もう……ええんしゃよ。わしゃ長生きしすぎた。頼むから眠らせておくれ、最後に1つ出来たら家の裏にある妻の墓に行きた……」
「なら! 諦めないでクラッカさん!あと少しで、あと少しで、朝日が出るんだ、そしたら、村に入れる筈なんだ、だから」
「そうじゃ、最後に手間賃をやろう、クライムの加護が在らんことを……」
「クラッカーさん? クラッカーさん……」
「コウヤもう無理よ。息をしてないわ……」
「クラッカ……さん……うわあぁぁぁぁん」
朝日を待ってクラッカを家の裏に運ぶと其処には深い穴が掘られていた。
「最初からそのつもりだったんだね。ズルいな」
深く掘られた穴の中にクラッカを埋葬する二人。
クラッカが手渡した、その御守りは綺麗な瑠璃色の石であった。
「ミーナ、行こう。“フレイムウォール”」
村の入り口を炎で焼き付くすコウヤ。もう誰もデーニ村に来れないように徹底的に焼き付くしたのだ。
「コウヤ、私達、間違ってないよね」
「うん……大丈夫だよ」二人は、そのまま村を後にしたのだった。
コウヤとミーナは、デーニ村で眼にした、人の真実を飲み込めずにいた。
コウヤ達は、複雑な思いを胸に、村をあとにしたのであった。
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