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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第2章 獣人の森 ダルメリア
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コウヤとミーナが里帰り。デーニ村1

 朝食が終わり、二人は火の後始末を確認してから山を降りる。


 竜馬(ワット)もキノコのシチューが気に入ったのかアッサリと大皿を平らげた。


 余ったシチューは空の水筒の中にしまい。その水筒を気に入ったみたいなので、ワットの首にかける。


「くわあぁぁぁぁくあぁぁぁぁ!!」


 嬉しそうにワットが声をあげた。


「よっぽど、コウヤのシチューが気に入ったのね?」


「それなら嬉しいんだけど」


 ワットが楽しそうに近づき、その長い舌でコウヤの顔全体をペロりと舐め回した。その顔はベトベトになっており、それを見て楽しそうに笑うミーナの姿があった。コウヤが安堵の表情を浮かべながら次に口にしたのは「取り敢えず、川に寄っていい? 僕の顔ベトベトだよ……」


 一旦、山の下に流れる川で顔を洗うコウヤの元に上流から流れてきた帽子。


「なんだろ帽子?」


 お世辞にも綺麗とは程遠い使い込まれた麦わら帽子を拾い上げる。裏を見ると大切にしていたのだろう、何度も直した後がある事にコウヤは気づいた。


「どうかしたのコウヤ、何そのボロボロの麦わら帽子」


「今、流れてきたんだよ」


「ふ~ん? ちょっと見せて直した跡が沢山あるわね?」


 その事から、この麦わら帽子は誰かが誤って落としてしまった物かも知れないと言う話になり、二人は帽子を届ける事にしたのだ。


 この川は上流の湖から湧き出ている水が源泉であり。此所より上流に村は1つだけであり。二人は急ぎ村を目指し動き出した。


「コウヤ、此れから向かう村は『デーニ』って、いう村でね。古くから獣人と交流がある村なのよ」


「ミーナは行ったことあるの?」


「何回かあるわ。デーニの焼き菓子が凄く美味しいのよ」


 ミーナはデーニの村について話してくれた。


 デーニの村はクライムの泉と言う場所に神がいると信じて独自の信仰を貫いてきた村である。 未だに無事なのかは近くに獣人の森が在るからであり。ダルメリアの領域に入っているデーニ村は王都からの攻撃を受けずにいたのだ。


 ダルメリアの森の外である人間界に何故、ダルメリアの領域が在るかと言えば、ミーナの事件が発端で争いが起きようとしていた時まで話は遡る。


 獣人と人間の争いが起きれば、獣人との全面戦争になるのは必至だった。

 其れを避けるべく王国はダルメリアに使者を送り、平和協定を結ぶ事を提案したのだった。


 そして、使者を勤めたのは、ミーナを助けた島人だった。ミーナの命の恩人であり、村長と話した事のある島人はダルメリアの意思に触れたのだ。そしてダルメリアはその申し出を受け入れたのだった。


 2度目の獣人と人間の平和協定が結ばれ、ダルメリアの外にまで立ち入り禁止区域つまり、ダルメリアの領域が広げられる事になり、その際にデーニ村もダルメリアの領域に含まれたのである。


 しかし、獣人達の予想だにしない事態が起きた。


 デーニの村長が手土産を持参し、ダルメリアに足を運んできたのだ。


 獣人達はその行為を危険視したがダルメリアの村長とデーニの村長は獣人が作った酒を酌み交わし、手土産を互いに口にした。


 それは互いの信頼が生まれた事を意味し、其れからは御互いに助け合い共存する事となったのだ。


 それに対して王国は猛反対した。そして直ぐにデーニの村に向け軍隊が派遣させる事態に発展する。しかし、デーニに集まった獣人達を見て兵士達を震え上がる事になる。


 デーニまでの道を埋め尽くす獣人達。大量の大型獣人達は夜の月明かりに眼を輝かせ、その瞳は血に餓えた獣のように兵士達を見つめる。


 状況が緊迫する最中、軍は王都に引き返す事になる。ダルメリアに向けて軍が動くのを確認した隣国が王国に対して、宣戦布告をしたのだ。


 そして隣国と王国は戦争に発展する新たな血が大地を潤すことになるのである。皮肉にも二国の戦争こそ、コウヤの父が命を失う事になった戦争であった。


 話が終わり、道なりにデーニ村を目指す二人の前方から、とぼとぼと歩いてきた一人の老人。


「おお、そいつは儂のじゃ」


 麦わら帽子を見るなり男はニコニコしながら、此方に駆け足で近づいてきた。


「すまないが、そいつを返して貰えんかい、大切な物なんじゃ」


「よかった。持ち主を探してたんです」


「すまんのう、釣りをしてたら、いきなり風が吹いて帽子を持ってっちまったんじゃよ」


 男は笑いながら、帽子を受け取った。


「そうじゃ。儂の店に来ないか? これでも儂は腕がいいんじゃよ、さあさあ」


 二人は言われるままデーニ村にある老人の店に寄ることになったのだ。その頃には太陽が真上になり、昼を知らせてくれていた。


 男が厨房に入るとフライパンがまるで生きているかのように踊りだし、料理がフライパンの上を舞う。見ているだけで心を踊らせてくれた。


 そして料理を次から次に作っていく。その味付けは、素朴でありながら、存在感を確りと口の中に広げる物ばかりであった。


「旨い! こんなの初めてだよ」

「本当に美味しい、ほっぺが落ちちゃいそう」


 二人の表情を見て男も笑った。


「引退しても、店をそのままにしといてよかったよ」


 この老人の名はクラッカ。店を閉め料理人を引退していたのだ。


「何で辞めちゃったの?こんなに美味しい料理が出来るのに?」


「ありがとうよ。でもなぁ、大切な妻が死んじまってな、この店は二人でやって来たんじゃよ」


 クラッカはそう言うと、優しく微笑んだ。


「そうじゃ、デザートがあるんじゃよ。妻が生前に作った、木苺のジャムを使ったタルトなんじゃ、昨日作った物だが1日たっても旨いんじゃ」


 そう言い出されたタルトは甘酸っぱくて心に残る味だった。


「此が妻の得意料理でなぁ、皆喜んで食べてくれてたんだよ。だがそれも終わりなんじゃ、もうジャムがなくてな」


 最後は寂しそうだったが、クラッカは笑顔で二人を送り出してくれた。


 次に目指すのは、下流の町『タライム』


 ワットにもお昼に朝の余りのシチューを与えた。


「さあ、行こうコウヤ、急がないとまた、野宿よ!」


「そうだね!頼むよワット」

「さあ! いくぞ~」


 二人はワットに跨がり走り出したのだ。

コウヤ達は、クラッカと出逢い素敵な料理を味わった。


そして、コウヤとミーナは、ワットに跨がりタライムを目指すのであった。


タライムの関所の先に広がる世界をコウヤは、まだ知らない


読んでいただきありがとうございます。

感想や御指摘、誤字などありましたらお教えいただければ幸いです。

ブックマークなども宜しければお願い致します。

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