紡がれる世界3
図書室での会話が終わり、ランタンは静かに息を吐く。
「1つ謝らねば為らない事が御座います。コウヤさんのお父上をお救いする事は叶いませんでした。コウヤさんのお父上である“グラン=トーラス”は自身の記憶から、ディノスと戦場にて刺し違える道を選ばれました……この世界にディノスは生きておりません」
コウヤはランタンの言葉を耳にした直後、頬を無意識に流れる涙に気づかされる。
「あれ、変だな……何で涙が出るんだろ。僕は父さんを実際には知らないし、会ったこともないのに」
ランタンはコウヤにある事実を伝えるべきかを悩み、そして、口に出そうとした言葉をのみ込んだ。
もし、コウヤの父親であるグラン=トーラスが健在であった為らば、アイリの存在が消える事となる。
しかし、コウヤはアイリの待つミカソウマへと帰還することを決めた。
その時点でグラン=トーラスの未来は既に決まってしまっていたのだ。
「コウヤさん。時間を使いすぎました、皆が王である貴方を待ちわびています。アサミが案内いたしますので会場に足を御運びください。皆に会えば記憶が其れを教えてくれることでしょう。私も後程、合流致します」
図書室を後にする二人。そんなコウヤにアサミが質問を投げ掛ける。
「コウヤさ……コウヤ王、私の中にある記憶は本当に自分の物なのでしょうか……」
寂しそうであり、儚げにそう口にするアサミ。
「えっと、王は付けなくて良いよ。僕の中にも僕の知らない記憶がある……出会った人達と過ごしてきた時間に変化が現れてるんだと思う。アサミさんの事も少し記憶に重なってきてるんだ」
「なら、コウヤさんと御呼びしますね。私にはコウヤさんが魔界にやって来た日からの記憶がハッキリあります」
そう語られた瞬間、コウヤの頭の中に新たな記憶が重なりだす。
「凄く不思議な感覚だよ……何て言うんだろ」
頭の中で記憶が混ざり合うとまるで世界が回るような感覚に足を止めるコウヤ。
「大丈夫ですか! 少し休みましょう、実は私も同じ経験をしました。同時に2つの時間の記憶が重なると起こる現象みたいなんです。ずっと昔に死んだ筈の記憶も有るので私も苦労しました……」
その場で座り込み、静かに呼吸を整える最中、アサミはコウヤにランタンの話を聞かせた。
其はアサミの義理の父親であるジャック王、ランタンが【時の超越者】を探しだし、魔界に全ての“時の超越者”を集めた時の話であった。
ランタンは魔界に2つ存在した【時の超越者】が他にも存在する事を調べ、コウヤの生まれる以前から其れを探しだし、コウヤに授ける事を決めていたのだ。
ミカソウマとコウヤの存在が消えぬよう、そして、帰還するであろうコウヤとランタンの生きる時代のコウヤが同様に強くなるように、そう考えて年月を重ねて来たのだ。
コウヤがアグラクトで生まれた頃には多くのミカソウマの戦士達が記憶を得て魔界に集結し、ランタンの指示の元に力を蓄えていったのだ。
話が終わるとコウヤの脳内には無数の記憶が絡み合い、自身の辿ってきた道を理解する事となる。
休憩を終え、立ち上がるコウヤとアサミの元に元気よく駆けてくるアイリとメイド達。
「御兄ちゃん! 遅いよ、アサミちゃんも早くおいでよ。皆待ってるよ」
アイリとアサミに連れられたコウヤは用意された会場へと向かう。




