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紡がれる世界1

 早々に着替えを済ませたコウヤは大浴場を後にする。


 そんなコウヤの姿に溜め息を吐くシアン。


「やっぱり受け入れられないものなのかぁね?」


 そう口にすると奥に腰掛けていたブラッドマンが煙草を手に煙を吐き出す。


「フゥ……そうでしょうね。何せ、以前の私はコウヤ王の御友人と仲間、幹部を手に掛けましたから……この場で武器を取らなかったこと事態が驚きでもあります」


「ブラッドマン? 因みに脱衣所は禁煙だぁよ。コウヤは実に素晴らしい王様をしているじゃないかぁね。あの場で武器を取りにいけば、全てはぶち壊しになるんだぁねぇ……賢い選択をしたと思うぅよ」


 そんな会話が終わりを迎える頃、コウヤはランタンの元に向かっていく。


 すれ違うメイドにランタンの居場所を聞き、図書室へと向かうコウヤ。


 両開きの扉を開き、図書室へと入る。


 “ダン”と扉が閉まる音が室内に響き渡ると「扉は静かに閉めてください」と女性の声がカウンターから発せられる。


 声に反応し振り向くコウヤ。


「図書室では、扉も確りと優しく閉めてくださ……コウヤ王! 私ったらいけないわね」


 慌てて頭を下げ、そう語る清んだ紅い瞳をした女性、美しい黒髪を後ろに束ねており、コウヤは自身と同じ紅眼であると直ぐに気づく。


「いや、僕こそ、扉を確りと閉めるべきだったから、えっと、名前は?」


 コウヤの言葉に項垂れる女性。


「私がわからないの? 確かに髪型を変えたけど、そんなに印象が薄いのかな……それとも、今の発言を怒っているの?」


 初対面であろうコウヤに対して女性は知り合いのように喋り掛ける最中、図書室の奥からランタンが顔を出す。


「あ、御父さん」と女性が声をあげる。


「アサミ、信じられないだろうが、コウヤさんにはお前の記憶は無いんだよ。しかし、時期に時間の流れが記憶に流れ込む事でしょう」


 落ち着いた口調でそう語るランタン。


「まってよパンプキン、“アサミ”って、まさか」


 驚き声をあげるコウヤに頷くランタン。


 ランタンはコウヤにミカソウマがどの様な状況かを語った。


 時空間でコウヤ達と別れたランタンはアサミ=クレストラ=ランタンが生きていた時代へと舞い戻るとある決心を胸に行動を開始したのだ。


 ランタンに取って忘れる事の出来ぬ、アサミが襲われるその日、ランタンは魔界の外で一晩を寝ずに過ごしたのだ。


 魔界に近づく人間は通常はいない時代、そんな中、姿を現した憎き存在“ユハル”である。


「人間……いぇ、ユハル。貴方には大変に御世話になりました……私は自身の手で2度も貴方を殺めねば為らないとは実に不快です」


 ユハルの前に姿を現したランタンの手には“巨大な大鎌(デスサイズ)“が握られ、周りをランタンの使い魔達が囲む。


 怯えるユハルに対して、ランタンは悩むことなく、鎌を首すれすれまで降り下ろす。


「今すぐ消えなさい……次に魔界に近寄れば、頭が自身の足元に転がる事になりますよ。確りと覚えておいてください」


 ランタンはそうユハルに語ると記憶に魔法を掛け、アサミの存在を忘れさせたのだ。


 その日から、ランタンは流れる時代を変化させるように行動を開始する。


 そして、ランタンのユハルに対する行動は思わぬ変化を世界に与えた。


 ユハルの一件から数十年の年月が流れた世界にある大事件が起きる。


 本来ならば、ラシャにより1度は滅ぼされたエルフの国【エレ】、その原因となったラシャの父、バルト=ノラーム王が人間の国“クレアルバディア共和国”からの宣戦布告を受け入れたのだ。


 ユハルの存在が無くなり、自身の行いを恥じたバルト=ノラーム王はラシャが生まれたと同時にエルフを奴隷とする国の1つ“クレアルバディア共和国”へと使者を向かわせ、奴隷禁止を訴えた事が始まりであった。


 この戦いがエレの運命を再度、悲しみへと誘う事となる。


 【クレアルバディア共和国】

 【デノモルグルド帝国】

 【アグラクト王国】


 エレを滅ぼさんとした、カラハ大陸の三大国家の同盟を結ばせる結果となったのだ。


 エレにランタンが辿り着いた時、既に多くのエルフ達が死に絶え、バルト=ノラームも片腕を失い、何日も食事をしていないであろう、ふらついた足でランタンの前に歩み寄る。


「魔族か……エレはもう終わりだ。明日の朝には決着がつく……立ち去るがよい」


「申し訳ありませんが、そうなると私がラシャに叱られますので」


 ランタンの言葉に全てを悟ったバルト=ノラームは軽く微笑む。


「ラシャは生き残るんだな……よかった、俺がバカだったんだ。魔族よ、ラシャを……あわよくば、生き残った皆を頼まれてはくれぬか。頼む」


 エルフがプライドを捨て頭を下げる意味をランタンは知っていた。


「誰一人、置いては行きませんよ。ヨホホホホ」


 その日の夜、忽然とエレは森ごとカラハ大陸から姿を消したのである。

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