掴むべき未來5
コウヤの刃を目の当たりにして、慌てて尻餅をつくチェルバラン。
その目は完全に怯え、体は小刻みに震えていた。
「な、なんで、なんで僕に逆らうんだよ! 僕は選ばれたんだ、力を手に入れたのに、なのになんで……なんで誰も僕を助けないんだ!」
叫び声をあげるチェルバランに対してカカが目の前に黒く焼け爛れた合成獣の体の一部を放り投げる。
「悪いけど、貴方の友達は皆、灰か炭になったわ、貴方を助ける存在は此処には居ないわ」
その瞬間、全ては終わりを告げたのだ。
幼きチェルバランには未来から来たチェルバランより、授かった合成獣を使う他に反撃の手段は存在しない。
しかし、チェルバランは最後の足掻きを口にする。
「ぼ、僕を殺していいのか……知ってるんだぞ! 僕が居ないと未来は、人類もだ! いなくなるんだろ!」
表情を一変させ、強く語るチェルバラン。しかし、コウヤは冷たい表情を浮かべたまま、刀を振り上げた。
「僕達は覚悟を決めてこの場にいる。何を語ろうが、もう遅いんだ……お前は未来に生きてはいけない存在なんだ! チェルバランッ!」
刀を振り抜くコウヤ、全身がチェルバランの反り血で赤く染まり、刀から垂れる赤い滴はまるでチェルバランの最後の涙のようであった。
コウヤは刀を振り抜く際にミカソウマに残した多くの仲間達と死んでいった友、そして、妹のアイリの事を思いながら心で泣いたのだ。チェルバランの存在が作り出した未来であれば、自分自身の存在すらも危ぶまれる。
そんな中、コウヤは皆が消えてしまう事を悲しみながら最後までチェルバラン討伐を成し遂げたのであった。
無惨に切り捨てられた幼き亡骸に息はなく、恐怖と絶望を与え続けた男、チェルバランは長きに渡る支配の末に、人生をコウヤ=トーラスとミカソウマの戦士達により討ち取られ幕を閉じたのだ。
全ての終りはコウヤにとっての終りでもある事実を理解していたコウヤはその場に座り込み、血にまみれた床に刀を置く。
その姿にランタン達は全てが終わりを迎えた事を悟った。
「ランタン、僕は皆に嘘をついたんだよね……チェルバランを討ち取った今、ミカソウマは存在しなくなる……未来に僕達の生きた証しすら無くなったのかもしれない」
額を片手で覆い、そう呟くコウヤは大粒の涙を流し、自身の決断が本当に正しかったのか、他に道があったのではないかと自問自答する。
そんなコウヤに言葉を掛けられずにいたランタン達、しかし、ゼロは違ったのである。
「コウヤ王。そろそろ、この場から立ち去りましょう。目的を果たした今、長居は無用です」
ゼロの言葉に頷くコウヤ達。
「ゼロ、1ついいかな、未来が変わったとして……僕達は僕達自身でいられるかな」
「コウヤ王、何か勘違いをされておりませんか? 未来とは数多に別れる無数の道の1つに過ぎません。築かれた未来が無くなることは決してありません、今いるこの世界もまた、異世界と呼ぶべき別の次元なのです」
ゼロはコウヤに未来と過去が必ずしも同じではない事実とコウヤのいた世界が未来の1つに過ぎない事実を語った。
「つまり、僕がしてきた事は……」とコウヤが喋りだした時、ゼロが其れを止める。
「意味のある行動です。この世界はコウヤ=トーラスと戦士により、未来を手にしたのです。人々は破滅の道を歩むかもしれません、ですが、他者の描いた未来の破滅に従うより、ずっとましだと思います。貴方は間違いなく絶望の世界を壊したのです」
コウヤはゼロの言葉を信じ、頷くとその場で時空王の力を使い時空間のゲートを開く。
「ゼロ一緒に来てくれ、君の言葉を信じるよ。皆、ミカソウマに戻ろう。僕達の生きる世界に」
ランタン達はコウヤの言葉に頷くとゲートの中へと入っていく。
コウヤ達はミカソウマへと歩みを進めていくのであった。




