掴むべき未來1
ミカソウマの進軍を前にゼロは少数の方が効率的に動ける事実とゼロ自身もコウヤ達の案内役として同行する事を決める。
コウヤはゼロの意見と同行する事を認め、ランタンのポケットへ部隊を待機させる。
行動する小隊を7人とし、コウヤ、ランタン、ゼロ、カカ、ミーナ、ラシャ、源朴とポケット内に待機している大部隊が時代を逆行する事となる。
ゼロは皆から離れた場所でコウヤに対して、時代を変える事により生じるであろう歴史の変化について語った。
「コウヤ王、仮にチェルバランを完全に世界から消し去り新たな歴史が刻まれたとします……その際に貴方を含む全ての人が存在する保証はありません、コウヤ王……貴方はそれでもこの進軍を行うのですか?」
その言葉にコウヤは少し申し訳なさそうに受け答えをする。
「皆には申し訳ないと感じてるよ。それでも……チェルバランが存在し繰り返される悲しみを誰かが終わらせないといけない、その役目が偶然、僕に与えられた……僕はそう考えているんだ」
嘘偽りなき真っ直ぐにして清んだ瞳を向け、そう語るコウヤの姿にゼロは眼を瞑り頷く。
「コウヤ王、僕も貴方の考えに未来を見いだしたいと考えます。チェルバラン……全ての悪夢の始まりを断ち切りましょう」
会話を終えるとコウヤは準備を整え待機するランタン達の元へと向かう。
皆が集まっている事を確認するとコウヤはロストアーツ【時空王】の力を解放する。
凄まじい突風が渦を巻くように大地を削り、空気が捩じ曲がり次第に歪みをおび、空間が円を造り出していく、時空の切れ目が完全に安定するまでの数十秒を全員が瞬きを忘れたように食い入るようにして見つめる。
巨大なゲートが開かれ、ゆっくりと空気を吸い込みながら次第に縮んでいく。
コウヤを筆頭にゲートの前に立つ皆は改めて覚悟を決める。
「僕が先に入るからゲートが閉じる前に皆、中に入って。中に入ったら絶対に離れないで」
その言葉に頷くとコウヤはゲートの中へと足を踏み入れ、その後方をランタン達が歩いていく。
暗闇の中に嵐が吹き荒れたような空が広がり、地面を見れば、草原を吹き抜ける清々しい穏やかな風に靡く草花の姿があり、全てが入り交じった不思議な光景が広がっている。
「不思議な光景ね? 綺麗なのに薄気味悪いと言うか、何だか……おかしな世界ね」
ミーナの言葉に皆が頷き、皆が周囲を警戒しながら先に進んでいく。
時空間と言うべき世界は次々に季節が変わり、気づけば空は朝になり、次の瞬間には夜になる。
数歩、歩く度に季節が変化する環境に次第に皆の感覚が麻痺し始めていく。
そんな最中、コウヤ達は自身の経験し、勝利を勝ち取った数多の戦闘が空間内に広がる光景を目の当たりにする。
「此れは、アグラクトの戦闘だ! あっちはブラッドマン……ロナ……それにクウヤまで……」
そう口にするコウヤは拳を強く握り、空間内に映し出される光景を振り払うように大きく呼吸をすると険しい表情のまま、前へと進んでいく。
時空間がまるでコウヤ達の存在を拒むように死んでいった仲間達の姿を写し出す、しかしコウヤは止まることなく突き進んでいく。
『時空王……まだ僕を恨んでいるんだろうが、今は従え! お前が何をしようと止まる気はないッ!』
コウヤが心でそう告げた瞬間、時空間に光が溢れ、風が優しく流れていく。
光の扉が突如、姿を現す、その目の前に佇む一人の老人がコウヤに会釈をすると自然と扉が開かれていく。
「我は貴方を王と認める、数多の無礼を御許しくださいませ、コウヤ王」
「お爺さんが【時空王】なんだね 、瑠璃色の王に消されたと思っていたよ」
時空王は優しく微笑みを浮かべる。
「如何にも、私が時空王です。コウヤ王を試した此度の行いには深く謝罪いたします。そして、今日より真なる忠誠を捧げましょう」
時空王がそう呟いた瞬間、コウヤ達は光の扉へと吸い込まれていく。




