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夜を照らす輝き7

 クレムドルと部下である紅目達は激しい怒りと共に血塗られた玉座に腰掛けるザリアとその横に立ち笑みを浮かべるチェルバランに刃を突き立てる。


 誰が終わらせるであろう、悲しき争い、クレムドルは王ザハールがこの現状を目の当たりにすれば、どれ程悲しむかを考え武器を握る。


 闘志と殺意が入り交じり、全ての感情と思考が掻き回されていく。


 ザハールを救いたいと願い、噂は偽りであると考え、討伐軍に参加したザリア。


 ザハールの力に成りたいと考え全てを敵に回しても紅目を救おうとするクレムドル。


 思いはすれ違い、今、目の前の敵を倒さんと勇み立つクレムドルに対し、チェルバランは自身の影から大量の影の戦士を呼び出していく。


「アハハハッ! 此れだ……此れが望だった! 今やザハール、いや……紅目は世界から疎まれる存在と成り下がり、ザハールの夢と希望は間も無く打ち砕かれる……アハハハッ!」


 高笑いを浮かべ、まるで影を操りながら、演奏を奏でるように腕を動かすチェルバラン。


 苛立ちがクレムドル達の冷静さを失わせていく。


「貴様らガァァァッ!」


 その瞬間だった……クレムドルの背後から突如、影の戦士と影の騎士が現れ、漆黒のランスが襲い掛かる。


「グアァァァ!」


 背中に刻まれる抉られ傷、一瞬、途切れそうになる意識、歯を食い縛り、両足に力を込めて体を反転させる。


 振り向き様に巨大斧(ビッグアックス)で影の戦士達を凪ぎ払う。


 “パチパチパチ”と手を叩くチェルバラン。


「実に素晴らしい運動神経、と言うよりは、戦場の中で培った感性と言うべきですか? ランスが当たる瞬間は、お見事でしたよ」


 ランスが背中に突き立てられた瞬間、微かに角度を変えることで急所(心臓)への一撃を回避していたクレムドル。


 しかし、その傷は浅くはなく、流れる血液は次第にクレムドルの意識すらも(かす)ませていく。


「本当に紅目は化け物ですね? 多くの戦いの中で、そこまでの深傷を負いながら未だに意識を保つなど、本当に末恐ろしい……ふっふっふっ」


「き、貴様……卑怯な、自身が戦わず、背後からの奇襲にて勝利をつかんでなんになる。恥を知れ……ハァハァ」


 呼吸を保ちながら、チェルバランを睨み付けるクレムドル。

 その目を気に食わぬと言わんばかりにチェルバランは腕を前に動かした。


 クレムドルの周りを護るように展開していた紅目の兵士に突如襲い掛かる黒い塊、兵士達は瞬く間に倒れ込み、動かなくなる。

 兵士の肌の爛れは酷く口元は腫れ、中と外から同時に炎症を引き起こした事が窺え、医療の知識のないクレムドルにも、疫病(えきびょう)に似た病状を目の当たりにすると、直ぐに危険だと理解する。


「この……! 貴様……なんと言う恐ろしい力を、貴様は世界を滅亡させる気なのか」


 チェルバランは首を傾げると悩む素振りを終わらせると無表情でクレムドルを見つめる。


「詰まらないことを気にするなぁ? 本当に……イライラする……だから、先に消えて貰おう、アハハハハハ!」


 チェルバランは腕を前に出し、闇の塊をクレムドルに向けて撃ち放つ。


 覚悟を決め、一言「無念……」と呟くクレムドル。


 しかし、闇の塊はクレムドルに当たることはなく消し飛ばされる。


 クレムドルの前に姿を現したザハールはチェルバランを睨み付けると無言でクレムドルの治療を開始する。


「おやおや、久々の再会をゆっくりと語り合いたいのに、相変わらずですね、ザハール魔導師長?」


「チェルバラン……貴様をどれ程恨んだらことか……だが、今はお前に構っている余裕はない、大丈夫かクレムドル?」


 クレムドルの傷を回復するザハールの行動に苛立ちを隠せないチェルバラン。


 そして、チェルバランは仕方ないと諦めたように左右に首を振ると徐に指を動かそうとする。


 しかし、その瞬間だった。


 クレムドルはザハールに「俺ごと奴を飛ばせ」と小さく呟いた。


 ザハールは頷けずにいた。


 そして、その瞬間は直ぐにやって来きたのである。

 クレムドルはチェルバランの指の動きに合わせて、胸に忍ばせていたナイフを強く握ると勢いよく投げ放つ。

 ナイフを避けるであろうチェルバランに対して、回復が済んでいないその体で押さえに掛かる。


「な、この死に損ないが! 離せ、離せ、離せェェェッ!」


 確りと掴まれたチェルバランの体は動くことが出来ず、更に影の戦士に攻撃をさせれば自身の身まで危うくなる状況となっていた。 


「俺の体は長くはコイツを押さえられそうにない……ザハール様、早く……早くしろ、ザハールゥゥゥッ!」


 クレムドルの叫びにザハールは涙した。


「すまぬ……クレムドル=トーラス。全ては私の無力さ故に、許してくれ……うわぁぁぁぁッ!」


 ザハールの無詠唱が発動し巨大な光のゲートが開き、凄まじい風がクレムドルとチェルバランを吸い込んでいく。


「 クソォォォォッ! こんな、こんなッ! ザハール、絶対に赦さぬ赦さぬぞ!」


 チェルバランの最後の叫びがゲートと共に消えていく。


 城内に残されたザハールとザリア、悲しみはまだ、消えようとはしなかった。

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