表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
334/362

夜を照らす輝き2

 王は無言のままにザハールの娘を指差す。

 それを合図に拷問官が娘を再度、宙吊りにする。


 その光景に激怒したザハールは魔力を開放しようと怒りで途切れそうな精神を集中させる。


 しかし、その瞬間……チェルバランが動いたのだ。

 ザハールの両手首にリングのような枷を取り付ける。


 リングは魔力を空気に中和するロストアーツであり、本来冷静な状態のザハールならば、リングの仕組みに気づけただろう、しかし、未知のロストアーツと冷静さを失ったザハールは事実に気づく事はなかった。


 ただ、無力であると言われんがままに目の前で拷問に苦しみ、涙すら流さなくなる娘の姿にザハールは声をあらげた。


「頼む! やめてくれ……娘にはもう何もしないでくれ……なんでもする、この身を捧げる! だから」


 ザハールの必死な訴えと涙を流す姿に王は「滑稽だ」と笑みを浮かべ、拷問官に指示を出し、ザハールの目の前に娘を下ろさせる。


 幼き肉体に刻まれた消えない傷、顔は熱した鉄の棒を当てられ、顔半分に渡り、皮膚(ひふ)爛れ(ただれ)笑窪(えくぼ)が自慢の頬と口は異様な形にくっついてしまっている。


「……っ、ぅぅぅううぅぅぅ!」


 歯が砕けるであろう力で歯を食い縛るザハール。


 最後の瞬間、娘は父であるザハールを見て無意識に笑みを浮かべる。

 焼かれた頬は微かに血が(にじ)み、一筋の真っ赤な血液が滴り落ちていく。


 無情……常軌(じょうき)(いっ)した尋問という拷問が広がる世界は残酷であり、全てが暗闇に飲み込まれるように視界から希望と言う輝きを消し去っていく。


 自分に問い掛けるザハール……「私は何の為に国に身を捧げたのか」と、目の前に広がる世界に答えなど有りはしなかった。


 ザハールは最後の力を振り絞り魂を焦がすように魔力を限界まで体内に集め圧縮する。

 自身を器とし、魔力を体内で破裂させようと考えたのだ。


 霞む眼で娘を見つめるザハール。


「助けられなくて、ごめんな。愛してるよ……」


 ザハールが娘の名を口にしようとした瞬間、チェルバランは下卑た笑みを浮かべるとザハールの腕から枷を消し去ったのである。


 コントロールを失った魔力は次第にザハールの意思とは関係なく体内から溢れだし暴走する。


 チェルバランはザハールの魔力を暴走させると姿を消し去り、その場に残された王と拷問官達はザハールから流れ出す禍々しい威圧感と激しい怒りの感情に恐怖する事となる。


 しかし、その恐怖も一瞬の物であった。


 ザハール本人すら制御できない程の魔力を止める術など有りはしなかった。


 水風船が弾けるように大概に放出された魔力は王と拷問官だけでなく、ザハールの娘と王国すらも消し飛ばす。


 城の地下から天に向けて放たれる魔力は夜を光で照し、数秒の輝きは灼熱の波となり全てを燃やし尽くしていく。


 世界を手にしようと恐怖と力で隣国を食い散らかし、大陸すらも喰らい尽くそうとした大国が一晩にして消滅したのだ。


 その事実に世界は震えると瞬く間に戦禍は大陸へと広がっていく、そして、チェルバランは、わざと紅眼の民を世界へと逃がしたのだ。


「いいかね、世界に知らせよ! 紅眼のザハールは最強であり、希望だとな……全てはザハールの力に依る物なのだから……」


 世界は再度、紅眼のザハールの名を知る事となる。

 何時しか世界はザハールを紅眼の悪魔と称し恐れ始めたのであった。


 国を離れ、旅をしていた最中、大国崩壊の話を聞き、耳を疑う女性の姿、ザハールのもう一人の娘であり、後の紅眼の悪魔ザハールを討ち取る女勇者であった。


 国を愛し、誇りを胸に堂々たる姿を見てきた娘はその事実に絶句した。


「皆……ごめん。私は行かなくちゃいけない!」


 パーティーメンバーにそう告げ、動き出す娘、父と娘の更なる悲しみが紡ぎ出されていくのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ