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チェルバラン……最悪の始まり5

 レナンドは言われるままにDNAを警察官に渡す。


 犯人を憎むレナンド、しかし、警察官から告げられた真実に唖然とさせられる。


「レナンド=ブラウンさん、貴方には研究所の爆発に関する話も聞かねばなりません」


 申し訳なさそうにそう切り出す警察官。


 レナンドの最初に感じた爆発は研究所の物であり、研究所内からは生存者は見つからず、薬品に引火した炎は次の日の朝まで消えることは無く燃え続けたのである。


 心が掻き回されるような思いを感じながらレナンドは警察官の質問に答えていく。


 退院するまでの一週間と言う時間はレナンドに取って絶望でしかなかった。

 1日が一年にすら感じさせられる中、レナンドの精神は次第に蝕まれていく。 

 多くの報道機関はレナンドを全てを失った【被害者】として追い掛けまわし、別の考えを持つ者達は爆破の犯人ではないのかと【加害者】としてレナンドを追いまわされる事となる。


 レナンドは人知れず、病院の厨房から外に抜け出すと家族と一緒に過ごした家の側まで歩みを進めた。


 未だにレナンドの自宅跡に群がる報道機関の関係者達。


 そんな彼等の元に病院からレナンドが消えた事が伝えられ一斉に移動を開始する。


 警察すら居なくなった跡地は瓦礫が山積みにされ、残った微量の壁や柱には落書きの文字が書かれている。


 その中の1つの文字にレナンドは身を震わせる。


 【過去を塗り潰せ 未来は作り変えろ】


「此れは……クッ 私を知る者の仕業なのか……クソォォォォォーーッ!」


 柱に書かれている文字はレナンドが研究を開始した際に口にした物であり、自身の為の言葉としてきた物であった。


 多くの者に科学の素晴らしさ知るチャンスを与えたいと願い口にした物でもあった。


 レナンドは騒ぎを聞き付け集まり出した人だかりを見てその場から立ち去る。


 次に向かった先は研究所であり、広い敷地の真ん中に堂々たる姿を見せつけていた研究所は一階のフロアを除き二階から上が完全に吹き飛び、美しかった研究所は見る影も無くなっていた。

 研究設備、研究資料、人材、仲間……全ては塵となり消え去ったのだ。


「此れが現実なのか……あの日、私は何故、家族の元に早く帰らなかったんだ……何故、研究所から出たんだ……私は一人、置いていかれたのだな」


 愕然と膝から崩れ去る。


「世界は残酷だよね博士? でも、博士は単なる被害者なんだ」


 幼い少年の声に後ろを振り向くレナンド。

 そこには無表情のチェルバランの姿があった。


「チェル……バラン、生きていたのか?」


 弱々しくそう口にするレナンド。


「博士は世界を変えたいと思う? 僕なら博士の望みを叶えてあげらるよ」


 その時、笑みを浮かべたチェルバランの表情はまるで悪魔のようにレナンドの目に写る。


「私に何をさせたいんだ……チェルバラン」


「簡単さ、世界を塗り潰すんだ……僕と博士の力で……二人で世界を変えよう。この世界は作り物さ、平和と言う停滞が人を腐らせてる」


 子供の言葉とは思えぬ一言、全てを失い絶望と闇をその身に宿したレナンドには、その言葉が魅力的にすら聞こえていた。


 その日、レナンドは研究を再スタートさせる、いや、全てを取り戻す為の巻き戻しを開始する。


 研究を再開して直ぐレナンドはチェルバランを知る全ての者を調べる事となる。


 そして、チェルバランはレナンドの前に一人の男を連れてくる。


 連れてこられた男はベルドであり、チェルバランは「犯人を捕まえたよ」と語る。


 縛られ口を塞がれたベルドを前にレナンドは冷めた目で見つめる。


「博士、どうする? 家族を粉々にした張本人だけど?」


 チェルバランの言葉にレナンドは、ただ、頷く。


「チェルバラン、ベルド君を()()|世《・》()から解放してやってくれ」


 そして、世界から批判と禁忌の烙印を押される 【 栄光の計画(グランツプログラム)】 が完成したのである。


 レナンドはチェルバランの存在をひた隠しにし、世界は最後までチェルバランの存在を知ることはなかった。



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