チェルバラン……最悪の始まり4
レナンドはチェルバランのデータを前に真剣な面持ちでデスクに腰かけていた。
「このデータだけでは、チェルバランの本来、隠されている危険性を政府に理解させるのは無理だろう……やはり、資料室のデータを持ち出すしかないか」
今までの人生を誠実に生きてきたレナンド、美しい妻を貰い、子供は息子と娘の2人、誰もが羨む程の幸せな家庭、月に数回帰るのみであったが、帰れば暖かい家族の笑みと食事を全員で食べる事が何時しか家族の絆となっていた。
「今日は……帰れそうにないか、長い人生で初めてだ、子供の頃に飴玉が欲しくて取ろうとしたが、諦めた……今回は諦める訳にはいかないな」
覚悟を決めるレナンド。
その時、レナンドの妻からメールが送られてきた。
「……帰りが遅いからか、帰れないと伝えるのはこんなに心苦しい物なんだな」
メールを開くレナンド。
そこには空っぽの文面と一枚の写真が添付されており、レナンドの表情が一瞬で変わる。
急ぎ愛車に飛び乗り、アクセルを全快に踏み込む。
研究所の地下駐車から猛スピードで走り出すレナンドの車。
その光景は誰もが異常と感じる程であった。
研究所からレナンドの自宅までは車で30分程の距離にある。
慌てるレナンド、メールで送られた写真には椅子に座らされて下を向かされたまま、拘束された家族の写真、その写真の下には大きく書かれた赤いインクの文字があり。
“一人で来い” と書かれていた。
神経が鷲掴みされ、掻き回されるような感覚と普段ならば、有り得ない程に高くなる心拍数、全身を流れる血液が冷静さをも流し去るような感覚に吐き気を感じながらもレナンドはただ、家族の事を思い車を走らせていく。
家を目前で後方から巨大な爆発音と震動がレナンドを襲い更に前方から二回目の爆発、爆風と震動が車を襲うと車はコントロールを失った。
咄嗟に切ったバンドル、その先にある街灯へと吸い込まれるように回転した車の後方が激突し大破する。
開いたエアバックにより、頭を強打したレナンドは微かな意識を保とうと必死に口の中を噛み、意識を繋ぎ止める。
「な……にが、起き……た……急がなければ……家族が……妻が、子供たちが……」
そして、車の扉を必死に開いたレナンドの目に写る人生を揺るがす絶望。
愛する家族の待つマイホームは瓦礫となり、辺り一面が飛び散った破片と火の粉に襲われている。
「ハァハァ、そんな……そんな……嘘だ……うわぁぁぁぁッ!」
次の瞬間、レナンドの首筋に微かな痛みが走ると意識を失いその場に倒れ込んだのである。
意識のないレナンドの後ろで笑みを浮かべる少年の影、レナンドの通信端末から画像を削除するとそのまま姿を消しす。
次にレナンドが意識を覚ましたのは病院のベッドであり、レナンドの病室内には、銃を装備した警察官の姿があった。
意識が戻ると直ぐに医師が駆け付け、検査が始まる。
「すまない……此処は、家族は、家族はどうなった!」
興奮するレナンドを押さえ付ける看護師と医師、そして注射針が射され薬品が体内に流れ込むとレナンドは再度意識を失うのであった。
次に目覚めたレナンドは冷静に振るまい、医師の検査を終える。
次に警察からの取り調べにもにた尋問が始まる。
「レナンド=ブラウンさん。先ずは冷静に聞いて頂きたい。貴方の自宅が爆破され、現場からは3名と推測される遺体の1部が発見されました……大変心苦しいのですがレナンドさんの血液サンプルを頂きたいのです。同意していただけますか?」
全てが闇に包まれ絶望がレナンドを抱き締めるようにまとわりつく。
「妻も、子供たちも……死んだんですか?」
青ざめた表情……震える言葉、そして 頷く年輩の警察官。
全ては悪夢でしかなった。




