絶望のミーナ
ミーナの頭の中に過去の出来事や友との思い出、両親の顔。色々な物が一瞬で甦ってきた。
走馬灯……
私……殺されちゃうんだ、嫌だよ……死にたくない……死にたくないよ……まだ死ねないよ……みんなに知らせなきゃ……みんなが死んじゃうよ……
「ひぐっひぐっ……ひにたくなひぃ……」
言葉に成らない声をだし、涙を流すミーナに対して男達はニヤニヤと笑った。
「なら自力で出口まで行けたら? 見逃してやるよ」
リーダー各の男がそう口にした。
「お! 流石ボス優しいーあはは」
「さあ、急ぎな! ボスの気が変わったら終わりだぞ?」
ミーナは助かると思い必死に出口まで行こうと歩き出した。だが、足が言うことを聞かない。余りの恐怖から呼吸も儘ならないミーナを嘲笑うかのように男達はピッタリと後ろを付いて歩く。
ーーあと……少し……あと少しなのに……
「ほら? 追い付いちまうぞ」
男達は持ち込んだ鞭を悪戯にトンネル内の壁や床に叩きつけて笑う。
ミーナが助かりたい一心で必死に出口まで向かっていると男達は考えていた。しかし、ミーナの目的は助かることでは無かった。出口にある筈の非常用の鐘を鳴らそうとしていたのだ。
獣人には優れた聴覚があり人間に聞こえない微弱な音も獣人には確りと聞こえる。外側から鐘の音が響けば違和感に皆が気付くとミーナは考えたのだ。
そして、鐘を鳴らす為に必死に痛めた肩を手で押さえながら出口を目指していた。
七歳のミーナからすれば、その痛みは死を連想させるものであり、本来ならばその場で泣きじゃくり叫んでいても可笑しくなかった。
森の出入り口や集会場、ミーナが通り抜けてきた屋敷にも設置されている鐘は獣人には欠かせない防衛の要だった。
ミーナは出口まで、あと少しのところまできた。
ーーあと少し……あと少しなの……お願い動いて、動いて私の身体……そしたら休ませてあげるから……
ミーナは最後の力を振り絞った。
普段の全力疾走ならば一瞬で出口まで駆け抜けれたであろう。その足はまるで沼の中を走っているかのように重く辛いものであった。
男達は慌ててミーナを捕まえようとしたが、その手をすり抜け光が差し込む出口まで走り抜ける。
ミーナは直ぐに鐘を探した。本来ならば直ぐそこにある筈の鐘が見当たらなかったのだ。
「な、なんで……」
ミーナは絶望した。鐘が何処にも無かったのだ。
トンネルの出口は既に人間の領域であり、そこに獣人の為の鐘は設置されていなかったのだ。
恐怖と絶望感に顔を歪めたミーナに男達は追い付く、その絶望に満ちた顔を見て笑った。
「あら、壊れちゃったかな? ボス、こりゃダメだ? どうします」
「女のガキなら取りあえず、連れて帰るさ? そんなんでも欲しがる客は五万と居るからな!」
「よかったな。まだ死ねないらしいぜ、まあ、変態オヤジ達に可愛がってもらうんだな」
そう言い傷付いたミーナを縛り上げたのだった。
ミーナの世界が真っ黒く染まり絶望はミーナを包み込んでいく。
次回ミーナの運命が動き出す。
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