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チェルバラン……最悪の始まり3

 レナンドはファイルを目にすると額から汗が滲み、ページをめくる指が微かに震える。


 チェルバランは数多の薬物実験を繰り返す中で、次第に心拍や脳波の乱れが無くなっている事実が記されていた。


 レナンドが保護する以前から与えられ続けた薬品の量は成人男性すらも致死量と言うべきものであった。


「いったい、どれ程……何故、此処まで情報が隠されたんだ! チェルバランの他のファイルは……」


 不安と探究の感情と思考が混ざり合う最中、レナンドの手の中に次々と掴まれ読み開かれるファイル。


 ファイルの幾つかには塗り潰された後と、破り捨てられたページが存在し、レナンドは絶句する。


 一時間程を資料室で過ごすレナンド、そんな最中、外で警備員が慌ただしく声をあげる。


「今、資料室は使用中です! どのような理由があっても規則ですので中には通せません!」


「お願いだ! ブラウン博士に今すぐ報告しないとならないんだ! 博士大変なんです!」


 資料室の前で警備員に押さえられるベルド。


 レナンドはファイルを金庫に入れると扉を静かに閉じて鍵を掛ける。

 ベルドの慌て方に急ぎ、資料室を後にする。


「ベルド君、いったい何の騒ぎなんだ?」


「大変なんですよ! チェル君が研究所から消えました!」


 慌ててベルドの肩を掴むレナンド。


 其処からベルドは何が起きたか分からないと口にする。


「ブラウン博士、三十分前までは間違いなく居たんです」


「ならば、すぐに研究所の出入り口を塞げ、あとゴミの回収車が来たらそのまま帰らせるんだ! この研究所から何も外に運ばせるな。いいな」


 焦り、取り乱すレナンド。


 その姿に誰もが驚かされたが、チェルバランは其から直ぐに研究所の敷地内で発見される。


 チェルバランの発見されたのは敷地内にある大木の側であり、敷地内を捜していた研究員により発見された。

 その際、チェルバランは木に(もた)れ掛かり、眠りに着いていたと研究員がレナンドに告げる。


 研究所に戻ると直ぐにチェルバランの検査が行われる。

 結果は正常であり、何一つ異常は見られなかった。

 本来ならば、ここで検査は終了する、しかし……レナンドはチェルバランに脳波を計測する装置と心拍数を計測する装置をつけると幾つかの質問を開始しようとする。


 研究員にすら知らされていなかった検査続行に研究室内がざわめく。


 レナンドはその状況の中でも気にすることなく、チェルバランに数枚の写真と質問をする。

 

「“はい”か“いいえ”で答えて欲しい。この写真に君の知り合いはいますか?」


 一枚目の写真には実験の為に連れてこられた孤児の姿が写されている。


「はい」


 写真を見て即答するチェルバラン。


 更に二枚目、人数が減り始めた居住部屋の写真。


「この子達は君の友達ですか?」


「はい」


 三枚目、チェルバランの孤児院で撮られた本人の写真。


「これはチェルバランですか?」


「はい」


 …………無言で写真を片付けるレナンド。


「すまなかったね、チェルバラン。君が帰りたいと考えているかを知りたくて、こんな真似をしてしまった。許してくれ」


 そう語るとレナンドは研究員の一人に研究所内に作られたチェルバランの自室へと送らせる。


 デスクに腰掛け、頭を悩ませるレナンド。


「どうしたんですか? ブラウン博士、さっきのチェル君のデータを見ましたが、正常だと言うし、その後の写真を見せた際には脳波に緊張やストレスによる乱れも見られ、まさに人らしいと言う他ない結果じゃないですか?」


 ベルドの言葉にレナンドは他言無用を口にする。


「今から言うことは私と君との秘密だ……チェルバランのデータは正しくない、あれは私の体に取り付けた装置の送信データだ」


 驚きを露にするベルド。


「なんで、何を考えてるんですか、ブラウン博士!」


 怒りを露にするベルドにレナンドは無言で一枚の紙をデスクに置く。


 そこには、一切の乱れすら存在しない脳波としたに心拍数が刻まれている。


「ベルド君、人類は過去に人の偽りを見抜くべき、装置を開発した……しかし、強靭な精神や思考の前には無意味となった。私がチェルバランに見せた写真だ……見たまえ」


 其処には三枚の写真があり、一枚目は集合写真であり、チェルバランを含め皆が笑っている。


 二枚目は死んだ仲間を抱きしめる孤児とそれを無表情で見つめるチェルバランの姿が写されていた。


 三枚目はチェルバランの姉と言うべき存在だった少女が病により、生涯を閉じた際に墓の前で涙を流すチェルバランの姿が写されていた。


 全ての写真を見終えたベルドは激怒する。


「博士! なんて酷い事を、此れが大人が子供にする事ですか!」


 拳を握り、今にも噛み付かんばかりに感情を露にするベルド。


「チェルバランがベルド君のように怒り、感情を出してくれたなら……こんなにも悩まなかっただろう」


 チェルバランのデータに一切の乱れが無いことが問題であるとベルドに語ったレナンド。


 そして、その日の夜……事件は起きたのである。

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